第32話 異動、満州へ!

「機関部の構造簡素化だが、これは非常に画期的なものでな」


 閑院宮はそう言って、説明を続ける。


「ドイツ帝国の主力歩兵銃――技術力世界一の軍事強国が誇るGew98と比べて、さらに3個も部品数の少ない、計5個の部品で構成されておる」


 机上に出された試製小銃の設計図をまざまざと見つめた。

 三八式小銃か、と玲那は改めて振り返る。


 三八式実包を用いる6.5mm小銃。史実では日露戦争の只中に採用されたボルトアクション銃である。世界大戦で近代化に乗り遅れたこの国の悪名高い歩兵銃という印象が大きいけれど、当然ながらそれは1940年代に1905年の銃を使う愚挙にあるわけで。

 採用当時としては、最先端の小銃だったわけである。


「皇國の技術水準に合わせて、ごく単純な構造に……というわけでして?」


 上洞院の問いに、閑院宮は頷いて答える。


「ああ。職人技など要らぬ。完全な工場生産が可能だ」


 史実では叶わなかった一貫生産。これは戦争賠償金を原資とした「皇國統一規格」――官営工場における部品規格の統一によって可能になった。

 大量生産のためには、職人技に頼ってはいけないわけで。


「部品の互換性か……夢のようでございますね」

「ああ。そして武器としての性能も遜色ない」


 閑院宮は言葉を継ぐ。


「装弾数は5発まで、作動はボルトアクション方式。全長1.2メートルなのに重量はたったの3.7kgで、有効射程は480mだ」


 歩兵は、弾薬5発を1セットにした挿弾子を24個装備した計120発を1基数として携行する。基本的に補給効率を考慮して三八式歩兵銃を装備する中隊には、同じ三八式実包を使用する機関銃が配備される。


「さて。その銃弾たる三八式実包を使用するもう一つの火器、新型機関銃”三八式機関銃”があるわけだが……」


 そこで閑院宮は言葉を切って、玲那へ問いかける。


「マキシム機関銃の使いづらさ。覚えているだろう?」

「え? ……はい、水冷式であるがゆえに巨大なタンクを付けねばならず、こと北方戦役ではリヤカーに乗せてやっと移動できるという有り様でした」


 その鮮烈な登場によって過大評価しそうにもなるが、重すぎてロクに動かせないというのは前線にとってなかなかの負担である。


「こと、野戦においては冷却水の確保が困難です。樺太は森林地帯なので幸いでしたが、乾燥した満州平原ではそうもいかないかと」

「うむ。よくできた分析だ」


 野戦指揮官も板についてきたな、と冗談めかして笑う閑院宮。「冗談じゃありませんよ……」と玲那はうめく。


「して、玲那くん。これを踏まえれば、次期機関銃に必要なものは?」

「空冷化、でしょうか?」

「正解だ」


 そう言うと、閑院宮は次の設計図を机上に広げた。


『仮称・三年式機関銃』――わかりやすいコードだ。史実そのままじゃないか。

 三年式機関銃。大正時代に開発されることとなる、対人機関銃としては傑作の機関銃である。


「どうして、"三年式"ですの?」

「明治三十三年式の略だ。気にするな」


 上洞院の疑問をはぐらかす閑院宮。この大ウソつきめ。実際は大正三年式のくせに――史実の知識を用いて時計の針を進めているとは、このお嬢様は知る由もない。


 しかし、大正時代の兵器をこの時代に開発しようとなると技術的障壁がありそうなものだが。


「なに、問題はない」


 玲那の内心を察したように、閑院宮は首を振る。


「なんのための技研か。村田銃の村田技師やニューナンブの南部技師もおるのだぞ」

「……あぁ、そういえば技術研究院というのもできましたものね」


 これもまた戦争賠償金の産物だ。設立資金に投じられたのは数百万圓――現代における理化学研究所みたいな立ち位置の研究機関であると聞かされている。


「なにせ機関銃としては、後方での整備を想定したことが画期的だ。銃身交換を容易にした設計が功を奏しておる。これが結果的に、敵前で迅速に交換できることに繋がるのだから」


 閑院宮の言う通り、元になった三年式機関銃は傑作であった。

 この機関銃が初陣を飾ったシベリア出兵では、寒冷地でも確実に作動するので兵士の間でかなり評判が良かったという。


「なにせかの南部技師も『マキシム機関銃は射手の技量で性能が左右したが、三年式機関銃は誰が撃っても性能は変わらない』と言ったのだからな!」

「っ……!」


 松方が平然と史実の話を口に出すので、玲那は冷や汗をかいてしまう。危ない橋を渡る爺だよ。


「まぁ、不殺銃弾であることには変わらないがな」


 そしてまだ、6.5mm弾の話を擦ろうとする。

 しかし松方の言い分もまた真実で、第一次大戦後に発展してくる戦車や航空機といった兵器に対しては全くの力不足。6.5mm弾という小口径弾薬を使用する本銃は、たしかに人間相手の戦闘では威力を発揮したが相手が装甲車ではまったく歯が立たず、戦場から姿を消すこととなるだろう。

 命中率の向上など、小口径ならではの強みを加味しても、装甲を貫通できなければ意味がない。「そうですね」と頷いて、玲那は口を開く。


「敵方に装甲を施した陸上兵器が現れれば、6.5mm弾を用いるこの三八さんぱちシリーズは……時代の流れに沈むことになりましょう」


 第一次大戦前に採用され、傑作対人機関銃だったのにもかかわらず、たった5年程度で旧時代の骨董品と化してしまった三年式機関銃。

 当初は優秀過ぎたがために後継の開発が遅れて、この国の歩兵火器の陳腐化の代名詞とされてしまった三八式歩兵銃。

 ともに三八式実包という6.5mm弾を用いるこの銃火器は、けれども今は19世紀末。向こう十数年は装甲兵器など登場しない。それを知っているからこそ、あくまで今のロシア帝国相手にひと暴れするには――十二分だと言えよう。


「かかっ」


 閑院宮は笑いを零した。




「しかし……なんたる皮肉。この三八シリーズをそういう気概で開発した我々自ら、のだから」




 続くその言葉に、この場の4人みんなが目を瞑る。

 それは事前に、うっすらと聞かされてはいた。


 この三八シリーズは、次の戦争いっぺんこっきりで役目を終えること。

 ロシアとの戦争が無事に終われば、直ちに7.7mm弾へと移行すること。


「装甲車が登場してしまえば、もう6.5mmは使えますまい。替えるほかないでしょう」

「無駄を一番にお嫌いそうな蔵相閣下が、太っ腹なことで」


 皮肉をぶつける閑院宮は、少し嫌味たらしくこう続ける。


「それに。装甲車が登場”してしまう”のではなく、”させてしまう”のだぞ。他でもない我々こそ、時代を流す当事者だ」

「ふはっ」


 松方は笑った。それはもう、ほくほく顔でだ。


「まさに。なにせ、フォードなど。戦後の大儲けも間違い無しだ!」


 T型フォード。誰もが聞いたことがあるであろう世界初の大衆車。世界市場を席巻し、広大な合衆国においてモータリゼーションを爆発させた革命者である。


「よく来てくれましたね、彼も……。このような東の端くれの、小さな島国に」


 玲那も思わずそう漏らす。


「いや、逆に言えば今しか来てくれる機会はなかったでしょう。せっかく立ち上げた会社で、貴族向けの高級車を作りたかった社長と方針が合わず失望。あげくに研究成果は持ち去られて絶望。あやうく死亡!……といった頃合いなのですから」


 松方も類を見ない上機嫌ぶりだ。


「彼の名を……ヘンリー・フォードですか」


 乗用車に革命を起こした男。幼い頃自動車に触れ、大衆に普及したらどんなに人々の生活は楽になるだろうと考え、エジソンのもとで学び、大量生産方式を考案、世界初の大衆車を製造。モータリゼーションの嚆矢となって、庶民のために尽くした偉人――


 と、よく好意的に説明される事が多いが、若い頃から悪い意味で頑固で、周りとの折衷というものを知らず、エジソンの下を立ってから自ら副社長となって自動車会社を立ち上げるも、あまりに盲目的に大衆車を信じるあまり、大量生産のノウハウがないから高級車から製造していかないと立ち行かない、とまぁ極めて常識的に考えた社長に我慢ならず勝手に会社を捨て去ったという、だいぶパワフルな人間だ。


 さらに晩年には、T型フォードを超越する優秀な大衆車など存在するはずがないと信じ込み、自身の会社の後継者と生産レーンを縛り付け組織の足を引っ張るだけの老害と化してしまった、非常に気難しい男でもある。


「上川宮廷の予算で、簡単に釣れましたとも」


 ヘンリー・フォードにとって自らにアドバイスしてくれる存在など不要。自らを気遣う周囲の善意など害悪でしかない。そういう存在が追ってこれないような、遠く離れた異境で、自らの命ずる通り動く人員といくら使っても余りあるような支援金という玲那たち上川宮廷が示した条件は、世界に絶望していた彼にとって希望の光だった。


 玲那や松方としても、彼が史実軽々と乗用車の大量生産を実現したのを知っているからこそ斯く如き破格の待遇をするのであって、間違っても万人にこういう機会は与えるわけじゃない。ヘンリー・フォードだけが特待であるという事実は彼の自尊心をくすぐらせ、史実より5,6年早く量産体制が整うに至ったのだった。


「兵器に、自動車……ですか?」


 やはり信じがたいといった風に、眉を寄せる上洞院のお嬢様。

 皇國にも嗜好品としてごく一部の上流階級に、馬車に替わって不格好な鉄輪の自動車が輸入されつつある。この茶路ちゃろお嬢様が学修院で目にするのはだいたいそういった、華族のお遊びとしての荘厳な自動車おもちゃだ。

 だからこそ、軍需品として自動車が耐えうるのか疑問でならないのだろう。


「ああ、塹壕が突破できないからな」


 お嬢様の疑問に、閑院宮はそう答える。


「塹壕戦に比較的有効と言われる迫撃砲をいくら使っても、堅固な塹壕相手では敵兵を効率よくあの世へ送ることが出来ぬ」

「そんな塹壕戦を覆すものといえば?」


 玲那が問うと、松方と閑院宮は同時に応える。


「「そう、戦車か飛行機!」」


 息が合うなり閑院宮は嫌そうに松方を見る。何食わぬ顔、いやむしろニタァと笑いながら松方は、閑院宮のするはずだった説明をふんだくる。


「飛行機は、飛行船で何とかなりますなぁ。大事なのは戦車の代わりですよぉ〜~というわけでT型フォードを改造し、ロシア軍の6mm機関銃に耐えられるよう避弾経始も兼ね備えた傾斜装甲を貼っつけ、機関銃を搭載するのです!」


 玲那はあきれつつ、机上の設計図を捲る。

 そこに表れたのは『フォード装甲車』の文字だ。


 この時代に傾斜装甲とは結構なことだが、装甲は積載量の問題から薄くせざるを得ず、それでもロシア軍の6mm弾は防がねばならない。そうなれば他に方法もなくて。技術を進めすぎるのはよくないけれど、史実では極東の局地戦程度にしか見られなかったのだ、傾斜装甲の概念には誰も気づかないことを願うしかない。


 戦場での使用方法の想定は非常にワイルドなものである。まず、塹壕に自動車ごと飛び込むと同時に、側面の覗き窓から重機関銃を乱射、自動車と直交する塹壕内の一直線上を掃討するのだ。


 機動機関銃小隊と呼ばれるこの部隊は歩兵大隊に直属し、これを突破口にして、敵兵が混乱したすきを突いて、歩兵大隊が塹壕へ突入、制圧するという流れである。


 ヘンリー・フォードには大衆車製造の準備として試しに軍へ装甲車を大量生産してもらう、装甲積んで重機関銃積んでかつ塹壕に突っ込んでも大破しない程度堅牢な自動車がほしい、大衆車普及のためにぜひとも頑張ってくれ、と松方が言っておいたようだ。


「旅順要塞に装甲部隊で突っ込むというわけですか。愉快痛快にございますね」

「なにを他人事のように」


 玲那の言葉に、ツッコミを入れる閑院宮。

 小首を傾げると、彼は長いため息をついた。


「聞いていないのか――……装甲部隊は少数精鋭。配備先は当然、皇國陸軍のうちで最も精鋭たる部隊なのだぞ」

「近衛師団にございますか?」

「あたらずと遠からずだな」


 その答えにふと考え込む。普通、精鋭といえば宮城に侍る近衛師団だ。


「ふはっ、名誉だけでは務まるまいよ。装甲車は最前線での実戦なのだ」


 まるで近衛師団を儀仗兵のように誹る松方。しかし、彼が言うからには近衛師団ではないのだろう。


「ヒント。その精鋭部隊は、皇國陸軍始まって以来の戦果を挙げました」

「陸軍始まって以来……?」


 西南戦争?

 台湾出兵?

 北方戦役?

 対清戦争?

 辿るように考えていった果てに、玲那は押し黙ってしまう。


「……——まさか」


 一番嫌な想定が、喉奥にまでこみ上げた。

 それが口に出るよりもずっと早く、松方正義が正解を告げる。


「北京占領」


 それは、もう満面の笑顔で言う。


「紫禁城の空挺制圧を超える戦果など、皇國二千年の戦史を遡れどまさに空前絶後! ゆえに陸軍ではじめに装甲化される部隊など、一つしかないのですよ――闕杖官どの?」


 玲那は視線を逸らす。

 うそでしょう。うそだと言って。


「そもそも、ロシア帝国との戦争を見据えて装甲化を具申したのは玲那くんだったろうに」

「……そうでしたっけ」

「ああ。北方戦役の二年前か? 田植えの泥にまみれていた予に、用水路のそばで語っただろう」

「そっ、そのような前のことを」


「それで、この松方に閑院宮親王殿下から話が回ってきたわけにございます。装甲車を作れないか、とね」

「あぁ。あとはこの守銭奴蔵相に全て任せた」

「守銭奴とは失礼な。フォードは人材抜擢としては最善でしたでしょう」


 玲那は開いた口が塞がらない。

 何年前の妄言を根拠に、いい大人が二人して、玲那に圧迫面接と来た。


「言い出しっぺのルールです、姫宮」


 松方の示した、机上の設計図の右上。

 ”世界史上初の装甲戦力”とかまぁ、大々的に銘打ちやがりまして。


「観念したまえ、玲那くん。――今月末を以て、禁闕中隊を大隊へ拡充。予の権限で新編する第26歩兵連隊の中核戦力へと再配置する」


「…………」


 ただ、唖然としていた。

 立ち尽くす玲那の胸に、閑院宮は懐から出した書類を押し付ける。


「玲那くんの部隊の作戦なのだ。玲那くんが説明したまえ」

「……そんな。だって、玲那はまさか自分だとは」


 装甲部隊の配備構想だけは、頭の中に持ち合わせていた。

 だから事前に閑院宮と、それを基にした作戦計画を立案こそしておいた。


 けれどまさかそれが全部実現へと舵を切って、しかも当事者にされるだなんて思いもしなかった。もしやるとしても近衛兵とかの精鋭部隊がやるものだとばかり、端から、この玲那だとは考えなかった。


「新編――独立第26歩兵連隊、通称を『魁星かいせい』ですか」


 松方は、追い込むみたいに笑う。


「その名に恥じず、明治37年の満州において、世界大戦すらまだ迎えていないというのに……、と」


 あぁ、そんなこと知っている。

 その計画を閑院宮と立案したのは玲那だ。

 ふざけ半分だった。徹頭徹尾、お遊びだったとも。


 上川宮廷でのキツい農作業の余暇に立てた、与太話。

 妄想の域を出ないはずだったのに。


「”満州電撃進攻にあたる計画名『1904年7月バルバロッサ作戦』"――……気でも触れまして?」


 受け取った書類を手に、唇を震わせる。


「玲那くんがそう最初に申したではないか」

「ええ。まったく大したネーミングセンスですよ、姫宮」


 松方の揶揄を横目に、同じ書類を人数分、机上へ撒く閑院宮。

 上洞院が無言でパラパラと、このふざけた作戦計画をめくり始めた。


 こちらへ振り返って、閑院宮は笑う。


「でも、?」

「……っ」


 妄想は妄想。けれど、装甲部隊があるならばという無謀な仮定だったから妄想なのであって――それが実現できるのならば、話が変わってくる。変わってきてしまう。


 玲那が一番覚えている。

 前提条件その一点だけを除けば、現実的な戦争計画を練ったことを。


「……はい」


 項垂れて、玲那は吐き出した。


「時間さえあれば……綿密な作戦計画立案と後方における兵站の構築さえ整えば、地上最強と畏怖されるロシア陸軍のコサック騎兵を殲滅――……」



「三ヶ月経たずして?」



 上洞院が、はたりと計画書を閉じて答える。

 この時間で読み上げたのか。彼女は本当に、頭脳だけは他の追随を許さない。


「……そこへ至ってから、対露講和に至る戦略です」


 1941年6月、ドイツ軍はバルバロッサ作戦を発動し、たった3ヶ月で1000kmを電撃的に前進し制圧、ソ連の首都モスクワに迫った。モスクワこそ陥とせなかったが、一連の戦闘は、史上類を見ない戦術的圧勝であり完封であった。


 1904年6月は史実、陸軍第3軍が旅順攻撃を開始する月で、幾度も閉塞作戦や総攻撃をかけては挫け、半年もかけて6万という膨大な死傷者を出し漸く辛勝した。



 これを同年同月、装甲旅団を以て電撃戦を、旅順から満州全土で展開、人馬で戦線を支えるロシア軍を、装甲と機関銃、圧倒砲火の下に撃破、殲滅する。



「―――斯くして、3ヶ月以内に旅順から1014km電撃前進。

 ロシア極東沿海州の首都、ウラジオストクを制圧します」


「……できますの、本当に?」


「しなければなりません。日比谷を焼き打ちなどさせますまい。必ず賠償金をロシアからぶん捕りますとも!」


 上洞院にかぶせて、松方は言った。

 閑院宮も頷く。


「先の旅順租借とかいう挑発的すぎる行動からするに、実際ロシアは皇國を全く敵とは考えていないだろうな」

「ふはっ、親王殿下。白人至上主義の全盛期たる帝国主義時代でございますよ、別におかしくはございません」

「かもな。有色人種の分際で、欧州列強の巨頭たるロシアに挑戦することすら、誰も考えすらしない話か」


 閑院宮はそこでいったん区切って、口を噤む。

 それから次の一言で、松方の目を見開かせた。


「……だからこそ、そこに隙が生まれる」


 そのまま、彼は玲那の方に歩み寄る。


「有栖川宮中尉。よろこべ、栄転だ。本日付で大尉への昇進と――鎮台錬成部の任に付し、禁闕部隊の再編を命ず。なお直属の上官は……閑院宮載仁連隊長なり」

「え。親王殿下、なのですか……?」

「あぁ。よろしく頼むぞ、


 この人に手を差しだされては、もはや拒めまい。

 玲那はスカートの裾を、観念してつまみ上げた。


「謹んで……お受けいたします。やるしかございませんね――」


 玲那は、ため息とともに吐き出した。




「……――満州電撃戦」

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