唯一美味しく作れるビーフシチュー
鯵の閉まり
第1話
「う〜ん、見た目は美味しそうなんだけど、少し辛かったり味付けが...........」
私の料理はそんなことをよく言われる。
きっと、ちょっとじゃないのだろう。だいぶ大きくまとをえていないはず。
聞かなくても、顔に出ているから。
けど、私の家族は私がどんなに失敗しようと挑戦さしてくれた。まずいとは一回も言われたことがない。
そんな優しさもあって、ずっと頑張ってもどうにもうまく行かない。
昔より、見た目はかなり改善されたはずだ。
今は、その料理の様になっているが昔は原形を留めていなかった時だってあった。
例えば、卵焼きだ。卵を割り調味料を入れ混ざるところまではよかった。調味料の加減は分からないが。
そこから、卵焼き専用のフライパンで卵を返そうとするが、上手く返せずましてや、卵が破けて和風スクランブルエッグになった時もあった。
そして、現在の問題は中身の味に問題がある。
「こんなに頑張ってるのに.........」
そんなことを思う日々が多々あった。
今度は動画を見ながら、しっかりと真似して作ろうと挑戦してみた。
「では、ここにさっきの.........」
私はここで痛恨なるミスをした。
③に①を入れるのが②を入れてしまった。
動画を見ながらという、頭が賢くない私にはマルチタスクなんて到底できないものだった。
「はぁ.........」
また、ため息をついてしょうがなく勿体ないが御免なさいと念じて具材とはおさらばしてしまった。
もう、ここまで来れば料理をしない方がいいのかもしれない。そんなことを思った。先日までのやる気は急降下しやる気が0に限りなく近かった。
そして、私は呆気なく1週間も好きだった料理を一切しなくなった。
そして、1週間後スーパーのお使いであるものと出会った。
カレールーなどの同じ棚で発見した
ビーフシチューだ。
ビーフシチュー、普段食べないもの。私の家庭にはビーフシチューはあまり出てこない。食べたことがあっても少なからず外食や、レトルトだろう。
私は、そんな食べたことがない物に目を光らした。
そうだ、普段作っているのはお母さんたちが作っている物だ。私は多分それを真似したかったんだと思う。
あんなに美味しく作れるお母さんが堪らなく羨ましかったのだ。本当は真似したいんじゃないか、私は料理が本当に好きだったのか問いたくなったが、今はしないでおこうと思う。
とにかく、今はこの初めて食べて初めて作るというこの料理に興味津々だった。
私は、その箱に入ったルーを迷いなくカートに入れる。
そして、箱に書いてあるビーフシチューの材料を見た。
ニンジン、じゃがいも、お肉.....は牛肉肩ロースだ。
あとは....玉ねぎだ。
まずは、ニンジンをみた
切り口が茶色くなってな今のを選ぶ。切り口の軸の部分が細い方が果肉が軟らかいことを示すそうだ。
次に、じゃがいも
じゃがいもは、ふっくらとして丸みのあるもの、表面がなめらかで傷やしわの少ないものでこぼこの多いものは避けたほうがいいらしい。
そして玉ねぎだ。
玉ねぎは腰高でかたく丸々と太っていながら、首と根の部分が小さくぎゅっと締まっているもので表面の茶色い皮がしっかりと乾燥して艶があり、傷などが無い物を選ぶといいそうだ。
そして、お肉はせっかくなので高いものがいいが.......失敗がどうしても私の選択を削ってくる。
失敗すれば、そのお肉はチャラになる。
つまり1000円をドブに捨てるのと一緒になる。
私はどちらにしようか迷った。
その時お母さん、お父さんの失敗してもいいじゃないという言葉を思い出した。確かにそうだけど、お肉が.....いや私の料理への思いはこんなものじゃない。そう思った。私は本当に好きならこんなことで迷わない、私は値がはる肩ロースをカートに入れた。
失敗しない、成功はしなくてもいい。そんな気分で料理に挑もう。そしたら気分が落ち着くはずだ。
私のやる気はドンドンと満ち溢れていた。
〜 〜 〜
「よしっ.......」
私は重たい荷物と共に、家へ帰ってきた
早速、キッチンに立ち材料を用意する。
買ったもの、ニンジン、玉ねぎ、じゃがいも、お肉、ルーだ。
私の問題点は切り方じゃないので、ザクザクと野菜を切っていく、そうだ、今日もお母さんたちに食べさしてあげたい。
美味しいって言ってもらいたい。
いつも、あんな顔をさしてしまってる.......そんなのはもう嫌だ。私は頬を2回叩いて、お肉を用意した。
失敗なんて、考えるなっと肝に念じて私は肩ロースに包丁を入れた。
フライパンに切ったニンジンと玉ねぎ、お肉を入れていく。
炒めもののいい匂いがする。
完成形の味も形も分からないけど、どんどんと過程をこなしていく。
味付けといっても、ルーを入れるだけで後気をつけるのは水の量だけ。そして水の量だけがいつも痛恨ならミスとなる。
野菜もシナシナになってきたので水を入れることにする、しっかり測り、もう一回水の量を再確認して入れる。
そしてルーを入れてグツグツと煮込んでいた
「くんくん、あぁ........いい匂いぃ」
ハヤシライスのルーを濃くしたような?そんな匂いが私の鼻腔をくすぐった
とても美味しいそうだ。
混ぜていると、どんどんとドロドロになっていきビーフシチューになって行く
「で、できた!」
私は、少しそれを小さい皿に掬おうとしたが何故かそれを止めてしまった。
審査はお母さんたちにしてもらう。そう思った。
そして、それを同時に私も食べようと。
〜 〜 〜
「あらっ、今日はビーフシチュー?!」
お母さんがキッチンに入り、私の作ったフライパンを眺める。
「うん.....作ってみたんだ、食べて欲しい」
「当たり前よぉ〜!食べる食べる」
そして私たちは食卓に並んだ
「いただきます」
みんなで合掌をしていただいた。
「じゃあ、いただくね?」
「う.....うん」
お母さんと一緒にスプーンを口に運ぼうと思っていたので、お母さんと同時にビーフシチューを口の中へ入れた。
正直、怖かった......また、美味しく無いのではないかと。
1番自信がある作品だからこそ、私の中で不安がたまらなく溜まっていた。
「「はむっ......!!っ!」」
私はあまりの驚きにこの一言しか言えなかった。
「「美味しいぃ.........」」
私はお母さんと同時にその言葉を発した。
じゃがいもが軽く噛むと溶けるように柔らかくて、そして大事な味が今まで食べた私のどの料理よりも当たり前だが美味しかった。マイルドで濃すぎない、美味しすぎた。
私は喜びのあまり、頬に垂れるほどの涙を出していた。
念願の、お母さんの本気の美味しいが見れた
唯一美味しく作れるビーフシチュー 鯵の閉まり @ajikou
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