第27話 恋のキューピッド?
結局、いい案が浮かばなかった二人は放課後の結衣と真二の様子を監察することになった。
真二は掃除当番なので月人達が相談してから結衣が真二を迎えに行くとギリギリ間に合ったのだ。
学校の帰り道、結衣と真二の様子は親しげに話してはいるものの恋人同士というよりも友達同士、さらに真二の背が低く、童顔のせいか兄弟の雰囲気に近い、もちろん、真二のほうが弟だ。
今回はせめて今真二に好きな人がいるかどうかを聞くはずだったがそのことを聞こうとするとどうしても口ごもってしまい、何も言えなくなる。
結局二人はいつもどおりの友人ムードで別れ、別々の帰路についてしまう。
「どう、夜王くん何か思いついた?」
「何かって、あいつあの性格直さないと告白無理だろ」
「告白よりもどうやって浅野くんに結衣ちゃんを好きになってもらうかでしょ」
「いや、そっちは問題ないと……」
そこまで言って美咲は「夜王くんも役に立たないなあ」と漏らし、不可視魔法をかけた布袋を取り出す。
「なんだそれ?」
「ふっふーん、これぞあたしの秘策、前に本で読んだんだーー、こうすれば恋は成就するって」
美咲は鼻歌を歌いながら楽しそうに布袋から取り出した黒衣と黒帽子、サングラスを身に付け、いつも持ち歩いてる剣の不可視(ふかし)魔法を解除し、一般人にも見えるようにする。
「これでよし!」
「これでよしって、バリバリ嫌な予感がするぞ……」
「ようし、これで」
「ちょっと聞いてますか立花さん?」
真二が結井と分かれてから三分後、真二の目の前に一つの影が飛び出す。黒衣に身を包み、黒いサングラスに黒い帽子、そして右手には西洋風の剣を持った小柄なそれは少女の声で言い放った。
「お前が浅野真二か、悪いが命をもらっ……」
月人の投げた大きめの石が美咲の脳天を直撃、美咲はその場に倒れ動かなくなり、月人は真二に「邪魔したな」と謝り美咲を担ぎ上げると横道に逃げていった。
「……な、何、今の人達?」
真二からだいぶ離れてから美咲は意識を取り戻す、もとからほんの数十秒程度に意識を朦朧とさせるよう加減して投げたため体に問題はない。
「ちょっと何するの夜王くん、もう少しでうまくいきそうだったのに!」
月人に文句を言う美咲に月人は額に青筋を立てて問いかける。
「悪いけどなあ立花、おまえ、あれはどういう作戦だったんだ?」
「何って恋愛の定番でしょ? 片方を危険に巻き込んでもう片方が助ければ二人は恋に落ちるっていう、その名も吊橋(つりばし)効果(こうか)!」
びしっ!
月人の空手チョップが美咲の額に直撃し、美咲は涙目で「痛い」と漏らす。
「あほ! もう片方が助けるって今、差江島いねえだろ! それにそれは女を男に惚れさせる方法で男を女が助けたって普通恐いとか暴力的な女子と思われるだけだし釣り橋効果は別のだ! お前もっかいその本の内容思い出してみろコラ!」
「……」
美咲の思考がフリーズしてから一分後。
「そっか、それもそうだね、いやあ、夜王くんて思ったより頭いいんだね」
「お前の頭が悪すぎるんだよ、授業中も寝てばっかだし、お前モンスターの知識だけじゃなくて人間の知識も足りてないんじゃないのか?」
「むーー、だけど人外(モンスター)の夜王くんよりは絶対マシだもん!」
「じゃあ入学した時にやった学力テスト学年何番だったんだよ?」
「二八二番目だよ(三一〇人中)」
堂々と自分のバカっぷりを露呈(ろてい)する美咲に月人は鼻で笑い言い放った。
「悪いな、俺六番だから(三一〇人中)」
「!?」
天地がひっくり返ったような表情で驚く美咲に月人はクックックッと意地悪な笑いを浮かべ美咲は文句を言う。
「ずるいよ! 犬なのに蝙蝠なのに、人間よりも頭いいなんてぇえええ! もう!」
美咲は顔を赤くしながら月人の胸をバンバンと叩き月人は邪悪な笑みを浮かべ続けた。
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