クッキングチームパティシアン・序章

和登

クッキングチームパティシアン・序章

ビスケット国クッキー州、これは焼き菓子を愛する地域でのお話


チチ、チューピー、チチ

鳥のさえずり、あれはきっと春の鳥だ。早朝特有の空気の冷えを感じながらユウカは学校を目指しているところだった。今朝も試したいレシピを携えて調理室に向かう。

だがユウカが家をでて三十歩先程の公園に見慣れない二人組がいた。


バスケ部のヒロミと新聞部のカオル、二人とも私に用があって偶然鉢合わせたそうで別に組んではいないらしい。


「昨日はそっけなかったけど、ユウカは部に入ってくれるんだろ?」それを確認したくって来たんだとヒロミは言う。勧誘?その話は断ったはずだけどなぜだろう?


「ユウカさんの作ったクッキーのおいしさを記事にさせて欲しくって、あんなにすてきなクッキーを作れる生徒の事は報道してこそ新聞部ですから」とカオル。確かに私は料理部だけど、食べさせたことあったっけ?


頭に「はてな」を浮かべるユウカに二人は見覚えのある袋に入ったクッキーを見せた。


「1on1で勝負をしたあとに渡して来たんだろ?ノールックパスなんてさ、オレは目がいいからキャッチできたんだぜ?」


「昨日、下校する時にあなたと今月の記事について話したでしょう。別れた後、ポケットに入っていたの。ユウカさんからしてたいい匂いと同じだからわかったんです」それにと二人は続ける


昨日は聖ビスケットの日、より深い絆を結ぶためにお菓子を贈る日だから間違いないって。そう言ってすっかり盛り上がっている二人。


話を聞いたユウカは両肩を抱えてさすっている。顔は青ざめていた。


「私、あなたたちにプレゼントなんてしてないよ。友達にあげるつもりだったクッキー、数が合わないと思ったらそんなところにあったなんて、最近寝る時に妙な寒気や音がしてたのももしかして…」


目をまるくして見合わせる二人

「もしかして…憑かれてたりそういう?」たぶんとうなずくユウカは小刻みに震えている。


クッキーを渡して来たユウカではない何かがいるのは間違いない。そう確信した三人は謎を解明すべく調査をすることにした。ヒロミはバスケ部に入ってほしくて、カオルは記事のため、ユウカは自分のため…。


まだ彼らは知らない。

クッキーをこよなく愛する妖精が救世主パティシエチームを作らせるために行われたことだと言うことを。それに気がつくのはクッキングちからの高まりがユウカに新たな知覚が目覚めさせる時なのである。


〈序章・完〉

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

クッキングチームパティシアン・序章 和登 @ironmarto

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ