第7話 理由なんてないさ
リン〜ゴん……リン〜ゴん……リン〜
授業終了のチャイムが鳴り、生徒たちはそれぞれに午後からの計画を立てる話に花を咲かせていた。
「テリー迎えに来たよ帰ろう」
タキとクリスが、テリーのクラスまで迎えに来た。
「うん。今行くから待ってて」
3人廊下を歩いていると、後ろからタキに向けられて声がかかった。
「タキ、ちょっと良いかな」
タキの身体は一瞬にして硬直した。不安そうに振り返ると、例の先生が笑顔で手招きをしている。しょうがなく来た廊下を引き返した。
『……今日なの…』
「でも先生。今日は用事が……」
「平気だよ。今日はそんなに時間はかけないから、それに……」
ジョッシュウが、タキの耳打ちで語り掛ける。
「テリーに、知られても良いのかな?」
タキは、ぐっと拳を震わせていた。
『……きたねぇ……』
「タキ、ここで待ってようか?」
テリーの言葉にタキは、二人の方を振り向いて微笑んだ。
「いいよ。先に帰ってて、他の皆も待ってるだろうし、次のバスで帰るから、裏山で会おう」
そうして渋々と二人を帰したタキは、ジョッシュウの方を睨みつける。
「なんで今日なの?忙しい日に」
タキの質問にジョッシュウは、フッと笑ってタキの質問に答えてやる。
「別に理由なんてないさ。ただ明日は休みだしな、だからただ犯りたいだけだ……悪いか?断っても良いんだよ。そうなればテリーもいるしね。テリーはどうかな?兄弟だから同じか?」
ジョッシュウはニヤニヤ笑いながら、タキがどう出るか面白そうに見ていた。
『……くそ……この野郎。人の弱みに付け込みやがって、こんな奴が何で人気があるんだ?外見だけじゃないか。これだったらシュトラスの方がまだ礼儀があるわ……。そうなのだジョッシュウは、女子生徒の中ではダントツ人気があるのだ。顔は人気があるだけあって美形だし、AB型の30歳とまだ若い。おまけに独身。何でこんな事まで知ってるんだ僕は、だぁ〜考えるだけ嫌になる。こんな所で考えてもしょうがない。僕が一人…犠牲になればいいんだから』
「で……今日も当直室か?でもその前に昼ごはん食べたい腹減った」
「今日は俺ん家へ来いよ、昼飯ぐらい奢ってやる」
『家に!!ちょっと場所知らないよ。嫌だけどシュトラスに電話しろって言われてたのに、どうしよう』
「あ、あの先生の家って何処に在るの?それに午後から研修会でしょ?その為に今日午前授業なのに」
「タキの用事に遅れるほど、遠くはないさ 安心しな。研修は15時からだし時間はある。それも運良く家の側なんだよね。研修場…本当運が良いよな。……さあ行こうか」
その時、女子二人がジョッシュウを呼び止めた。
「ジョッシュウ先生〜頼まれていた先日の体力検査の結果の通知クラス別の仕分け終わったよ」
「あああーー。助かったよ。俺の仕事手伝ってくれてありがとうな。気を付けて帰るんだよ」
「はーい。さよなら先生。じゃね。タキ」
女の子たちは、先生の役に立てられた事が嬉しいのか、元気に返事をして手を振りながら、帰って行った。
「生徒に自分の仕事押し付けたのかよ」
「ww。別に良いじゃないか。俺の為に喜んで引き受けてくれる優しい子達がいるって、幸せだな」
そこで、暫くの沈黙が続いた後、鼻で笑いながら、顔を自分に近づけてくるなり、耳打ちで言ってのけてくれた。
「 それに、そうでもしないと、タキと遊べないだろう」
『…このぉー…エロおやじ全く有り得ない』
その後タキは、渋々後を付いて行った。車で20分の所にジョッシュウの住んでいる家があった。
「え?先生の家って一軒家?他に誰か住んでるんじゃ…」
「安心しろ。親父は自由気ままな世界を渡り歩いているフリーカメラマンで、いつ帰ってくるか、お袋は居ない」
「そうなんだ…」
意外と複雑な家庭環境で育ったんだなと思いつつ。タキはある物を探していた。
『え〜と、番地は…』
門の所に書かれた数字を見る……
「あっ!先生。すみません。ちょっと用事で、友達の所へ至急電話かける所があったんで、あそこの公衆電話で掛けてきます。先に行って下さい。後から行きます……」
「電話くらい俺の所でかければいいのに…って、誰に何の急用だ?」
「い、いやちょっと……良いんです。公衆電話で…今日テリー達とソリーをする予定だったんだけど、その時にテンマも誘ってて、その時に借りていた本返すから、次の巻貸してって言い忘れてて、伝えないと…」
勝手に名前を出して申し訳ないと思ったけど、実際にジョッシュウも知っているクラスメイトの名前を出した方が、信憑性があって信じてもらえるかもしれないと考えた。
「そっか。アイツの家もお前らの家から近かったものな。鍵は開けておくから入ってきたら、施錠をしてこいよ。2階の一番奥の寝室で待ってるからな、万が一このまま逃げたら、次はテリーに手を出すから。そうそう玄関に入ってきたら、ダウンジャケット掛ける場所があるから、そこに掛けて来いよ」
「………………」
『何とか、信じて貰えた?』
複雑そうに頷くと、ジョッシュウと別れて公衆電話に走って行った。
電話の前まで来ると、鞄の中から、カードケースを取り出す。
「今思えば。無理やりシュトラスの携帯番号の書かれたカードを入れられて、良かったわ」
その当時は、要らない入れるなって、大騒ぎしてたっけ。あまつさえ絶対抜くだろうと推測されて、接着剤で封をされていた。
「いまだにカードケースを見る度に笑えてくる。何?この心配性の親みたいな事を…」
トゥッルルルルル…………トゥルルルルルル……トゥ
《はい?どちら?》
受話器口で、いつものと違う、ぶっきらぼうな声色のシュトラスが、何やら用意でもしてるのか、ゴソゴソと音がしてる。
「あっ!シュトラス…僕…タキだけど…」
《……えっ!タキか?初めてだな。お前から電話寄越すなんて、嬉しいな♡…どうした?》
僕だと分かった途端にいつもの知っている優しい声に代わる。何だ?どっちが本当の声だよと、突っ込みたい感満載だが、今はそんなこと気にしている場合ではない。
「うっ!どうしたはないだろう。お前が電話しろって言ったのに、それより昨日言ってたやつ今日なんだ。またあいつに……」
《嬉しいぜ♡お前が俺を頼ってきてくれて、それでそこの場所は》
「しょうがないからだ。今のところ頼れる奴はあんたしかいないんだから、それで此処の場所は、Jomen…の58-17早く来て、お願い」
《分かったすぐ行く。待ってろ》
「それから………」
受話器を置き、ジョッシュウの家まで、ゆっくりと歩いて行く事にした。少しでも時間稼ぎになればと思ったのだが、生憎時間を稼げる程の距離では無かったようで、ジョッシュウが待っているであろう2階に、残念ながら…着いてしまった。
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