初めて持った第六感
水谷一志
第1話 初めて持った第六感
一
「私、今何か不思議!今までにない感覚なの。これ……、『第六感』って言うのかなあ?」
麻里は、その初めての感覚にウキウキしていました。
二
麻里は、幼い頃から不思議な子どもでした。
部屋にずっと引きこもり、友達とも遊んだことがほとんどありません、さらにその部屋も殺風景なもの。
「こんなところに一日中いて、この子は大丈夫なんだろうか?」
「本当に、立派な大人になれるのだろうか?」
両親や周りの人たちからは、そうやって心配されていました。
三
ただ、麻里はとても賢い子どもでした。本が大好きで、いつも傍らには愛読書。しかもその内容も簡単な絵本はすぐに卒業し、難しい宇宙の本や数学の本、また歴史の本や哲学の本。大人たちも「これはちょっと分からないな……」というような内容のものを麻里は軽々と理解してしまいました。
四
そんな麻里にはちょっと変わった癖もありました。
「私、お絵かき大嫌い!」
小さい子なら誰もがするお絵かきを、麻里はとても嫌がったのです。
でも麻里は歌を歌うのは大好きでした。さらに部屋にはピアノが置かれ、麻里は毎日それで遊んでいました。音楽も読書も大好きなのですが……、絵を描くことはどうしても好きになれません。
そしてその理由を大人たちが訊いても、
「だってうまく描けないもん!」
の一点張り。
五
そのような麻里ですが、本の中で、「第六感」という言葉を知りました。
「私の見たことのない世界が、『第六感』で見られるのかなあ……?」
麻里は、その「第六感」に強い憧れを持つようになりました。
六
そして両親はある日、お医者さんから麻里の「ある秘密」を聞かされました。
「そんなことって……」
麻里のお父さん、お母さんはそれを聞き、大きなショックを受けました。
七
「お父さん、お母さん、私、『第六感』ができたよ!」
麻里はとても喜んで両親に報告しました。
それを聞いて両親も大喜び!また両親は麻里に「本当のこと」も伝えます。
「麻里、それは良かった!でもその感覚、『第六感』とは言わないんだよ」
【やっと、色が分かるようになったんだね!】
PS これは有名な哲学の思考実験、「マリーの部屋」を元ネタに執筆しました。 (終)
初めて持った第六感 水谷一志 @baker_km
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