幼馴染です
「それじゃあ二人組になって体操しろー」
体育教師の指示に生徒たちが二人組を作ろうと各々の場所へ向かう。
「由里香、私と組まない?」
「もちろん。アタシから迎えに行こうと思ってたよ」
由里香と真矢はペアを組み、早速準備運動に取り掛かる。
「由里香。朝はずっと机にうつ伏せだったけど大丈夫だった?」
「!?」
真矢は心配する口調で話しかけた。
が、この女……確信犯である。だだ由里香の反応が見たいだけである。
由里香は分かりやすく反応するものの、
「だ、だいじょぶー。大丈夫だがらっ! ほんと、なんでもないからっ! 心配かけてごめん!」
「なら良かった〜。悩みとかだったらいつでも相談乗るからね〜」
「う、うん……!」
(律也の部屋に大量のティッシュ、しかも1人でエッチしててその妄想ネタの相手が誰なのかが悩みなんて真矢に言えるわけないじゃない!!)
「あれ? 顔真っ赤だけど大丈夫?」
「あ……へへ、平気平気っ! そ、それで真矢はアタシがうつ伏せになっている間に律也たちとなにか話してた?」
「あー、それね。由里香が江藤くんのこと好きって話してたよ」
「え!?」
「冗談冗談〜。でも実際、江藤くんのことは好きなんでしょ?」
「それは……。アイツは幼馴染だし……」
「幼馴染ってだけで好きになったの?」
「ち、違っ」
「この際私にだけ教えてくれない? 江藤くんの好きになったところ」
真矢は逃がさないとばかりに由里香に抱きつく。
由里香はティッシュのことを掘り返されないなら……と話し始めた。
「アイツには内緒、ね。昔色々あったのよ……」
—十数年前—
「やーい! おとこおんなー!」
「女なのに男よりもつよいとかきもー!」
小学生の頃。由里香は同年代の男子より少し力が強くて揶揄われていた。
「うるさいわよっ! てかちゃんと掃除しろー!」
「うわっ! おとこおんながこっちにきた!」
「ほうき持ってる! やられる前に逃げろ〜〜!」
由里香を避けるよに男子たちが教室を駆け回る。
「ちょっと! ねぇその呼び方やめてってば!」
気が強い性格だった由里香だが、男子の嫌がらせにさすがにメンタルにきていた。
じわりと目の端に涙がたまる。
そんな時、由里香の前に男子が現れた。
「おいお前ら! 自分がひよわだからって由里香をおとこおんな扱いするんじゃねーよ!」
由里香の幼馴染、律也だ。
「また律也かよー」
「幼馴染ってやつ? じゃあコイツも同じおとこおんなだ!」
律也まで馬鹿にしだした男子たち。律也は気にすることなく、由里香に近づく。
「アイツらのくだらないことなんて気にするな、由里香」
「う、うん……。律也は私のことをおとこおんなって呼ばないの?」
「何言ってるんだよ。由里香は女の子だろ。名前も由里香って可愛いのがあるじゃん。ほら、ほうきかせよ。代わりにやる。放課後は駄菓子屋に行こうぜ」
律也にしてみれば何気ない一言だっただろう。
それがアタシはすごく嬉しかった。
律也はいつだってアタシは女の子として扱ってくれた。
今思い返してみれば別に特別なことじゃなかったかもしれない。
でもそれだけでアタシの胸はときめて——
「ふーん。江藤くんカッコいいじゃん」
「ま、まぁ。……今もカッコいいけど」
「お熱いことで。しかし由里香が昔、おとこおんなって言われていた時期があったなんて意外だなー。それが今や江藤くんの……(大量のティッシュを生み出す動力源に、ねぇ……)」
「それが今や……なに?」
「なんでもないよ。さぁさぁみんな集合してるから行くよ〜」
——一方。男子組
「大体何で大量のティッシュを生み出したんだよ?」
「それ、今聞くこと?」
バレーの休憩中。海が律也に聞く。
「じゃあ昼飯の時?」
「もっとダメだろ……」
「じゃあ飯食った後だ! それならいいだろう!」
「なんで海がドヤ顔なんだよ……」
それから昼休みになり、律也と海は屋上へ。昼飯を食べ終わった頃だった。
「一瞬だけだからな! 1秒だからな!」
「そんなところで独占欲発動させるなよ……」
律也はしぶしぶスマホを見せる。画面に映っていたのは———
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます