第60話
だけど、それがすべてなんだ。
好きという気持ちがすべて……。
ハッと目を開けると真っ白な天井があった。
蛍光灯が眩しくて目を細めていると、部屋の中に人の声が聞こえ始めた。
慌ただしく走る音やドアの開閉音が聞こえて来たあと、俺の視界に見知らぬ男がうつった。
その男は白衣を着ていて俺になにか話しかけている。
頭がぼんやりとしていて最初何を言われているのかわからなかったけれど、徐々に覚醒していくと、俺の名前を聞いているのだと理解できた。
「成瀬……早人」
風邪を引いた時のようなガラガラ声が出た。
「早人!!」
そんな声が聞こえて来て目だけ動かすと母親と父親の姿が見えた。
2人は目に涙を浮かべて俺を見ている。
なんだ?
なんで泣いてるんだ?
わからなくて混乱する。
「よかったですね。もう大丈夫でしょう」
白衣の男が両親を安心させるようにそう言うと、2人は男へ向けて何度も頭を下げていた。
そして気が付いた。
白い部屋に白いベッド。
そして白衣の男。
ここは病院なのだ。
「俺……なんで?」
少ししゃべるのにもひどく疲れてしまう。
「船の事故に巻き込まれたのよ」
母親が答えた。
船の事故……?
記憶と辿る。
鬼の顔が一瞬浮かんだ。
「事故から7日経ってるんだ」
父親が言った。
7日?
鬼とのゲームで死んでいったメンバーを思い出す。
千春、イブキ、星斗、文夫、小恋、ミヅキ、浩成。
自分を抜けば丁度7人だ。
「早人!」
そんな声が聞こえて来て俺は視線を向けた。
千春とイブキの2人が部屋の中に入って来る。
俺は大きく目を見開いた。
2人が観覧車から吹き飛ばされた光景が蘇って来る。
俺は2人から逃れようと身をよじる。
しかし俺の体は色々なチューブに繋がれていて身動きができない。
「早人安心して。あたしたちはちゃんと生きてる」
千春がそう言い、俺の手を握って来た。
その手にはしっかりとした暖かさがあった。
「な……んで……?」
声を絞り出すと、イブキが小さく頷いた。
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