国民“不”栄誉賞

ぽんぽこ@書籍発売中!!

貴方は栄誉ある不栄誉賞に選ばれました。

 フォーマルなジャケットを着た男が、壇上に上がった。


 立派なスーツを身に纏った紳士が拍手で出迎える。


 集まる注目、フラッシュ、そして歓声。



「貴方に、国民栄誉賞を授けます」





 不景気、感染病、政治不信。失業、倒産、失業。そしてまた不景気という負のループ。

 国内の犯罪率は増加を一途を辿る。


 ある日、とある大臣が自身の汚職の潔白と支持率改善の為、新しい制度を打ち出した。


『犯罪者への国民不栄誉賞の贈呈』



 今日はその記念すべき第一号の受賞式。

 各テレビ局が押し寄せ、記者が辛辣な質問を浴びさせる。


「今のお気持ちを誰に伝えたいですか」

「受賞の決め手は何ですか」



 受賞者に拒否権は無い。


「つ、妻に感謝を……決め手は……」


 震える手でマイクを握る男。

 彼の妻は今、離婚届を手に役所で手続き中だ。

 自分自身でさえ忘れていた罪を、懺悔する。


 こうして総理大臣だった男のエリート人生は幕を閉じた。



 しかし、その効果は絶大だった。

 彼の授賞式は大々的にテレビで放映され、ネット上の各サイトでも取り上げられた。


 その結果、彼の罪と共にこの『国民不栄誉賞』は全国民が知ることとなり、犯罪率の急激な減少を見せた。





 半年後。

 ありとあらゆる罪が連日のように暴露されていった。


 暴行、窃盗、パワハラ、ネット上の炎上から痴話喧嘩まで。

 法律書に書かれているこの世の全ての罪という罪が公開された。


 見事、国民不栄誉受賞者となった者は後ろ指をさされ、それを見た者は「ああはなるまい」と自制する。




 一年後。

 国民の九割以上が不栄誉となり、国民は見飽き、開き直って犯罪を恐れなくなった。




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