第61話

「あの鬼、あのゲーム。あれは実際に起こった事だ。俺と千春の記憶は合致している」



それならなぜ、お前たちは生きている?



「信じられないかもしれないけど、あれは生と死の狭間での出来事だったんだよ。



鬼に殺されたあたしたちは現実世界で目覚め、鬼に連れていかれてしまう人たちは死ぬ。



あたしたちはどちら側になるかあのゲームで決められていたんだよ」



千春の言葉が脳内にこだまする。



冷凍保存されていた人間たちを思い出す。



「他の……クラスメートは……?」



「みんな死んだよ。先生も船のスタッフも、鬼に連れていかれてしまった。



だけど、あのゲームで殺された俺たちだけは、目覚めたんだ。鬼に連れていかれることはなかったんだ」



イブキが言う。



あのゲームで殺されたら、現実世界で目が覚める……。



ハッとした。



『綾、お前だけは生き残ってくれ』



強く願ったあの気持ちを思い出す。



最後までゲームを勝ち抜いた綾は、どうなった……?



「綾……は……?」



そう聞くと、2人が目を見交わせて俺から視線を外した。



それだけで何を意味しているのか理解できた。



「綾は、鬼に、連れていかれたのか!?」



必死に早口になって聞く。



「綾はまだ生きてるよ。でも……」



そこまで言い、千春は口を閉じてしまった。



「連れて行ってくれ……! 綾のいる場所に、連れて行ってくれ!!」

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