花園学園第六花

四藤 奏人

花園学園第六花

 両開きの大きな門を潜り抜けたら、お城みたいな豪華な建物がお出迎え。

 試験日に初めて来たときは、ここが学校なんて全然信じられなかった。

 私が通っていた中学校なんて、ボロボロの校舎と錆びたスライド式の門のセットが、お化け屋敷みたいだったのにね。

 この天と地ほどの差が何処にあるかと言えば、ようはコレですよ、お金ですよ。

 私は運良く推薦入学できたから、学費はかからないんだけど、真面目に払ったら入学費だけで、とんでもない額になってたと思う。


 お化け屋敷から一転、いきなり真逆の生活が始まっちゃうけど、私の心と体はついて行けるかな。

 学園内に置いてあるものが全部お高く見えて、廊下歩いてるだけで展覧料を取られないか、ドキドキしちゃうし。

 正門くぐってから校舎までバス移動だったことを忘れて、歩いて登校しちゃうし。

 ちなみに、歩いて一時間かかった。

 そして入学二日目にして、二回目のウォーキング登校。

 私やって行けるよね?

 

 「今日からあなた達は第六花候補生として、高等部で三年間の勉学に励んで頂きます。私は担任の大橋よ」


 花園はなぞの学園は、国内でも有数の女子校で、未来の特別捜査官を育成する、女子校。

 小学生から大学生まで、基本的にはエスカレーター式の学校なんだけど、たまに私みたいな外部生もいるみたい。

 全部で六クラスあって、それぞれ花の名前が付いている。

 あと、クラスのことを一花、二花って呼んでるね。

 

 「まずは仲間としてお互いの自己紹介をしましょう」


 担任の大橋先生は、クルー系美女ですね。

 スーツをビシッと着こなして、艶々で長いそうな黒髪も、流さず一つにまとめている。

 大変惜しいのが、パンツという点だよ。

 私的には、タイトスカートに黒タイツの方が好みだから、パンツはどうしても許せないところ。

 せめてシャツをもう少しワイルドにはだけさせてくれたら、バランスが取れるのに!


 「では、窓側の席から順番にお願いします」


 「では、わたくしからですわね」


 高橋先生に指名され立ちあがったのは、金髪ツインテール美女。

 制服のミニスカートにニーソックスを合わせる神コーデ。

 ありがとうございます。


 「如月葉月きさらぎはづきですわ。初等部からずっとこの学園に在籍しておりますの。分からないことがあるのなら、聞いてあげてもよくってよ」


 典型的な悪役令嬢キャラみたいな話し方だけど、良い人っぽい。

 金髪ツインテの類にも漏れず、きっとツンデレ属性だね。


 「如月さん。第六感の紹介もしてください」


 第六感って、五感の次のあれのことだよね。

 何でそんなものを紹介するのかな。

 というか、咄嗟にそんなの思いつく?

 私も考えとかなくちゃだよ。


 「ええ。では、言いますわよ?私の第六感は――胸囲を即座に測定することができる、ですわ」


 胸囲を即座に測定!?

 凄いっ、凄すぎる……てなるか!


 「素晴らしい第六感ね。当校で更に磨きをかけていきましょう」


 高橋先生、マジなの?

 もしかして、おかしいのは私?

 クール美女にあんな真面目な顔で肯定されたら、これ以上疑えなくなるじゃん。

 他の皆も無反応だし。

 いや、この場合の無反応は、肯定ではないのでは?

 だからと言って否定とも取れない。

 結局、どういう状況なのか分からないよ!


 「では次」


 よく分からないまま次に行ってしまった。

 しかたない、後で如月さんに聞いてみよう。

 高橋先生のバストサイズ。


 「はい」


 続いての自己紹介タイムは、ブロンドセミロングの清楚系美女か。

 両サイドを三つ編みにしてるけど、留めに使ってる紐が綺麗だな~。

 あれは確か、組紐だったっけ?


 「東雲静佳しののめしずかと申します。私の第六感は、髪を切ったことかすぐにわかる、ことでしょうか?」


 おっとりとした口調もお上品な感じでいい。

 いいんだけど、第六感が疑問形じゃん。

 それでいいんですか、高橋先生。


 「素晴らしい第六感ね。今後の成長が楽しみだわ」


 高橋先生の「素晴らしい第六感ね」頂きました。

 ちょっとした特技にしか思えないけど、高橋先生に素晴らしい言われたら、何も言うことないよ。

 

 「では次」


 「は、はい!」


 お次はどんな子かな。

 腰丈まで伸びたピンクの髪は、柔らかくウェーブがかかっている。

 先の二人より幼い感じ可愛くて!?

 ま、まさか……。


 「わ、私は早乙女姫さおとめひめです……」


 巨乳美女キターっっっ!!

 如月さん!

 早く早乙女さんのバストを測定してください!!

 って如月さんのあの顔は、もう測定終わってますね。

 表情から察せられるに、相当な記録がでたことが推測される。

 私、このクラスで本当に良かった。


 「私の、だ、第六感は……。あの、その……」


 早乙女さんは恥ずかしがり屋さんなのかな。

 人前で話すのが苦手みたいだね。

 勇気を出して、頑張れ早乙女さん!


 「ど、どどど童貞かどうかわかりますっっ!!」


 アウト。

 こんな可愛い子にそんな第六感は要らない。

 早乙女さんの第六感は、動物とお話できます、それで良し。


 「素晴らしい第六感ね。これからの学園生活で精進なさい」


 精進しなくていい!!

 こんなの成長させてどうするのさ。

 これ以上の進化の余地ないよね。

 だって、アリかナシかの二択じゃん。


 「次の人」


 いよいよ私の番だ。


 「はい!」


 自分の番が来てようやくわかった。

 みんなの第六感は凄い。

 インパクトがあって、自己紹介で顔と名前が覚えやすかった。

 でも、私にはそんな凄い能力は無い。

 高等部からの編入性だから、みんなより少し遅れてるのかな。


 「有賀未来ありがみらいです。私の第六感は、霊感です」


 とりあえず、入試申し込み書に書いたのを言ってみたけど、これでいいのかな?


 「……」


 クール美女高橋先生が硬直している。

 みんなも痛いくらいにこっち見てるよ。

 もしかして、ダメだった?

 入学二日目でぼっち確定とか嫌だよ!

 とりあえず、この空気を何とかしないと。


 「なーんて――」


 「素晴らしい第六感ね。貴女には大いに期待しているわ。頑張って頂戴ね」


 「はい、頑張ります」


 何故かの激励。

 びっくりして、生返事しちゃったよ。

 あー、疲れた。

 自己紹介でこんな疲労感は初めてだー。

 ま、高橋先生に「素晴らしい」を頂いたから、問題なしということで。


 「霊感ですって?」


 「霊感ですか」


 「れ、霊感?」


 問題ないですよね、高橋先生?

 「素晴らしい第六感」ですよね?

 何でみんな変態を見るような目で見るのさ。

 やめてよ、私はムッツリであって変態じゃないんだからね。


 こうして私の学園生活初日は、みんなに変態認識をされて幕を閉じた。



設定補足

 花園はなぞの学園……特別捜査官養成学校。女子校。六クラスに分かれている。クラスごとに花の名前がついており、一組を一花、二組を二花と呼ぶ。

 一花【鈴蘭】……見回りや見張りに特化したクラス。

 二花【菖蒲】……聞き込みや聴取に特化したクラス。

 三花【白百合】……一花、二花が見つけた星候補を、さらに絞り込むことに特化したクラス。

 四花【ダリア】……尋問に特化したクラス。

 五花【白菊】……武力に特化したクラス。

 六花【青薔薇】……第六感によって、未解決事件を解決することを目的とし作られたクラス。

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花園学園第六花 四藤 奏人 @Sidou_Kanato

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