隠し子、王子になる?(改稿第二版)

龍淳 燐

第1話 隠し子、王子になる?

 自分のために用意された客室。

「はあ……」

 ソファーに座りながら、盛大にため息をつく。

 いくらなんでも王太子になれって無茶が過ぎる。

 大貴族の後ろ盾もなく、王太子になったところで苦労するのは目に見えている。

 しかも、おれの存在自体公表されていないのに気がはやすぎる。

 手順をちゃんと考えろよ。 まったく。



 しかし、今代の王位継承に関しては呪われてるのか?と疑問に思うほど混迷していた。 

 まず、王太子であったアルフリード第一王子が1年前に毒物によって死んだ。 

 暗殺だとされている。

 犯人はまだわかっていない。

 第二王子と第三王子は、第一王子死去に伴い起きた王太子争いの最中に女性スキャンダルにまみれて失脚し廃嫡となった。

 これが2ヵ月前の話だ。

 その際に男爵家とその男爵令嬢が王子二人を誘惑したとして爵位召し上げで平民落ちしている。

 これはある意味、泳がせているとみて間違いないだろう。

 どうも、この男爵家は怪しい印象がぬぐえないからな。


 まあ、一番迷惑をこうむったのは各王子の婚約者達とその実家だろう。

 折角得られるはずだったものが、水の泡と消えてしまったのだから。

 だからと言って、安心できる立場かといえばそうでもない。

 親の地位が問題だ。

 確か第一王子は貴族議会のトップである公爵家ご令嬢、第二王子は宰相閣下の侯爵家ご令嬢、第三王子は軍トップの辺境伯家ご令嬢なのだから、迂闊な婚約話は国内の争乱の元にしかならん。

 まあ、三人のご令嬢を手に入れてしまえばこの国を牛耳ってしまうこともできるだろう。

 まさに傾国の美女が三人。

 手籠めにできればなんとでもなるというのは言い過ぎか。

 ちょっとでも野心があれば、手を出したくなるよな。



 まあ、自分は隠し子みたいなものというか、隠し子そのものだから王位継承順位が今までなかったんだけどね。

 順番で行くと、俺、第二王子だし。

 第一王子のアルフリードと誕生日が6ヵ月しか違わない。

 正妃(王妃)が妊娠中に正妃付きのメイドをしていた俺の母親に国王陛下のお手付きがあったってこと。

 しかも、1回どろろか何回もときたもんだ。

 当然の結果として。目出度くご懐妊となりましたとさ。

 そんで、俺の母親は正妃様を裏切ったからと、妊娠したことを隠して、病気を理由

 に職を辞し実家に戻っていったのだ。

 俺からしたら、何回も褥を共にして正妃様を裏切ったはないだろと思わなくはないが、まあ、地位が圧倒的に上である国王陛下の命令じゃあメイド如きが逆らえないわな。

 まあ、正妃様付きのメイドになるくらいだから、両親はもちろん上位貴族だ。

 それでも、四女であるから嫁ぎ先なんてないも同然だ。

 母親は、正直に国王陛下のお手付きになったこと、しかも国王陛下の子供を身ごもったことを両親に話した。

 まあ、慌てたのは両親だ。

 妊娠中の正妃様は公爵家の出身。

 こんなことがばれたら、公爵家と公爵家の派閥からどんな仕打ちをされるかわかっ

 たものではない。

 ということで、母親もろとも病死したこととして処理し、名前を変えて領地の片隅

 で生きていくことになったわけだ。


 その後俺を産み、一応とある貴族家の跡取りとして養子に出され育てられたわけだ

 が……。

 母親は外から見れば父親が解らない子供を出産したので、結婚自体が無理だ。

 だから両親の領地で一人隠居生活を送っている。

 それにしても、どこで情報がばれた?

 コンコンコン

「エルフリーデンさま、シルフィスです。 紅茶をお持ちしました」

 扉まで、自ら行きシルフィスを迎え入れる。

 シルフィスは、俺の乳兄妹といっても良いくらい長く一緒にいる。

 銀髪で少しクールな目鼻立ちをしているが、俺の前ではとても可愛い。

 しかも、剣術や体術にも覚えがあり俺にとっては大切な相棒でもある。

「ああ、入ってくれ」

 そう言いながら、さりげなく扉の外の様子を盗み見ると、案の定近衛騎士の護衛が

 ついていた。

 シルフィスを迎え入れると扉をそっと閉め、鍵をかける。

「外の様子はどうだった?」

「ここの離宮は、しっかりと守られているようですね。 ただ……」

「護衛のほかに、間者が複数いるって言うんだろ。 全く舐められたものさ。」

 さて、このきな臭い状況からどうやって脱しようかねぇ……。

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