リハビリ⑤

「このSAGA SAGAの世界地図をお見せしましょう。」八千代さんにより部屋に写り出されてスクリーンには、海を隔てて大きく分かれた3つの大陸が表示されていた。


「遼司さん、この世界は大きく3つの大陸で構成されています。1つはレムリア大陸、1つはムー大陸、最後に…」八千代さんがそこまでいうのと同時に私の中で思い浮かんだ大陸…。


「も、もしかして、アトランティス大陸ですか?」現世の世界では突如として消え去った幻の大陸とも超古代文明の地ともいわれている有名な大陸だ!


「そうです!安直過ぎるから分かりやすいですね♪その大きな大陸以外に、細々とした島々があると言う感じでしょうか…。良く知る地球世界にある大陸が3つに分かれている位の認識で構いません。そして、この特別神務機関局『SGMA』の中枢にあるこの局長室がある場所がこちらになります。」


八千代さんが右腕を軽く振りかざすとスクリーン上の大きな3つの大陸が次第に縮小され、詳細な地図上の形に変化した。そして、その地図上の上にある赤く光る点の様な物を八千代さんが動かしているようだ。


大都会と思われるような高層ビルが立ち並ぶ建物の中心部に違和感さえ感じる程の古ぼけた小さな映画館みたいな建物…。次第にそこが拡大されていき、どう考えても一昔前の格闘技の道場の看板が入口の上に掲げてある…。


「あ、あの…。この場所はこの建物なんですか?」


「特別神務機関局『SGMA』」という大層な名前がついて、創造神直属の機関と聞いたが、まさか、こんなおんぼろな建物が、「特別神務機関局『SGMA』」の本部なのか…。外に出てみないと分からないが…。正義の味方の基地としては余りにも無防備、余りも古臭さを感じる…。


「遼司さん、驚かれていらっしゃるんですね!想像と違うので!」八千代さんがそう言った。


「は、はあ…。名前だけ聞くと凄い場所のように聞こえましたので…ちょっと期待していたのですが…」


「安心してください。一応、プレイヤーの方には、この「特別神務機関局『SGMA』」の存在は名前だけしか公表されてありません。正しく秘密機関なんです。その為、その拠点がどこにあるのかも存在さえも明かされていません。プレイヤー界隈の中では、既に都市伝説化しています。その為の表立っての完全なダミーな建物です。この建物の地下には何十層に渡り、最高の技術・最高の設備が整えられています。そういう理由で表立っている建物は所謂、フェイクですよ♪それに…こちらをご覧ください…」八千代さんが、スクリーンに投射されている入口の看板を拡大する…。そこに書かれてある言葉は『阿武隈探偵事務所』…。殴り書きした様な文字でそう書かれてある…。


「阿武隈探偵事務所??特別神務機関局『SGMA』なんじゃないんですか?」そう答える私の姿に八千代さんは急に吹きだすように大きな声で笑いだした。


「ハハハハハハッ…。ですので、秘密機関といっているじゃないですか。遼司さんはハードボイルドを演じてくださいと伝えたはずですよ!ハードボイルドと言えば、こちらも安直に考えて探偵じゃないですか!だから、この建物の表向きは、『阿武隈探偵事務所』です。そして、プレイヤーの方には、遼司さんは謎の未解決事件だけを専門に行うハードボイルドな探偵という設定で通しています!」八千代さんから次々と伝えられる言葉に唖然とする以外にほかはない…。余りにもベタ過ぎる設定…。誰がこんな事を考えたのだろう…。あのショロトルという創造神か…。それとも違う誰かか…。


「それでは、話を続けますね。で、この場所があるのがアトランティス大陸のアトランティアという、この世界で1番大きな都市になります。そして、この場所が33区にある夕焼町の中上滝と言う場所です。ここまでの説明でご不明な点はございましたか?」吹き出した大笑いの後から妙に笑顔の表情を隠さないまま、八千代さんは私に向かって言った。


「いえ…大丈夫です。では、続きをお願いします。」私は八千代さんにそう答えた。八千代さんは笑顔のまま、また正面に振り返り、どこに言うでもなく唐突にこう答える…。


「では、次はこの特別神務機関局『SGMA』の仕事について説明しますね!」八千代さんの声に合わせて、今まで地図が写り出されていたスクリーンの表示が変わる。ようやく、私がこの場所に異世界転生なるものを果たすことになった正義の味方についての真相がわかるはずだ!

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