暗黒竜ダリーシュ、変身正義回路(チェンジジャッジメンター)
@piyopopo2022
第1話閑話休題 暗黒竜ダリーシュ卿
俺はダリーシュ、登録したてホヤホヤの、今売り出し中の冒険者だ。
クソガキの頃は竜の巣でチーム組んで、極道征徒隗でツッパリ全国制覇なんてチンケな目標を達成するのに、ちょっとヤンチャし過ぎたから、長老のジジイに正義回路(ジャッジメンター)なんてぇモノを心臓の周りに埋め込まれたが、これからは冒険者で漢(おとこ)の面(ツラ)を売って行こうって寸法だ。
ママ同伴で登録に言ったので笑われたが、初日っからセコい初級クエストなんぞすっ飛ばして、はなから危険度M以上の魔獣を買取カウンターに積み上げて鑑定士の腰を抜かしてやって、受けられないはずのS級クエストも後付けで完了にしてやった。
「アニキ(性的な意味で)、今日のクエストでやんす、どうぞ」
「おお、S級クエストか、俺ぐらいになるとSじゃないと、身体が受け付けねえからな」
何か知らんがソロでやってると、受付嬢が心配して「私のためにも、お腹の赤ちゃんのためにもパーティーを組んで」なんて言うもんだから「ギルドの全員、俺のパーティー仲間じゃねえか」って言ってやったら、周りの奴らが男泣きして、勝手にクラン立ち上げやがって、俺が頭領(リーダー)で登録されてた。
よくあるクラン乗っ取りだとか、下っ端の使えねえ奴追放だとかざまあとか、そんな下らねえ政治遊びはしないでヤっていく(運営する、性的な意味ではない、遺伝子組み換えではない)。
こんな男を売る商売なんだから(性的な意味ではない)、気持ちよくやって行こう(性的な意味ではない)ってのが運営方針だ。
「僕みたいな見習い錬金術師でも、こんな凄いクランに入れて貰えるなんて……」
「まあ、最初は見習いだから、夜のお供をみっちりヤってもらって(性的な意味で)レベル上げもして、クチとケツが俺の形になってからな」
「あ、アニキ……(////)」
魔獣倒すのに一旦パーティーに入れておいて、結構レベル上げしてから転職したい職か向いてる職にして、そこから育成開始。
野良パーティーやソロでヤっても、初級職のレベルなんか簡単に上がらねえから、育ててホグして色んなもん開花させてから(性的な意味で)、転職してやっと使いもんになる。
すぐ追放だの斬り捨てだの迷宮に置き去りだの、そんなことしてたら育つもんも育たねえ。
『アニキ(////)、今日は俺のケ…… いや背中使ってやって下せえ』
『おう、ちょっくら2,3人、クエストの現場まで運んでくれ』
『へい(////)』
竜の巣からも俺を慕って(両方の意味で)、舎弟達が駆けつけてくれてる。
最初は普通の地方都市に竜が来たもんだから大騒ぎだったけど「俺の女房役だ(両方の意味で)」って言ってやると、クランの連中が書類だの手続きだの申請だの交渉だの、めんどくさい事は全部してくれて、従魔として登録してくれたから通った。
竜をテイムして舎弟にした奴は、冒険者ギルドにはいないから驚かれたが、親父(ストナ)とか師匠の黄金指(ゴッドフィンガー)は、竜騎士団で従魔にして嫁で番(つがい)にもしてるから、その道のプロなら普通の事だ。
「じゃあ、今日の分稼ぎに行ってくるわ、新入り連れてレベル上げもする」
「はいっ、行ってらっしゃいませっ」
俺らとサポートスタッフ?ってのが、火竜と飛竜に分乗して出動する。
レベル100を超えたから、こいつらも騎士爵。俺もいつの間にか貴族になってた。
今まではどっかの貧しい村が襲われてたら、ゴブリンの巣でもオークの集団でもM級とかP級魔獣でも、集落から報酬出せなくても?
「いいってことよ、ギルドが金払ってくれらあ(素材と肉買取)」
で済ましてたが、クランの連中が書類だのサインだの契約だのやってくれてるから、なんか知らんけどスポンサーとか契約先から報酬は出る。
知らねえけど一匹幾らとか、国が討伐報酬まで出してくれるそうだ。
強いのは金貨一枚とかそんなもんらしいけど、毎回「今日は俺の奢りだっ」ってやると、一晩で素寒貧(すかんぴん)になってたのが、今ではクランの貯金として樽で何十個分か金貨がある。
たまにポケットの持ち金を全部飲んじまって、「宵越しの金は持たねえ」って迷惑もかけてるからその分また稼ぐ。
酒場でもギルドでも、今は俺が払わないでも、座って馬鹿話してるだけで客が増えるから無料だって言われたし、今ではタニマチってのがいて、男っぷりが良いからってツケでも何でも、先を争って払ってくれてるそうだ。よく分からん?
今後も支払いはしないでいいそうで、たまに他の客もいるとこに呼ばれて飲みに加わって、今までの面白い冒険話するだけで済むんだとか?
客笑わせたり楽しませるだけで、契約が上手く行くとか、その客まで谷町に加わったんで、クランの奴に言われてZ級やらY級魔獣ギルドに売らないで、内緒で谷町のオッサン達に渡すと、涙流してスゲエ喜んでた。
アレ、対して強くないけど、数が少ないから見付ける方が大変なんだ。
「飛行許可っ、飛行許可っ」
「グリーンフラッグ、飛行開始っ」
覚えてねえけど貴族の娘の命を助けたとか、他の貴族の娘も暗黒竜の子を妊娠させちまったのに「お家再興が成った」とか感謝されるし、街中で泣いてる子がいたから、敵全員ぶっ倒したら、貴族家が一個滅びて街が一つ救われたんだとか、あんまり意味が分からん。
スタンピートで街が全滅する前に、俺がワイバーンでも竜でも食っちまってた(性的な意味で)そうで、他にもオークの凄い群れが街を襲って来る前に、酔って夜中に全員「メーメー」言わせてメスに(性的な意味で)しちまってたらしく、仲間とか恩義を感じてる奴が知らない間に増えてた。
他にもクエストだったか通りすがりかも覚えてないけど「モービーなんとか」って言う、個体名まである海魔獣蹴り倒したら、爺さんと親父と兄貴殺されて、復讐する機会狙ってた捕鯨団長から「私の命は貴方の物だ」な~んて忠誠誓われたりして困った。
ショーンKマクなんとかって詐欺師を、騙される前に抱いてヒーヒー言わせて、完全テイムして被害者に金返させたら、メッチャ感謝されたりもした。
街中でも「スズメにエサを? まあ列になって食べてはるわ~?」なんて言うのがいて、法衣と笑顔とノーメイクが可愛かったから、ついシワシワのババア食っちまったら、なんと街の修道院長で、あいつら処女じゃなくなったら聖女じゃなくなるって知らなかったけど、スゲエのタップリブチこんでヒーヒー言わせたら、逆にパワーが上がって大聖女になってた。
商業ギルドのババアも「子宮入菌せよ(至急入金)」って言うから、子宮にタップリ精虫入菌してやったら、政的に?満足したとかで、憑き物でも落ちたような顔になってて、何か入金してくれたり政治的な処理まで全部してくれて助かってる。
「アニキッ、今日の目的の村ですっ」
「おお、やっと着いたか」
加速も縮地も使ったけど、小一時間掛かったな。魔の森の入り口近くでも、竜の巣に近いんじゃないか?
竜が来たから村人怖がって家に入っちまったから、菊千代?が半鐘鳴らして引っ張りだして広場に勢揃いさせた。
「冒険者だ、凄え金とられっぞ」
「竜まで連れてる、もう村はおしまいだ」
「だからこんな僻地に村作んなって言っただろ」
「税金がねえって言ったのはお前だろうがっ」
頭が悪いと気も回らない、とにかく怯えてて馬鹿話が続く。
「どうか村を助けてえええっ、娘が生贄にいいいいっ」
「牛や豚まで喰われちまって、どうやって冬を超したらいいか?」
話にならない、まあこんな時の為にサポートスタッフがいる。
「はい、まず村長さんからお願いします、魔獣の説明だけで結構です。越冬準備とか食糧備蓄などは後ほど応談です、今は魔獣の説明だけを」
「はあ、もう食うもんが無くて、どうやって冬を超したらいいかと相談してるとこで、娘売るしか無いなとみんな泣いてて、それでも買えるもんなんか限られてて……」
「魔獣の説明だけで結構です、それ以外の話はしないでください、今は魔獣の説明だけをして下さい、魔獣はどこで何が何匹いますかっ?」
「だからな? 冒険者ギルドに相談して、高い金払ったら冒険者呼べるって聞いたんで、幾らぐらいで? 俺ら払えるもんがねえだよ、娘売ってから聞いて貰ってええか?」
「おら達から娘まで取り上げるつもりかっ、鬼畜生共めっ、絶対に許さんぞっ」
「そうだそうだっ、出て行けっ、守銭奴めがっ」
いつも通り、他と一緒で石投げ始めたな、駄目だ、話一切聞かないバカの集団だ。
「帰るぞっ、無駄足だ。魔獣の居場所すら言えねえ、言葉通じないバカ丸出しのアホウ共だっ、勝手に死ねっ」
帰り支度をすると、馬鹿の集団は農具を構えて帰さないように取り囲んで、鬼みたいな顔をして睨んで来た。
本当のアホだ、村人総がかりで倒せない魔獣を倒しに来た奴らを、クソマヌケの集団でどうにかできると思い込んでるようだ。
「おい、俺だったらお前ら全員、小指一本で肉の塊にしてやれるんだぞ? まさか火竜の一匹にでも敵うと思ってんのか?」
「こいつら俺ら殺す気だっ、間違いねえっ、金が払えないなら殺す気だっ」
「金払えねえって言ってるのに話聞かねえ、こいつら頭おかしいだよっ」
気が狂ってるのはどっちだ? ついに妄想で語り始めた。腐った田舎の村はこれだから嫌なんだ。
こちとら一回の飯で、お前らの一年分の稼ぎを使って食うし、一晩の飲みでお前らの一生の稼ぎを飲んじまうのが普通。
産まれてから死ぬまで銀貨すら見た事無い、命の価値が銀貨一枚以下の奴にどうこう言われる筋合いはねえ。
帰るために竜に乗ろうとしてたら、クソガキが走って来た。
「これでやってくんろっ、もうこれしかねえっ」
ガキは銅貨と小銭を出して来た。それでもやっと話通じそうで、言葉が通じるのが来た。
「ああ、請け負った、これで退治してきてやる。魔獣はどこだ?」
「あの山っ」
たったそれだけの事、何でこれだけ雁首揃えておいて、ただの一人も言えねえんだよ?
「住み付いたのは竜だな?」
「うんっ」
「心配スンナ、竜は大抵俺の舎弟か友達だ、どうにかしてやる」
「嘘だっ、騙されるんじゃねえっ、退治もできねえのに娘だけでも連れて行こうとするだっ、みんなっ、娘は隠しとけやっ」
「おおっ、こんな奴ら信用なんねえっ、娘とられてたまるもんかっ」
先にこいつら全員退治してから行こうか?
その大事な娘ってのは、あのジャガイモみたいなデカイ顔して、しかめっ面で睨んでる足が短くて太すぎるブタの話か? あっちの鶏ガラ以下のネギみたいな、産まれてから一回も身体も髪も洗ったことが無いような棒人間か?
「小僧、案内できるか? 出来るなら竜に乗せてやるっ」
「できるっ、俺が案内するっ」
「よしっ、乗れっ」
「おおっ」
サルみたいに素早くて使えそうなクソガキは、自分でベルトまで絞めて落ちないように加減した。
縛りが甘いから、暇があったら結び方でも教えてやろう。多少臭いが飛んだらどうにかなるだろう。
『落ちるな』
一体化の魔法掛けてやったから、曲芸飛行しても落ちない。
「坊っ、行くんじゃない、冒険者に食われてしまうよっ」
おっ母さんも頭悪いアホらしい。
「まあ、これでも食って待ってな、おっ母さん」
アイテムボックスから猪を一頭出して、放り投げておいてやる。
「こりゃあ俺んだっ、誰にも渡さねえっ」
「いや、俺が最初に見つけたっ」
「触んなっ、うちのもんだっ」
農具で争奪戦開始、殴り合ったり刺したり頭カチ割られたり忙しいが、こんな奴等に治療呪文使うのもったいねえ。
「坊主、お前の家どれだ?」
「あのボロいの、小さい藁ぶき屋根っ」
「よしっ」
こいつが後で食うのと、母親用に野兎を一杯吊るして、案内賃に猪も二頭置いてやった。
アイテムボックスから直接家の中だから見られてないだろう。
もし帰って来ても母親が死んでて、焼き討ちにでもあってたら、村全部燃やしてからクソガキ連れて帰ろう。
僻地の村はいつもそうだ。魔獣軽く討ち取って来て、お土産に食える魔物置いて行っても?
「こいつら殺してしまえば、報告できないからギルドに預託した報酬は帰って来る」
「こいつらの懐の物奪えば村が再建できる」
「こいつらの装備売り払えば大金持ちになれる」
それが毎回、普通の出来事。まともな冒険者なら、どんなことがあろうとも僻地の村の仕事だけは絶対に受けない。
どれだけ親切にしても感謝したりはしないし、怒り狂って追い出されるのが毎度。
村の金を盗んで行く泥棒や強盗と思われて、番所に駆け込まれて裁判所に訴えられて、七人の侍だけで盗賊団退治しても、野盗や野伏せりも魔物も魔獣も退治してないのに、ギルドの報酬を盗まれたと申し出て来るのまでがデフォルト。
それで毎回、祝いの宴会だと言われて、何か食うか飲もうとしたら必ず毒が入ってて、鑑定眼があるのも連れて行ったら、毒入りの酒とか食い物見て悲しくなって「村長、ちょっとこれ飲んでみろや」って話になって、そこから大乱戦になって、助けるために来た村人の大人返り討ちで皆殺しとかが普通。
さっきみたいに村人束になっても敵わない、恐ろしすぎる魔獣を軽く殺してきた一行を、村人全員で襲ってしまえば殺せると思い込んでるマヌケが沢山いて、戦闘になるのが日常。
「行くぞっ、野郎どもっ」
「へいっ」
火竜や飛竜が飛び立って、小僧が指差す山へと向かう。これも毎回見当違いで間違いで、必ず明後日の方向に連れて行かれるんだけどな?
今回の仕事は、銅貨一枚と鉄貨五枚で竜を倒さなきゃならん大仕事だ、やりがいがあっていいねえ。
竜が住み着いたってえ山の中腹で、腹ごしらえでもしてから向かう。まず肉でも焼いたり、朝に握って貰った飯でも食って、生水は飲まないで水筒や水樽から飲む。
「こ、こんな美味い肉食ったの初めてだ」
これもお約束で、道案内に雇ったクソガキに何か食わせたら、美味い血抜きもしてあるメスの魔獣肉なんか食った事無いのが、泣いて喜ぶまでが日常。
「おお、食え食え、気分悪くなるまで食っとけ」
上側が勝ったら下痢、下から出なかったらゲーゲー吐いて、便所に行くと言って魔獣に襲われるのも日常。
幸運値と知能が低すぎて、案内どころか怖くなって逃げ出した先が、魔獣達の巣窟で集落なのがビンゴってのが普通。
とにかく邪魔になって足手纏いで、逃げろと言っても怯えて真っ先に魔獣の口の中に飛び込んでいくのが、こいつらの仕事でお約束。
「頭っ、竜が飛んでやすっ」
「おお、向こうからお迎えに来てくれたか」
上の方で旋回して、話聞かないですぐブレス吐いて来るのも竜のお約束。
『羽ばたけ』
ちょっと上まで浮いてやって、面拝ませて貰ってから喧嘩。
『おい、ここも俺のシマだ、誰に断って餌場にしてやがる?』
これも嘘じゃなくて、全国制覇したから世界全部俺のシマ。
『人間如きがっ、この儂に敵うとでも思ったか?』
はいはい、いつも通り、サクサク行きましょうね。
『百年早えんだよっ』
ワンパンで完全に戦闘不能にしてやって、首圧し折れるぐらい潰してから治療魔法。
いつもの「仲間になりたそうにしている」とか「参りました兄貴、舎弟にして下さい」と歌わせるまでが通常業務。
『参りました兄貴、舎弟にして下さい』
『お前、どこ中よ?』
聞く所によると、同中(おなちゅう)の兄弟のアニキで、ケツモチも同じだから戦争にならずに終了。
パーティーメンバーに入れといたから、新入りもクソガキも竜の討伐数1で、経験値入ってレベルアップ。
村の大人共に囲まれて「食い物渡せ」ってやられても、全員伸せるだろう。
『おい、これから人間の村の牛とか豚食うの禁止な、弁償するから金出せ、金』
『はい、済みません、暗黒竜の兄貴』
どこかでパクって来た古代金貨没収して、巣に同行してそこでも金貨とかミスリル製品没収。
鉄剣とか鉄鎧とか人間の冒険者始末して分捕ったのも没収。ゴキ竜とウ〇コ竜の鱗の製品も、ヒトシ君人形も没収~ト。
『生贄要求じゃなくて、これからは村に毎日猪とか鹿とか置いて行け。このクソガキの顔覚えとけ、こいつが受取人だ、地獄熊とか熊はマズイから自分で食っていい』
『あ? どうも人間の顔は見分けつかなくて?』
『ああ?』
『はい、この小さいのに祝福入れときます、これで大丈夫です、勘弁してください』
何かブツクサ言ってたけど問題解決。クソガキには「火竜の加護」ってのが着いた。
時間も余ったから狩りでもして帰ろうか?
『おい、この辺にベヒーモスとかケルベルスっていないか?』
『はあ、流石に見ませんねえ?』
『何か強そうなの多い所案内しろ』
『へい』
あちこち水場回って、弱そうなのは新入りとクソガキに任せて、人間の村に行くとヤバそうなのは「予防保守」ってので減らして置く。
「オマエラ、レベル幾つになった?」
「81です」
「77です」
「65ですっ」
クソガキまで結構なレベルの村人Aになった。
「転職しとくか? 侍と僧侶系の騎士、どれがいい?」
「騎士が良いっ、村に医者いないんだっ」
「そうか、転職しとけ。飯食ったら帰る前に、もうちょっとレベル上げとくぞ」
「うんっ」
他の新入りは戦闘向きじゃないし、従魔使いとか錬金術師がやりたいそうだから任せる。ハズレだったら別のに転職させる。
そのまま火竜の奴も連れ回して、パーティーに入れないで魔獣を弱らせる役に使い倒して、最後の止めだけ新入りとかクソガキに任せた。
「そろそろ引き上げるか? レベル上がったか?」
「従魔師レベル50ですっ」
「錬金術師レベル41」
「騎士レベル36」
「よし、小僧には今着てる皮鎧と短刀もやろう、それとこいつは折れた時の予備だ」
火竜から巻き上げた、死んだ冒険者の遺品をやる。売っても耐久力の残りが少ないから銀貨程度だ。
ああ、クソガキから貰った依頼料の三百倍か、まあ竜をカツアゲしたから古代金貨で収入あり、収支はサポートスタッフがどうにでもしてくれる。
適当にキャンプを引き払って、最初に行った依頼の村に寄ってから帰る。
「村で祭りとか祝いになるけどな、飲みもんとか食いもん、全部毒入りだからな、絶対飲み食いすんなよ、母ちゃんが作った飯以外食うな」
「え? どうして?」
「奴等は俺らが生きてると困るんだ、無事帰られて報酬受け取られたら依頼料返ってこないし、俺ら殺したら金奪えるし、装備売ったら大金持ちだ。お前の剣と鎧も隠しとけ」
「う…… うん、分かったよ」
この顔は分かってない、一回毒殺されてから生き返らせるか?
『加速、縮地』
最初の村寄らないで、何ならクソガキ連れてって、クランに入れて育てた方がマシだが、一応依頼達成の魔法的なサインがいるらしい。
どんな馬鹿でも火竜が一匹増えて、牛とか豚食ってたのに詫び入れさせるから分かるだろうけど?
「あいつらグルだ、仲間を連れて来たんだ。俺達の牛や豚奪って、その上金まで取ろうなんて、ふてえ野郎だ」
とまで思い込むのが僻地の村の常識。
僻地(へぎづぃ)医療に理解ばぁあるぅ、医者様ばぁ吊るし上げて馬鹿ぬすでぇ、東北(とうほぐ)の秋田(あぎだ)か青森ぐれぇおそげなぁどごでぇ、医者様ぁ裸足(はだす)で逃げ出すぐらいなんが普通(ふづう)。
やがて村に戻ると、案の定クソガキの家が食いもん隠してたんだと焼き討ちされて、密告した親戚とか近所の奴が総取り。
そこから争奪戦が始まって死体が一杯出来てて、人間の塩漬けが大量で、冬の食い物に困らなくなった模様。
俺が置いて行った猪と足の縛りまで同じだったから、おっ母さんは吊るされずに牢屋入り程度だったが、家は焼け落ちて住む所はない。
「さて阿呆どもまだやるか? これから祭りの振りして俺ら全員毒殺するんだろ? 懐の物盗んで、アイテムボックス漁って、装備売り払ったら大金持ちだもんなあ?」
「そ、そっただことしねえ」
村長目そらして視線泳がせまくり。
「番屋やら裁判所まで行って、俺らは何の解決できてないのに、ギルドの依頼料と解決金だけ盗んだって、近くの街の裁判所まで行くんだろ?」
「…………」
思い当る節があり過ぎて何も言わない。
「ちなみにこの火竜が村を襲ったり牛食った馬鹿だが、話は付けといた。牛食うな豚食うな人間食うな。詫び入れさせようと思ったけど必要ねえな」
「その竜かっ、殺しちまえっ、肉にして売って、村の金にするっ」
「それはおら達のもんだっ、置いてけっ、食ってやるだよ」
「殺せっ、殺せっ、殺せっ」
「今でもお前らに敵う訳ないだろうが、全滅させんぞクソが? このクソガキの家どうするんだよ? 母親外に出せ、それともお前ら全員殺してからか? この小僧一人でもできるぞ? もう騎士レベル36だもんなあ?」
「ちくしょう、家焼きやがったな? 母ちゃんまで牢屋にっ、婆ちゃんはどこだっ?」
「知らねえっ、あんクソ婆逃げたっ」
交渉決裂、なんならこいつら、母ちゃん人質にするぞ。
「俺が小僧に案内賃に置いてった、猪二匹とウサギの束どうした? お前らにやった覚えはないぞ、戻せっ」
返事が無い、ただのしかばねのようだ。
「もう食ったのか? 塩漬けで瓶に入れて埋めたか? もう一人年寄りがいたそうだなあ? 肉奪うのに殺したのか?」
「仕方がねえ、冬越すためだ、年寄りから死なねえとぉ」
奪い合いになって母ちゃんだけ逃げたぐらいで、嫁には嫌われてた婆ちゃん、逃げられないで刺し殺されたか、焼き殺されたって所だな。
「私は巡回裁判人で警吏の免状を持っております。この場で調査と即決裁判を開始します」
こんな便利なのもサポートスタッフにいるから、「犯人はお前だっ」ってやって即解決。
「こちらの頭領に銅貨一枚と鉄火五枚で竜退治を依頼した少年に、道案内の賃金として猪二頭、ウサギ20羽を進呈しましたが、帰ってくれば焼き討ちを受けて家屋は焼失。件の動物肉は略奪され、老婆一人が刺殺された。これは武装強盗の重犯罪、犯人は即座に絞首刑となります」
「嘘だっ、ここのババアと嫁は、村の共有の財産になる猪やらウサギを独占したんだっ」
「貴方には所有権とか権利関係が理解できないんですかっ? 動物肉はこの家の少年が正当な理由で、賃金で好意として与えられた物。それを村人全員で略奪した。これは明確な犯罪行為です」
「きんきゅうじにはそうならねえんだよっ、冬越せないからその時点で村の財産だっ、それを死んだババアが勝手に取り込んだんだから、俺達が刺して取り返したんだよっ」
やべえ、言い訳にしてもこいつら全員アタマオカシイ。
「やたらと事情に詳しいですね? 貴方は老婆の殺害と物資の略奪を自供しました、これより絞首刑、もしくは貴族からの無礼討ちとして処刑します」
「嘘だあああっ! 俺は自供してねえし、この中に貴族なんかいねえっ」
「お~い、この中に騎士以上の者はいるか?」
俺と騎士爵全員が手を上げて、合計六人いた。
「畜生っ、こいつら全員皆殺しだっ、金奪って装備奪ってしまえっ、まだ肉も持ってるぞっ! やっちまえっ!」
「おおっ!」
火竜ワンパンで倒した奴と、火竜三匹に飛竜二匹、農具でどうするつもりなんだよ?
俺ら何もしないでも、火竜が三匹でブレス吐いて、村長以下村人の男手大半焼死。
「嫌な殺しになったな。小僧、お前、家なくなったから、街まで出て俺のクラン入ってレベル上げしろ。母ちゃんはお前が養うか、クランの掃除でもしてたら給料出す」
「ホント?」
クソ貧しい村人が一年分の作物売っても、街の掃除婦のひと月の給料より安い。
税金に作物で収めたりしたら、食って行くのがやっと。街で何日か働いて、後は昼寝してた方が儲かる。
スラムで汚れ仕事でもやって、盗みも暴力事件も起こさず、どうにか信用して貰って、街の住人になるのに何年も何十年もかかる。
寝床保証で住み込みで、レベル36の騎士つったらスゲエ冒険者だし、聖人として教会で勤務したら社会的信用爆上がり。
俺らが監督してたら、とんでもないのに当たって死ぬことも無いし、すぐ聖騎士コースだ。
「盗みとかしやがったり、手癖悪かったら追い出すぞ?」
「そんなことしねえ」
「仲間に連れて行きたい奴はいるか?」
「……いねえ」
親父がいないから虐められてたくちか? それにしても一人ぐらい仲間いなかったのかよ?
「おれが一緒に行くっ」
「私も行くっ」
「誰だお前、いつも俺馬鹿にして犬の糞とか馬糞投げてたよなあ?」
「お、おれじゃねえよ、あいつらだ……」
「ん? 俺が許可する、嫌な奴には無礼討ちしてから行け、死なない程度、左腕落とすぐらいな?」
「ああ」
立候補してきたクズとか、他のも何人か左腕落とされて、二人ほど頭割られてた。殺すなって言ったのに。
「ホワイトサンダー」
逃げ出したクソガキの中から、何人か追尾の電撃喰らって神経焼かれた。
「リザレクション、リザレクション、ヒール、ヒール……」
まあ子供から死人は出さないで、腕の怪我も治療。
「人でなしっ、亭主死んでこの冬どうやって過ごせって言うんだいっ」
「ああ、俺人間じゃねえし、暗黒竜だから」
「ひいいっ」
ブレスで焼いたけど、こんな頭おかしい奴ら、生きてても害だよなあ?
「ほら、旦那方こんがり焼けてるし、こいつら塩漬けにして食ってな」
「ちくしょうっ」
旦那本人は無理でも、交換して食うだろう。嫌な仕事になったし、魔獣狩りしても安いのしかいなかったから儲からねえなあ。
『なあ、今回赤字かも? ちょっと2,3回死んで、魔石とか素材になってくれねえか?』
『か、勘弁してください』
村荒らしてた竜が断ったので大金の収穫無し、魔獣売ってシノいどくか?
「ああ、冬の間、この竜が毎日猪とか鹿でも狩って来てくれるから、それで生き延びてくれ。いないときはオスの熊か狼の肉で我慢してくれ」
硬くて臭くて不味くても、死にはしない。
「ああっ、有難い」
「助かる」
腐ってない奴は多少感謝したりもした。
今日の収穫はクソガキ一人で母親付き。運が悪けりゃ死ぬだけだ、アジサンドでも食っとけ。
帰ったらクソガキと母ちゃんの住む場所確保と仕事案内。まあ騎士になったガキは、はしっこいからどうにでもなるだろう。
「今回儲からなくて悪かったな、もう僻地の村の仕事受ける止めようや、クズの集まりだから毎回気分悪いわ」
会計関連のスタッフに言ってみるテスト、もうあんな仕事受けたくない。
「いえ、希少モンスターも入りましたし、ギルドに直接売らないで、錬金術師が加工しますので、その魔道具や武具も市販しますから大幅な利益です」
「え? そうなん? 錬金術師様様だねえ」
「向こうから訴訟起こされましたが大勝利、村の女全員を奴隷として売り払う権利を得ました」
「いらね~~、銀貨50枚にもならね~~」
「基本、頭領の鱗がありますので、金属で巻いて加工すれば素晴らしい利益になり、脱皮した皮も稼ぎになります」
「はあ、そんなもんなん?」
「あの手の仕事に交通費など入れまして、水食糧ポーションなど必要経費を出来るだけ乗せて、赤字になればなるほど税金が減って利益が出るようになっております」
税金や経理は理解できんから任せた。でも赤字が出るほど利益ってどうよ?
「できるだけ頭領の思いどうり活動してください。僻地の救済は以後減らして、私達だけで済ませます。宜しければ正義回路(ジャッジメンター)の命ずるまま、ひたすら悪を討って暴れて下さい。その後始末をするのが私達の存在意義なのですっ」
俺が敵作って暴れ回って、赤字垂れ流すのをどうにかするのが存在意義だと抜かす経理担当。こいつもアタマオカシイ。
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