あたり

星ぶどう

第1話

 ピーン!

 「あの人当たるよ。」俺はぽつりと呟いた。

 「え?何?」友達はそう聞き返した。

 ここは地元の商店街。見るとガラポンの抽選会が行われていた。今まさに一人の男性がガラポンを回そうとしていた。

 ガラガラガラ…ポトっ。

 「おめでとうございまーす!四等の洗剤詰め合わせが当たりましたー!」

 店員が鐘を高らかに鳴らしながらそう叫んだ。

 「ほらね。」

 友達は目を丸くしていた。

 「すごいよひろ。超能力者?」

 「いや、ただの感だよ。ピーンときたんだ。第六感ってやつ。」

 ここで自己紹介をしよう。俺の名前は小田弘明。俺は第六感が優れている。どういうものかと言うとさっきお見せした通り当たりがわかる力だ。ただしこの力は自分の思い通りに使えない。ピーンときた時だけ当たりかどうかがわかる。だから超能力というより第六感と言った方がしっくりくる。

 「へー第六感ねえ、よくわからないや。」

 まあそうだろう。俺もなぜこの力が備わったのかはわからない。

 俺と友達はゲームセンターに入った。友達があるアニメのキャラクターフィギュアのUFOキャッチャーの前で止まった。

 「なあ、俺これやろうと思うんだけどさ。取れるかどうか占ってよ。」

 「いや俺の第六感は占いじゃないし。あと自分で力をコントロールできないんだよね。ちなみに今は何もない。」

 「あそ。まあいいや、どっちにしろ俺はやるから。」

 友達はお金を入れた。一回目は取れなかった。もう一回やったがまた取れなかった。友達は悔しがり、結局合計千円使ったが取れなかった。

 「何だよ、全然取れないじゃんか。やっぱり偶然だったんだな。」

 友達はがっかりした。

 俺たちがゲームセンターを出ようとした時、

 ピーン!

 「あの子、当たるな。」

 「えっ、今!」

 弘明の目線の先にはガシャガシャを回そうとしている子どもがいた。

 ガシャガシャ…コロッ、ポンッ。

 「オー、ラッキー。一番欲しかったやつだ。」

 子どもは大いに喜んでいた。

 「おいマジかよ。もっと早く発動してくれよ。」

 「言ったろ、わからないんだって。」

 ここでもう一つ言っておこう。俺の第六感は当たりがわかること。だがそれがどのくらいの当たりかはわからない。つまり当たりが出ることしかわからないのだ。

 俺はこの第六感で色々な得をしてきた。あるレストランのメニューを見ているときに、

 ピーン!ときてその店の意外と知られていない美味しい料理を見つけたり、自動販売機でジュースのボタンを押した瞬間に、ピーン!ときてもう一本当たりが出たりしたこともある。だが全てがうまくいくわけではない。スマホゲームのガチャでは全然当たりは出ないし、一度くじ引きをした時に、ピーン!ときてこれはきたと思ったら一番低い六等が当たってタワシをもらったこともある。ピーン!ときても思うような当たり方をしない。便利のようで中々不便な第六感だ。だが自分だけではなく他の人の当たりもわかるので、その人が当たりを引いているのを見ると少し嬉しかった。まあ俺には何の利益もないのだが。

 ある日、俺はお使いに出かけた。頼まれた物を全部カゴに入れて会計をした後、店員から福引券を二枚もらった。せっかくだから福引をしてから帰ろう。また俺の第六感がさえるといいなあ。そんなことを思いながら福引会場に向かった。その途中で一人端っこで泣いている男の子を見つけた。俺はその子に声をかけた。

 「どうしたの?」

 「グスッ。あのね、財布を…グスッ。落としちゃて…。病院のママに…お花を買ってあげようとグスっ…、思ってたのに…。」

 「そっか…。あっそうだ。俺さ福引券二枚持っているんだ。それで確か二等に商店街の花屋の花があったはずだよ。一枚あげるからさ一緒に引きに行こうよ。」

 「そうなの!うん引きたい!ありがとうお兄ちゃん。」

 俺はその子と一緒に福引会場に向かった。ちなみに俺が狙っているのは三等のゲーム機だ。

 俺たちの番になった。まずは俺が引くことにした。

 「はいっ、一回ね。」

 俺がガラポンに手をかけたその時、

 ピーン!

 俺の第六感がこの一回が当たることを示した。何が当たるかはわからない。ゲーム機だったら欲しい。でももし花が当たるのならこの子に回させてあげたい。ならとりあえず引いて花が当たったらあげればいいんじゃないか。だがもし花以外の場合この子は欲しがらないだろう。もしそうなってこの子がはずれを引いた場合この子には何も残らない。ならばこの子に引かせて花以外が当たってもそれはこの子のものになるので何かは残る。俺は決めた。

 「すみません。ここにきて何なんですけど。後ろの子と順番逆にしてもいいですか?後ろの子も一回なんですよ。」

 「そうかい。じゃあそれでもいいよ。」店員の許可は降りた。

 「ありがとうございます。先引いていいよ。」

 「いいの?お兄ちゃんがそう言うんなら。じゃあ僕先引きます。当たれ当たれー。」

 男の子は勢いよくガラポンを回した。当たれ当たれ、花よ当たれ。俺も心の中でそう呟いた。

 ガラガラガラ、コロッ。黄色い玉が出た。

 カランカラーン。「おめでとうございまーす!二等の花束が当たりましたー!」

 店員が高らかにそう言った。男の子は飛び跳ねて喜んだ。俺も嬉しかった。あまり役に立たないと思っていた俺の第六感が初めて人の役に立てた。

 「ありがとうお兄ちゃん!ほんとにありがとう!」

 男の子は満面の笑みでそう言った。本当に良かった。俺もそう思った。なぜなら俺の第六感は当たりが出るところまでしかわからない。その先の結果は本当に運次第。男の子の強運のおかげだ。神様ありがとう。

 男の子は花束を受け取ると嬉しそうに走っていった。感傷に浸っていると店員に声をかけられた。

 「はい次、お兄さんね。」

 あ、そうだった。次俺が引く番だった。

 俺は券を店員に渡した。もうはずれてもいいと思っていた。ガラポンに俺は手をかけた。とその時、

 ピーン!

 また第六感が当たりが出ることを示した。二連続でピーンとくるのは初めてだった。お、俺はいいことをしたから神様が俺にご褒美をくれるのかもしれない。そう期待をしながら勢いよくガラポンを回した。こいっ、三等。

 ガラガラガラ、コロッ。出てきたのは水色の玉だった。

 カランカラーン。「おめでとうございまーす!六等のタワシが当たりましたー。」

 ありゃりゃ…。やはり思い通りにいかない第六感だなあ…。

 

 

 

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あたり 星ぶどう @Kazumina01

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