第41話
☆☆☆
金色の船の上には沢山の装飾品が飾られていた。
コンクリートで作られた土台の上に鬼の銅像が乗っている。
グネグネと曲がりくねった大きな壺や、自由の女神に似た鬼の像もある。
どれも土台にしっかりと固定されているが、見たことがないものばかりだった。
きっと、人間の世界には売られていないものなのだろう。
鬼が乗る船という事ですべてが特大サイズだ。
客間へ続く扉は見上げるほど大きく、広い。
俺たち4人が横に並んでもまだ余裕があるほどの廊下。
船の中を歩いていると、自分たちが小人になったような気分だった。
「誰もいないみたいだな」
先を行く浩成が呟いた。
船の中はとても静かで、電気音だけがどこからか聞こえてきている。
人間はもちろん、鬼もどこにもいない。
「やっぱり、船にはいないんじゃないか?」
俺がそう言った時だった、浩成が大きな扉の前で立ちどまった。
それは客室とは違うようで、銀色の扉をしていた。
「これ、なんて読むんだろうな」
扉の前には何かが書かれているけれど、それは日本語でも英語でもなく、全く読むことができなかった。
ただ、雰囲気で言えばレストランの前に置かれているメニュ―表によく似ていた。
「鬼たちのレストランじゃないの?」
俺と同じ事を感じたのか、ミヅキがそう言った。
「食べ物はもういらないよ」
綾が自分のお腹をさすってそう言った。
「いや、違うみたいだぞ」
浩成が扉に触れてそう言った。
「触ってみろよこの扉。すごく冷たいぞ」
そう言われて、俺は一歩踏み出した。
銀色の扉に触れてみると、それは冷凍庫のように冷たく、すぐに手をひっこめた。
「もしかして、食料を保管している部屋なんじゃない?」
綾が言う。
だけど、客室と同じフロアにそんなものがあるとは思えなかった。
「鬼たちは食いしん坊だもんね。ここに冷凍庫があってもおかしくないんじゃない?」
ミヅキが言う。
俺は首をかしげつつ、もう一度扉に触れた。
冷たい扉にグッと力を込める。
するとギギギッと低い音を上げながら扉が開いたのだ。
空いた隙間から冷気が廊下へと這い出て来て身震いをする。
中は電気がついていなくて薄暗かった。
扉と同じで部屋の中も銀色になっている。
その部屋を埋め尽くすように、人がいた。
人はズラリと整列し、両腕をロープで縛られ、天井から吊るされているのだ。
扉を開けて空気が動いたことで、微かに揺れている人もいる。
誰もが目を閉じ、冷気で髪の毛や服が白くなり始めている。
「嘘でしょ……」
綾の声が聞こえて来ても、俺は反応することができなかった。
吊るされている人の中にクラスメートを見つめた。
担任の教師もいた。
船の中で見かけたスタッフもいる。
みんな、なにも言えなかった。
目の前にぶら下がっている数千人に目が奪われたまま、動けない。
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