コメディのような日常だと言われますが
香居
ひゃくれつけん
夜。仕事疲れで、うたた寝をしていた母様が起きてきました。
「むー……」
「どうしました?」
「肩が痛くて……」
「ストレッチしてみたらどうです?」
提案すると、母様は覚醒途中ながらも、緩慢な動きで腕を曲げたり伸ばしたりしています。しかし……
「……うーん……」
あまり効果がないようならマッサージしましょうか、と声を掛けようとすると。
「……こういうのなかった?」
「えぇと……」
腕を交互に前に出す……
「北斗の拳ですかね?」
「そう、それ」
お互いにうろ覚えなので、なんとなくで会話をしております。
ちょっと調べてみたら、北斗百裂拳という技名だそうで。字面からして、すごいですね。
母様のは……ゆるやか〜な動きで簡単に見切れそうです。百裂拳というより〝ひゃくれつけ〜ん〟という感じでしょうか。
「『あたた』……っていうのよね?」
「そこで切ると、自分が痛そうな感じですね」
「じゃあ『……あ』」
「それ『秘孔をついたら、うっかり
「だって、100回もできないもの。疲れちゃうでしょ」
「やらなくていいんですよ。普通にストレッチしたら良いじゃないですか」
「それじゃ面白くないじゃない」
「面白さは求めてませんから」
ツッコミを入れた途端に、動きを止める母様。
「……何を考えてます?」
「♪箱根の山は天下の
そして、ワンフレーズを口ずさむ母様。
箱根八里の歌詞を思い出していたようです。
「そのケン違う……」
脱力する私をよそに、母様は「ケンさんてすごいわぁ」と感心しています。
「近所のおじさんみたいな呼び方をしないでくださいね。ケンシロウですよ」
「通じれば良いのよ」
「たしかに、そうですけど……」
こういう時は、あれですね。最強の呪文、
『母様だから』
を唱えておくことにしましょうか。
それからしばらくして。
やはり、ひゃくれつけ〜んストレッチでは効果がなかったらしく、マッサージをご所望されました。
コメディのような日常だと言われますが 香居 @k-cuento
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