初めて持った第六感

水谷一志

第1話 初めて持った第六感

「私、今何か不思議!今までにない感覚なの。これ……、『第六感』って言うのかなあ?」

麻里は、その初めての感覚にウキウキしていました。


麻里は、幼い頃から不思議な子どもでした。

部屋にずっと引きこもり、友達とも遊んだことがほとんどありません、さらにその部屋も殺風景なもの。

「こんなところに一日中いて、この子は大丈夫なんだろうか?」

「本当に、立派な大人になれるのだろうか?」

両親や周りの人たちからは、そうやって心配されていました。


 ただ、麻里はとても賢い子どもでした。本が大好きで、いつも傍らには愛読書。しかもその内容も簡単な絵本はすぐに卒業し、難しい宇宙の本や数学の本、また歴史の本や哲学の本。大人たちも「これはちょっと分からないな……」というような内容のものを麻里は軽々と理解してしまいました。


 そんな麻里にはちょっと変わった癖もありました。

「私、お絵かき大嫌い!」

小さい子なら誰もがするお絵かきを、麻里はとても嫌がったのです。

でも麻里は歌を歌うのは大好きでした。さらに部屋にはピアノが置かれ、麻里は毎日それで遊んでいました。音楽も読書も大好きなのですが……、絵を描くことはどうしても好きになれません。

そしてその理由を大人たちが訊いても、

「だってうまく描けないもん!」

の一点張り。


 そのような麻里ですが、本の中で、「第六感」という言葉を知りました。

「私の見たことのない世界が、『第六感』で見られるのかなあ……?」

麻里は、その「第六感」に強い憧れを持つようになりました。


 そして両親はある日、お医者さんから麻里の「ある秘密」を聞かされました。

「そんなことって……」

麻里のお父さん、お母さんはそれを聞き、大きなショックを受けました。


 「お父さん、お母さん、私、『第六感』ができたよ!」

麻里はとても喜んで両親に報告しました。

それを聞いて両親も大喜び!また両親は麻里に「本当のこと」も伝えます。


「麻里、それは良かった!でもその感覚、『第六感』とは言わないんだよ」

【やっと、色が分かるようになったんだね!】


PS これは有名な哲学の思考実験、「マリーの部屋」を元ネタに執筆しました。 (終)

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初めて持った第六感 水谷一志 @baker_km

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