変わらない未来
第36話
気がつくと、目の前には見慣れた職員室の風景が広がっていた。職員室の部屋のカーテンは全開で、外から日の光が差し込んでいる。室内の空気はじめじめとしているが、外は雲と雲の間から太陽が顔を出していた。
残念ながら、この場所は二十六歳の僕が働いている都内の小学校だった。
職員室で割り振られた自分の席に突っ伏していた僕は、自分のパソコンを開いた。真っ暗な液晶に映る自分は、大人の姿で映し出されている。パソコンに表示された日付も、二〇二〇年六月二〇日となっていた。
あれは夢だったのだろうか。そんなはずはないと思ったが、それを証明する客観的根拠は存在しない。残業ばかりの毎日を送っていたんだ。疲れて一晩ここで寝過ごし、とても永い夢を見ていたと考える方が現実的だ。
途端にキーボードに水滴が落ちる。何が起こったのかわからなかったが、パソコンの液晶が再度暗くなった時に理解した。
僕は泣いていた。その泣き顔は、先ほど見た夢の中の少年と同じ顔をしていた。
頭痛がひどい。呼吸ができない。胸が締め付けられるように痛かった。
夢なはずがない。今さっきまで僕が経験したことが夢なわけがない。そう思いたかった。
僕は袖で涙を拭き取り、目の前のパソコンで、「二〇一二年 クリスマスシーズン ニュース」と検索した。すると、上から二番目に、あの事件のトピックが表示される。
僕はその記事を隅々まで見渡した。だが、以前僕が見た記事とほとんど変わっていなかった。
先生も生徒も自殺していて、その出来事は先生の責任になっている。
『二度目の六年生』が本当にあったとするならば、この事実は間違っている。先生が生徒を自殺に追い込むことは決してない。だが、先生の遺書の内容も何も変わっていなかった。
「自分がやった」という自白の文章と謝罪の意。それに保身の文章が添えられていた。
夢で先生が言ったことを調べてみると、一九九四年から一九九六年に渡って、現在では『いじめ第二のピーク』と呼ばれているのは事実だった。だが、それに先生が関わっていた事実はいくらネットを探しても出てこなかった。
どこかでこの事を目にしていたのか、それとも夢ではなく、先生の教えだったのか。記憶が混在している。
だけど現実は何一つ変わっていない。やはり、夢なのだろうか。そう思った時、僕は小学校の職員室を飛び出していた。
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