第2話 妹≒天使
“明けし星の
ヤンデレ好きのヤンデレ好きによるヤンデレ好きの為の乙女ゲーム……
ヴェラが16歳の時に両親が事故でいっぺんに亡くなり、4つ上の兄であるリギルが若くして当主になった。
しかしリギルは要領が悪く女と遊んでばかりで公爵家は傾く一方…。
ついにヴェラは裕福な伯爵家に売るように嫁がされることになる。
絶望したヴェラはそのまま嫁ぐかいっそ家出をするか選択を迫られることになった。
前作とは打って変わっての主人公が真逆の転落していくストーリー。
人気乙女ゲーム、昏き星の救世主で一部に評判だった鬱要素の全展開。
そんなこんなでわりと話題になってたゲームで僕も興味本位で全ルートクリアした。
あまりにもヒロインに救いが無さすぎて泣きながらヒロインを救う2次創作を読んだのを覚えている。
バッドエンドがよくてメリバだったからな…。
「いやでもまだ決まったわけじゃないしな〜」
ベッドの上でゴロゴロと転がる。
広いからこんなの余裕だ。
同名なだけかもしれないし…
寝たら現実に戻ってるかもしれないと思って寝て次の日になったけれどまだ僕はここにいるので、もしかしてやっぱり生まれ変わりなのかもしれない。
というか十中八九生まれ変わりだろう。
さすがに心臓を突き刺さされて生きてるわけが無かったよな。
ちなみに夜仕事を終えた父親が様子を見に来たが僕にそっくりの髪と瞳の色でめっちゃイケメンだった。
僕もあんな風に育つのかな…フフ……
なんて悦に浸っている場合ではない。
ヴェラに会ってヒロインかどうか確認しなきゃいけないよな…。
でもぶっちゃけこの
ヒロインの兄は立ち絵のないサブキャラだったけど見たことある気がするのはそのせいだったのかもしれない。
ヒロインの兄じゃぁ、似てるし美少年だよな。
ついでにヴェラに会えば年齢も確認できるはず。
ヴェラにいまヴェラ何歳?って聞けばいいんだ。
小さい子なら疑問も抱かず答えてくれるだろう。
そんでもってヴェラがヒロインなら僕は4つ上のはずだ。
見たところ、8歳から10歳くらい…なんだろうか…
ただ問題は勝手に部屋から出たらめちゃくちゃ心配されかねないってこと。
でも母様が会えるって言っていたから来るのかな…。
とりあえずカルラが用意してくれた本を手に取った。
まだ横になっていろと言われたので暇つぶしに頼んだのだ。
日本語でも英語でもない不思議な言語だけれど特に不自由なく読める。
とりあえず魔法がある世界だということは分かっていたため魔法の本を頼んだけれどなんか役に立ちそうもないな。
この世界が属性魔法なせいだ。
色々考えていると、コンコンと扉を叩く音がした。
「リギル、起きているかしら」
この声は母親、改め母様だ。
「はい、起きてます」
上半身だけ起こして返事をするとゆっくりドアが開いた。
女神の生誕である………
…じゃなくて。
つい母様が美人すぎて女神が産まれたのかと思ってしまった。
僕の顔を見て、顔色が良くなったわね、と微笑む姿は前世隠キャオタクの僕からしたら眩しすぎて目の毒だ。
己を律さないと思わず拝んでしまう。
「お兄ちゃま」
母様の眩しさに目を細めていると下の方から鈴を転がしたような可愛らしい声が聞こえてきた。
思わずそちらを見るとそこに居たのは
「て、天使……???」
天使
そう、まさしく天使である。
僕と同じ白銀の髪は癖っ毛で長い毛の先がくるくるしているがふわふわの細い毛は光を浴びてきらきら光っている。
眉をへの字に曲げてベッドに両手を置いてこちらを見つめる少女の瞳は僕のようなルビーのような真っ赤な色ではなく、ビー玉のようなころころした丸いピンク色の瞳だった。
まだ小さい手はふにふにで肌は白くて滑らかで、ベルベットのような…
とにかくとにかくこの世の者とは思えないくらい可愛らしい。
そして、特徴を見てもヒロインであることは間違いなさそうだった。
「あら変なお兄ちゃま。ねえ、ヴェラ」
「ヴェラはお兄ちゃまの妹よ。びょーきで忘れちゃったの?」
くすりと母様が笑ってヴェラを撫でるとヴェラはさらに心配そうな顔をして僕を見つめた。
「あ、ごめん、ヴェラ。ひ、久しぶりに見たらヴェラがとても可愛いくて、天使のようだと思ってしまったんだ」
ヴェラにそう微笑みかけると、ヴェラはヴェラ可愛い?そうかなあと言いながら少し照れたように自分の頬に両手を当てた。
その仕草すら可愛くて身悶えしそうだ。
「あら、どうしたのリギル。そんなこと言う子だったかしら…」
さすがの発言に母様が首を傾げた。
まずい、前のリギルがどんな感じか分からないからどうしたらいいのかわからない。
「か、母様、僕は生死を彷徨って、もう死ぬのかもと思ったときに母様たちやヴェラに色々正直になれなかったことを後悔したのです。それにいい子じゃなかったかもってことも。だからその、これからは色々気をつけたくて。母様もまるで月の女神のように美しく、素敵だといつも思ってました」
我ながらよく恥ずかしげもなくこんな言葉が出てくるもんだ。
いや、ほんとはめっちゃ恥ずかしい。
でも天使とか言った以上こう誤魔化すしないので腹を括ろう。
僕の言葉にまあとヴェラと同じように母様は両手を頬に当てて照れた。
「リギルがそう思ってたなんて知らなかったから、恥ずかしいけれど嬉しいわ」
嬉しそうな顔はヴェラに似ている。
照れる母娘、なんと可愛らしいのか。
「お兄ちゃま、きをつけるって?」
やば。
前の僕の素行が分からないから正直なんとも言えないんだけど…
当たり障りのないことを言っておくべきか。
「ヴェラともっとたくさん遊ぶ、とかかな」
そう言いながらヴェラに微笑むと、ヴェラの大きな瞳が更に見開かれて、ぱあっと表情が輝いたような気がした。
「ほんと?お兄ちゃま、ヴェラと沢山遊んでくれる?」
「うん、体力が戻ったらね」
「ご本ならいまでも読んでくれる?」
さっき魔導書を読んだ時文字なら理解できたから問題ないだろう。
「うん、いいよ」
僕がそう言うと、ヴェラはやったーとバンザイした。
ヴェラね、ずっとお兄ちゃまにご本読んだりして欲しかったの、と嬉しそうにぴょんぴょんしている姿はまるで草原にいるウサギみたいだった。
つまりとにかく可愛い。
こんな可愛い妹を虐めるとかリギル(ゲーム)まじて本気でおかしいんじゃないか?????
そういえば、前世の妹にもよく絵本を読んであげていたな。
小さい頃だけど。
「お母しゃま、お兄ちゃまと一緒にいていい?」
「リギルが良いなら良いわ」
母様がそう言うとヴェラがわーいとベッドにぽふんと飛び乗った。
僕の妹が天使すぎる。
「リギルは無口で大人しい子だと思っていたけど、色々恥ずかしくていえなかっただけなのね」
母様はそう言いながらくすりと笑う。
なるほど、リギルは幼少期は誰も寄せ付けない内気なタイプだったってことか。
大人しかったんならこれから多少変わっても大丈夫かな。
「ご本なら母様が持ってきてあげるわね」
「お母しゃま、ありがとうっ」
ヴェラはそう言いながらもぞもぞと布団に潜って、僕の前辺りに顔を出した。
そうしてる間に母様は本を取りに行ったようだ。
「これでご本一緒によめるねえ」
ヴェラの言う通りこの体制なら一緒に本が読めるだろう。
ヴェラは小さいのでヴェラ越しに本も見えるはず。
「ヴェラ、今年で何歳だっけ?」
「5しゃいよ。おとなでしょ?」
なるほど。じゃあつまり僕は9歳か…。
それにしても舌ったらずな喋り方と得意げな感じが可愛い。
「ふふ、そうだね。じゃあ、ご本自分で読めるんじゃない?」
「だめ、お兄ちゃまに読んでもらうの!」
ヴェラはそう言いながらぺんと僕の足を叩いた。
ちなみに全然痛くない。かわいい。
「冗談だよ」
「じょーだん、きあい」
嫌いと言いたいんだろう。
可愛く頬を膨らませているので、じゃあ次から気をつけるねと言うとヴェラはまた満足そうな顔に戻った。
しばらくすると、母様が本を持ってきたので僕は約束通りヴェラに絵本を読んであげることにした。
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