家業のかなめは第六感

@mia

第1話

 うちは失せモノ探しをしている。

 第六感の強い父方の祖母、叔母、姉が主要メンバーで、母が事務をしている。第六感の弱い父は占いとは全然関係のない会社に勤めている。

 大学生の僕はアルバイトとして叔父(叔母の夫)の手伝いをしている。

 叔父の仕事は、祖母たちが「ここにある」と指摘した場所で失せモノを探す一番体力のいる仕事だ。

 叔父は探偵を名乗っているが、依頼は祖母たちだけのようだ。

 

 人探しの依頼が来た。

 いなくなった息子(三十歳)を探してほしいという母親の依頼だ。

 依頼者が帰った後に祖母たちが浮かない顔をしていたので、もう死んでいるのかと思ったら違うらしい。

 探す人はあまりよくない人だというのだ。

 叔父が調べると息子は既婚者で、妻へのDVが近所で知られる男だった。

 それだけではなく、子どもの頃からトラブルが多く何回も補導されたことがあるらしい。

 男が帰ってこない方が妻にとっては平和だと思うが、依頼を受けたのだから探さないといけないのか。

 祖母は「うまくいくよ」と笑っているが。


 依頼を受けてから数日後の金曜日の夜に祖母が「ここにいる」と示した場所は、隣県の山の中だった。

 叔父と二人で探しに行くと、山の斜面を滑り落ち動かない男を見つけた。

 叔父が警察に連絡して、警察から依頼者に電話し、依頼者が男を確認した。

 うちの仕事は終わったが、何かすっきりしない。

 

 男は金銭トラブルで知人を殺し、山に埋めに来たらしい。

 テレビで少しやってたが、人気アイドルの飲酒喫煙であっという間に消えた。

「失せモノ探しで死体発見」などと悪目立ちしないで済んでよかった。

 祖母の言っていた「うまくいく」は、依頼が完了し余計な騒動に巻き込まれなかったことを指しているんだよな。

 男の妻がこれ以上傷付かなくて済む、妻にとって「うまくいく」じゃないよな。

 すっきりしないがもう考えるのはやめる。はっきりさせても、もう男は死んでいて今更どうにもならないのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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