Memory Error
ゼパ
第1話
目が覚めると白い箱部屋にいた。
何一つない部屋だった。
「状況を整理しよう」
そう考えようとした時だった。
「何も・・・思い出せない」
名前も、年齢も、ここに来るまで何をしていたかさえも。
俺は……誰だ? 俺は、何者なんだ?
考えても答えなど出るはずもなく、ただ混乱する頭を抱えたまま呆然と立ち尽くす。ダメだ、考えろ。頭の中全てを使って考えろ。
俺は何故こんな場所にいるのかを。
そんな時だった。
俺を呼ぶ声が聞こえた。俺の声で。
お前は誰だ、と質問するとアイツは俺に答える。
「お前の中の無意識、あるいは思い出の集合体」
何を言ってやがる、と思い立ったが頭の中で何かがひっかかる。
俺の中の無意識・・・ってなんだ?
無意識、気が付かないこと、か。
それは俺自身が気づいていない俺のことなのか。
刹那、何かが俺に訴えかける。
ここに居続けるのは駄目だと。
考えるべきは、どうすれば出ることができるのかということ。
思い出の集合体。
アイツが言ったこの言葉の意味を考えないといけない気がした。
何故?
何故俺はここにいてはいけないと思ったのか?
何故思い出さないといけないのか?
それは、思い出す必要があるから。
思い出の、集合体。
思い出の集合体ってなんなんだ?
その瞬間、意識が急速に覚醒し現実に引き戻される感覚に襲われる。体が、頭が、心がすべてを超越する。
「なんだ、そういうことだったのか」
思い出したと同時に、俺の体がなくなっていく。
「俺はお前の一部、記憶のかけらだったんだな」
じゃあな、もう一人の俺。
そんな優しい声が最後に聞こえた気がした。
Memory Error ゼパ @aaaa_xepa
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