コカトリスの卵

水定ゆう

第1話 コカトリスってなに?

 私とフェルルは、冒険者ギルドにやって来ていた。

 今日もクエストを受けようと思っていたのだ。


「フェルル、今日は何する?」

「うーん、私は師匠に従うよ」

「はいはい」


 相変わらずのフェルルに、私は相槌あいずちを打つと、クエストボードを見てみた。

 今日もたくさんのクエストが貼り出されている。その中から、良さげなクエストを探し出す。


「えーっと、スライム討伐、薬草の調達。ゴブリン退治……いつも通りだね」

「でもクエストの依頼主は毎回違うよ」

「それだけ多いってこと?」

「そりゃあそうでしょ」


 フェルルがお手上げって顔と態度をする。

 まぁそれだけ私達も仕事が尽きることがないってことで、私達からしたら+プラスかもだけど……ねぇ。


「うーん、何か他にあれ?」

「如何したの師匠?」


 フェルルが私の顔を覗き込む。

 私は貼ってあった依頼書をぎ取り、フェルルに見せた。


「これなんだけど?」

「えーっと、コカトリスの卵の調達ちょうたつクエスト?」


 私は首を傾げる。

 しかし対するフェルルはと言うと、別の意味で変な顔をする。


「フェルル、コカトリスって?」

「えーっと、コカトリスって言うのはすっごく珍しい雄鶏おんどりのモンスターなんだ」

「雄鶏ってことは、卵を産まないんじゃないの?」


 私はそう尋ねた。

 そもそも雄鶏が、卵を産むなんて聞いたことがない。だけどフェルルは続ける。


「コカトリスはにわとりの頭に、竜の翼、蛇の尾っぽに黄色い羽を持ってるんだって。それから、卵はヒキガエルが温めるそうだよ」

「へぇー」

「でも1番危険なのは、その猛毒もうどく。浴びたら死んじゃうよ」

「うっ!?」


 フェルルは明るくそんなこと言う。

 そんなに楽しそうに、“死”を強調きょうちょうしないでほしい。


「そんなあおるような、言い方やめてよ」

「ごめんごめん。でも、師匠なら大丈夫。最初っから毒に強くしとけばいいんだよ!」


 それもそうだ。私は早速ビルドメーカーを使って、自分の身体を強くした。これで毒にも負けないぞ。


「ねぇねぇ師匠!私にもやってよ!」

「はいはい」


 私はフェルルにも同じことをしておいた。

 こんなこと、普通の人には出来ない。しようとする前に、身体が耐えきれないもん。転生者や勇者だから出来るのだ。


「でもフェルル、そんなコカトリスの卵は大丈夫なの?」

「うん、全然大丈夫だよ。卵はこの世のものとは思えない絶品ぜっぴんなんだって。でもとんでもなく貴重きちょうらしいけど」

「フェルルも食べたことないの?」

「あるよ」

「あるんだ」


 私は顔をしかめた。

 流石は騎士様。しかも、勇者なだけのことはあるよ。私とは住む世界が違うのだと、改めて痛感つうかんしました。

 

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