学生トーク「第六感編」

山田 武

学生トーク「第六感編」



「──そうだ、第六感だ!」


「……おい」


 突然机を叩き立ち上がった友人に、怪訝な眼を向ける少年。

 幸い、そんな奇行は休み時間ということもあり、大して注目されずに済む。


「第六感っていうと……アレか? 急に閃くみたいなヤツ」


「そうそう、それそれ。アレいいよな、あれば絶対に便利だろ」


「……まあ、そりゃあな。けど、第六感って結構種類多くないか?」


「野生の勘とか、おニューなタイプとかか。それなりにあるよな……目に見えないから、いろんな作品でいろんな読み方を付けているからだよな」


 少年たちが目を通しているバトル物の漫画やアニメなどでは、よく本来では知覚不可能な概念を捉える現象を第六感に類似した力で把握することが多かった。


「けどさ、それってアレじゃん──ご都合主義。物語が上手くいくように、潤滑油として出てくるだけの方が多いだろ」


「バッ、なんて夢の無いことを……! 俺は信じてるぞ、第六感はある!」


「いや、俺もあるとは思うぞ。だけど、俺たちが漫画とかでイメージした奴とは違うと思うだけだ…………あったあった、一説によると第六感って地球の磁気を読む感覚らしい」


 スマホで『第六感 存在』と調べ、そこに上がる記事を適当にながし見しての発言。

 要はファンタジーなものではない、ということが伝われば良かったからだ。


「いちおう聞いておくけど、お前が欲しい第六感ってそういう科学的に証明されたヤツなのか?」


「…………違う」


「じゃあもういいな、それより次の授業の科目ってなんだっけ?」


「……英語だろ」


 第六感など無くとも、記憶力があれば分からなかったことは分かる。

 そんな当たり前の日々の中に、彼らは今日も生きているのだった。


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