冒険者たちのお弁当
きぬもめん
プロローグ
冒険者とは武器を携え、様々な未開の地を探索する者である。
彼らが何故危険を冒してまで冒険者として活動し続けるのか。その理由は多岐に渡る。
まだ見ぬ武器のため、希少な素材のため、モンスターの討伐のため。
あるいは名声、家のためという人間もいる。
そんな彼らは各々の夢のために今日も今日とて誰も生きて帰らぬダンジョンを探索し、猛獣潜む森を歩き、モンスターが蔓延る危険地帯を闊歩する。
自由な世界を探索する楽しさ、危険と隣り合わせなことを上回る達成感。
彼らに憧れ、冒険者を目指す子供たちも多く存在する。それほどまでに冒険者とは魅力的な職業なのだ。
しかし、そんな憧れの職業にも弱点がある。
飯が、まずいのである。
冒険者故どんなところでも保存が効き、手軽に食べることができて栄養を補給できる干し肉がスタンダードとされていた。
しかしこの干し肉、てんで味の面は考慮されなかったのだ。
まずいなら食べなければいい、なんてものもいるが現段階でこの干し肉以上に保存の効く携帯食はないのである。干し肉を嫌った冒険者が持参した食料にあたり旅先で胃を壊して衰弱しかけた、なんて話も記憶に新しい。
そうは言っても食とはエネルギーでありながらも、モチベーション維持にも不可欠なもの。「冒険者にはなりたいけどあの干し肉かあ」と考えている人間も多いことだろう。
しかしそんな彼らに光明が差すとは誰が考えただろうか。
ある日突然ふらりと現れた年若い店主は空を見上げてこう言った。
「今日も快晴。うん、実にお弁当日和」
これは冒険者にのみ利用できる不可思議な弁当屋の話である。
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