第11話 新たな門出

「お兄様!!おはようございます!」


大きな声でドアをバンと開けてきたのはもちろん可愛い僕のヴェラだ。


「…おはよう」


制服に着替えていた僕はきらきらした視線を向けてくるヴェラに微笑みかけた。

もうほぼ着替え終わっていたのでタイを締めていただけだけど。


そう、制服。


僕は今日、魔法学園の入学式だ。

僕の入学式なのに何故かヴェラが一番浮かれているみたい。

まあ入学式は家族も見れるからだろう。

ヴェラは淡いピンク色の可愛らしいドレスを纏っている。

だいぶ大人っぽくはなったけど11歳になったばかりであどけなさはまだまだ抜けない。


「今日はお父様もスケジュール調整してお休み取ったんですよ」


ヴェラが一層ウキウキしている理由が分かった。

どんな理由であれ父様と出かけるなんてなかなかないもんな。


領地経営や手広い事業展開、今日までの3年ほど仕事を色々勉強も兼ねて手伝ったけれどあんなに大変だとは思わなかった。

引き継ぐと思うとため息が出る。


「お兄様は先に出るんですよね」


「うん、入学式の前にやることがあるからね」


「入学式は楽しみだけど、明日からはお兄様は学園に行くからあんまり遊んで貰えないのは寂しいです」


ヴェラがちょっとだけしょんぼりする。

なんだこの可愛い生き物は。

寮があるけど意地でも通学にして良かったなあと心から思う。

馬車苦手なんだけどね。


「リギル様、そろそろお時間ですよ」


「分かってる。ヴェラ行ってくるよ」


ユピテルに返事をするとヴェラを撫でた。

ヴェラははい、と答えてまた後でと続け、そのまま屋敷を出るまで見送ってくれた。


ちなみに送り迎えはユピテルがするけど、学園内は基本的に寮以外生徒以外立ち入り禁止なのでユピテルも中にはついて来れない。

ちょっと解放される気分だ…。





入学式は一度教室に集まってから面通しと自己紹介をして、クラスメイトと教師を知ってかららしい。

その後入学式で…ここでは学長の話がある。

そういうのは高校以来だけど、毎回寝てたなあ。

今回は公爵子孫という立場上気をつけなきゃ。


クラスはSクラス、Aクラス、Bクラス、Cクラスがある。

Sクラスは基本的に加護持ちで成績も優秀な人が多い、ぶっちゃけ攻略対象が集まるみたいなクラスで人数も少ない。


Aクラスは成績優秀者、魔力の保有量が多い人、成績が悪くても加護持ちならこのクラスだ。

あとはまあ順当に成績と魔力の順で、この方式なのは教える内容が変わってくるのと加護持ちの精霊に愛されし者の魔力が暴走した際、対応できるのが同じ加護持ちだからという理由。


門の前に着いて馬車から降りた。

人々がざわっとしてチラチラこちらを見ている。

公爵家の馬車は豪華だからめちゃくちゃ目立つよね…。


「あれが…」

「……リギル様」


ざわざわと人の話が聞こえる。

僕の話?

どこか遠巻きに見るようなたくさんの視線になんだか気まずい。


「リギル、おはよう」


周りの反応をものとせず、話しかけてきたのはリオだった。とてもありがたい。


「おはよう、リオ」


感謝の意を笑顔で示すと猫被ってるなーと小さい声で言われた。後でシメる。

失礼なヤツだ。


「いつもはオレに笑いかけたりしないだろ」


「お前がヴェラに色目使うからだろ」


「使ってない使ってない」


呆れるリオと並んで建物の方に歩いていく。

学園は貴族の魔法学校というだけすごく立派だ。

門から距離が長くて庭が広い。

建物に向かう道はレンガ作り…いや、レンガにされた大理石だなこれ…。

大理石レンガ。


「クラスはあそこから入る時に教師に紙をもらうんだ。ほら、手紙来てただろ。それと引き換え」


合格通知のことだ。

まあ基本的に落ちることはないけれど形式的に入学試験があったから。

ちゃんと持ってくるよう書いてあったから持ってきている。


「リオとはクラスが離れるだろうな」


リオは木の精霊の加護持ちだ。

まあゲームやってたから知ってるんだけど、仲良くなったころに教えてくれた。

依然のリギルなら嫉妬でキレてたかもな。


「一緒のクラスが良かったけど……」


リオが先に行って学園の中央の建物の扉の前に居る教師に通知を渡した。

間違いなく、ここが授業を受ける母屋だろう。

少しして、金の封蝋のしてある封筒を渡された。

同じようにして僕も同じものを受け取る。


「入学おめでとうございます」


「ありがとうございます」


形式的に礼をする教師に僕も形式的に返す。


建物内に入るとすぐに広いロビーで、みんな立ったまま封を開けて確認して、確認できた人から中身の紙を見ながら移動している。

バラバラの方向なので入るクラスの地図も入っているだろう。


「先に開ける」


リオがそう言って僕より先に封を切った。

中の紙にはやはりSクラスということと、教室の場所が地図とともに書かれていた。


「リギルのも見ていい?」


「いいよ」


多分、Aクラスだろうけど。

成績はそれなりに頑張ったからね。


金色の封を切って中身を取り出す、中に入ってたのは………


「え、」


「「Sクラス?」」


思わずリオと僕は顔を見合わせ同時に呟いていた。


紙には間違いなく、Sクラスと書いてある。

これは誰かのと取り違えてたとかじゃないのか?


封筒を確認するとしっかりリギル・ユレイナスと記入されていた。


これ、間違いじゃないの……?



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