第3話

「誰? この女」



 頭上から落雷のような言葉が降ってきた。


 課長の手が止まる。聞き覚えのある声、それは思い出そうとするより先に誰だか判明した。



 妻の声なのだから――――




樹里じゅり!」


「女、とは失礼な言い方ね?」



 課長は立ち上がり妻を睨み付ける。



「待って待って、課長、こいつは俺の妻で、って、樹里こそなんで?」


「――――私は、あなたの旦那の上司ですけど」


「で? 上司なら部下に何してもいいんですか!」


「何言ってんの? 別にこれは……」



 課長には言葉に詰まり、目線を下げる。樹里は腕をくみ、更に険しい顔になる。



「これは何? 頭とか撫でて、それに勇樹も、何嬉しそうにしてんの」


「樹里ちゃん、大丈夫?」



 二十歳くらいの若い男性が妻の後ろで心配そうにこちらを見ている。



「お、お前こそ、今日は女友達と飲み会じゃなかったのかよ! そこの男と不倫してんだろ!」


「何バカなこと言ってんの、友達と飲み会だよ」


「じゃあこいつは誰だよ!」




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