亜の日と同じ空を視ている
嗤猫
Episode 碧天
急な階段の先を見上げると、白白とした青い空。
薄暗い湿気と苔の匂いに満たされた塔には、空を切り取り、発光する青い異空間の入口の様な窓が等間隔に並んでいる。
螺旋階段を登りきると、青が視界いっぱいに広がった。
今日は新たな王の帰還日。
民が人として生きられる国をという志のもと、旧制度の改革を行い、領主を説得し、現地を見て廻る。わずか3年ほどの短い年月で、それは目に見える成果となり、国中が彼に信頼と希望を寄せている。
その彼の横には。
黒い魔道士のマントは、塔の上を抜ける風を受けて音を立ててはためいている。
遙か遠くの稜線にかけてより白くグラデーションになっていく風景を眺めながら、両手を挙げて身体を伸ばした。
「今回のミッションは大成功!」
何もかも一人で背負って生きていく過程で歪み、闇堕ちする筈だった王子の友人として苦楽を共にし、信頼できる仲間を増やし、適切な時期に一歩離れた場所からバックアップ。
仲間と共に各地を巡る旅の中で、将来の伴侶と運命的な出会いを果たす。
この小さな国はこれから、豊かな成長を永く続けるだろう。
「それでは皆様 これにて終幕」
右手を胸に、片足を引いて、恭しい挨拶とともに、その人物は―――霧散した。
カラン。と、拙い細工の腕輪が転がった。
◆◆◆
「ただいま〜」
ベッド以外何も無いこの空間に戻される度に口から出るこの言葉は、返されることも無く。
ベッドに向かう足をふらりと反らし、部屋の隅に歩み寄る。
鎖骨下に手を宛てると、身体の内側を舐めながらナニが集まった。無理矢理、嘔吐く時のように息を詰めると、じわりと硬質な結晶が押し出されて手中に落ちた。
親指大の透明な結晶は、光に透かすと青い遊色がキラキラと踊っている。無感動に一連の動作を行うと、ソレを床に投げ捨てた。
◆◆◆
神隠し
神による現地人の拉致事件。ちょっとした好奇心であったり、稀には寵愛であったりするが、圧倒的強者が引き起こす現象に玩ばれるだけの、一方的な蹂躙。
その女神は言った。
『運命の糸が絡まっちゃった』
その女神は言った。
『ちょっと解してきて頂戴』
その女神が言った
『あなた、使い勝手抜群ね』
それから、ずっと此処に幽閉されている。
◆◆◆
役割は【運命の糸を解す事】
ルールは【私が好意を持って関わる事】
絡まった糸が解れて、歯車が動き出したら、後はその世界で【死ぬまで過ごす事】
◆◆◆
時々女神が問いかける
『ねぇ、今どんな気持ち?』
お陰様でいつもいつも地獄の様な気分です。
これで満足感かクソビ○チ!
ユラリと現れたゴテゴテと装飾された扉を潜って、また茶番劇の仲間入り。
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