決め(よ)ろ
海は見たのはほんの一瞬だった。
現すなら一言。
そこに写っていたのは——バスタオルが外れた瞬間の由里香の裸だった。
「はい、一瞬ッッ!!」
律也は急いでスマホを閉じる。
海は目を見開く。そして、
「まさかお前……盗撮?」
「んなわけないだろ!! 立花が! 妹が昨日送ってきたんだよ!!」
「妹ちゃんに撮らせたのか……」
「だから違ーーーーう!!」
なんと説明しようと律也は慌てふためく。そんな親友を見て海は笑いを漏らした。
「分かってる分かってる。察するに妹ちゃんから、からかいついでに送られてきたんだよな」
「そうですそうです!」
「でもその写真で思わず大量のティッシュを生み出してしまったと……」
「……そうですそうです」
分かってもらえたと思えば、自分がやらかした事を指摘され結局後悔する律也。
——昨夜。
『はい、お兄ちゃん。今日は友達のうちに泊まってくるマイシスターから寂しくないようにプレゼント♪』
「あ? ぶっーー!???」
昨夜。律也は立花からメッセージとともにとある写真を受け取った。
それが由里香の裸。
バスタオルが取れかかっているところと背後に映る律也の家のお風呂場からして、お泊りに来た時に隠し撮りしたもの。
そういえば、あの時悲鳴が聞こえたような……。
「立花のやつ、なんつーものを……」
口ではそう言うも、律也は写真からをチラチラ見ていた。ついには釘付けのようにガン見。
普段服を着ていて見れない由里香の全て。
男子を魅了するそのおっぱいも、絶対に見ることのできないその下も……
「ごくり……」
律也は生唾を飲む。
家には誰もいない。部屋には俺と写真だけ……。
「バレない……きっとバレない……」
律也はそっとティッシュを一枚取る。
これが始まり。
朝にはティッシュ箱は空になっていた……。
「あああああああああああーーーー!!」
思い出してまた後悔。足をバタバタさせる。
恥ずかしいし、最低だ俺ッッッッッッッ!!
悶絶する律也を眺めながら海は言う。
「律也ー、今更騒いでも過去は変えられないぞー」
「そんなこと一番自分が分かってるわ!」
朝のあの反応からして絶対引かれたはず……嫌われたはず……。
「まぁ告白頑張れよー」
「鞠瀬のやつまじでやるのかよ! この絶対絶滅の状態で!!」
無理だろ! 振られるどころか人生終わりだわ!!
「なぁ律也。大量のティッシュのおかげで答えも出てるんじゃないか」
「え………」
俺の答え……。
てか、また上手いこと言うなよ。
——同時刻。
「そんなに好きなら江藤くんと付き合っちゃえばいいのに」
机を合わせてお弁当を食べている由里香と真矢。
「っ、それが一番難しいのよっ。……しかも別の問題も出てきたし……」
「あー、大量のティッシュなんて今更でしょ〜。気にしない気にしないー」
「え、なんで真矢がその事を」
「あっ。言っちゃった」
真顔の由里香に対して、真矢は顔を背向ける。
「ねぇ真矢。こっち見て。お話しよう?」
「由里香の顔が怖いからしばらく顔見れない……」
「ま〜や〜?」
「はい……」
真矢は恐る恐る由里香の顔を見る。そこにはにっこりと怖い笑みを浮かべた由里香が。
「律也が相談したの?」
「いや、私が海くんとの盗み聞きしたら江藤くんは悪くないよ。2個上に兄がいるし、察したというか……」
「なる、ほど?」
「それで由里香は江藤くんのティッシュの件で……引いちゃった?」
「そ、そんなことはない……わよ。り、律也も男の子だし、そういうのをするのも仕方ないと思ってるし……」
「理解あるいい子だ。あ、もしかして大量のティッシュを生み出した
「っ!?」
図星とばかりに由里香は動揺。
由里香は恥ずかしながらもゆっくり頷く。
「だから朝あんなに……。なんだぁ。そんな事」
「そんな事って、あ、アタシには重大なことなの………! だって、その相手が律也の好きな人ってことだし……」
「ごめんごめん。じゃあ確かめればいいね」
「え、どうやって……」
「そんなの由里香から言わなくても分かってるでしょう」
「なぁ律也」
「由里香」
「「覚悟を決め(よ)ろ」」
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