永遠にともに 〜この恋運命何%?〜

みゅー

会いに…

〈ミツタロウ視点〉









ミツタロウ「蒼紫あおし!」






店の前を通る黒い影に

ニッと口の端を上げて早足で入り口に向かい

ガラッと店の戸を開けて声をかけると

振り返った蒼紫の手には少し先にある

和菓子屋の紙袋が握られていた






ミツタロウ「さっそく手土産か?笑」






そう揶揄う様に問いかけると

蒼紫は少し眉を寄せて「違う」と答えているが

俺の口の端は中々下がってこずに

「お熱いねぇ」と不機嫌気味な顔の蒼紫を見て

楽しんでいると「若住職」と和菓子屋の大将が

声をかけながら駆け寄って来た






和「コレも持ってってくれ」





アオシ「いえ、もう十分頂きましたので…」





和「いいんだよ!

  夢乃ちゃんも坊守ぼうもりの修行で朝早くから大変だろうし

  甘い物食わせてやってくれよ」






二人のやりとりを眺めながら

蒼紫の手にある紙袋の意味が何となく分かり

益々口の端が上がっていった…





( ・・・そりゃ…あの言葉を聞いちゃったらな… )






数日前の就任式の日に

急に現れた夢乃ちゃんに誰もが驚いたし

麗子のオヤジさんが夢乃ちゃんを連れ出そうとした時に

俺もどうしていいのか分からなかった





蒼紫の母ちゃんが止めに入って

夢乃ちゃんを奥に行かせた後も

麗子のオヤジは「どう言うつもりですか」と

声を上げていて檀家達数人も騒ぎ出していた…





住職である蒼紫のオヤジさんは

腕を袖の中へと通し目を閉じ続けていて

就任式はどうなるのかと内心あたふたしていると

「なんで戻って来た」と蒼紫の声が聞こえ

皆んな話すのをやめシンッとした中

奥に行った夢乃ちゃんと話しているであろう

蒼紫の声に耳を傾け出し…






「おじさんが

 アタシの幸せを勝手に決めないでよッ」





夢乃ちゃんが蒼紫を「おじさん」と

呼んでいるのを聞き

やっぱり俺の考えはあっている様な気がして

本当の婚約者じゃないんだと思った





ショウ「おっ…おじさん?」





隣りに立っている翔も小さく呟いていて

皆んなも…顔を見合わせていた…







「アタシの幸せは…

 何処にいるかじゃない…誰といるかよ…」






アオシ「お前はココにいちゃいけねぇんだよッ」






「ココにいるのッ…あたしの…

 アタシの幸せは…蓬莱蒼紫なのッ」






( ・・・・あれは…響いたな… )






夢乃ちゃんの最後の言葉は

お寺中に響いていて

多分…参列者皆んなの心にも響いた…




夢乃ちゃんは出て行ったんじゃなく…

蒼紫が寺から出そうとしたんだろう…

夢乃ちゃんの事を思って…






和「お代はいいの、いいの!

  就任式は…いい物見させて貰ったしな…笑」






アオシ「・・・・・・」







しばらく経って

蒼紫が夢乃ちゃんの手を引いて

現れた二人の顔は…何と言うかボロボロで…

微笑ましくも見えた…





お互い泣いていたのが分かる位に

目は赤く濡れているのに

幸せそうに笑っていたからだ…





( あんな風に真っ直ぐな愛を叫ばれたらな… )





当の蒼紫は恥ずかしい様で…

なんとも言えない表情で菓子を受け取り

和菓子屋の大将にお礼を言っている






ミツタロウ「ふっ…お前のそんな姿を見る日が来るとはな

    待ってろ!うちのも持って帰れ」






幼少期ぶりに見た泣き顔にも驚いたが

こんな風に照れの混ざった困り顔の蒼紫なんて

見た事がなかったし

何故か嬉しさを感じた俺は

晴れてめでたく本物の婚約者となった二人に

米を送ろうと10キロの米袋を取ろうとすると

「もう届いているぞ」と翔の笑い声が聞こえた






ミツタロウ「お前なんでここに…

    それに、もう届いてるってなんだ?」






この時間は畑に行っている筈だし

めったに商店街に現れない翔が

顔を出したから驚いていると

少し奥にある米袋を指差して

「アレだ!」と言い出した






ショウ「今、お前の父ちゃんと鳥屋のおっちゃんが

   弦蒸寺で夢乃ちゃんにプレゼントしてたよ」






ミツタロウ「オヤジが?」






配達に行ったまま中々戻って来ないと思ったら

弦蒸寺に行っているのかと

「あのバカオヤジ」と呟くと

翔が手を叩いて笑い出し

「仲良く鶏小屋作ってるよ」と蒼紫を見て言うと

蒼紫は「鶏小屋?」と驚いていた






ショウ「新しい鶏を夢乃ちゃんに送ったみたいだよ」






アオシ「・・・・・・」






うちのオヤジは前から

夢乃ちゃんを見て鼻の下を伸ばしていたが

この前の就任式後は

家に帰った後も「聞いたか?私の幸せは」と

夢乃ちゃんのセリフを何度も口にしては

デレデレと笑っていて…





鳥屋のおじさんと仲良く貢ぎ物を持って行き

どんな顔で古屋を作ってやってるのかも

想像出来てしまい

「すまん…」と蒼紫に謝ると

話を聞いていた和菓子の大将が

「アイツら」と小さく呟き

蒼紫の手にある紙袋をパッと取り上げ

「若住職はまだお参り途中ですよね」と言いだし…



 



和「俺も…前住職に

  ちょっとばかし用があるのを思い出したから

  これはそのまま届けておくよ」






そう言って来た時よりも

早足で自分の店のある方へと走って行き

浮かれているのがよく分かる…






アオシ「・・・・・・」






ショウ「アレだな!

   今までは麗子や麗子のオヤジに気を遣っていたのが

   この前ので一気になくなったからか

   皆んな堂々と会いに行き出したな?笑」






友達の婚約者に堂々と会いに行く

自分の父親にどんな目を向けたらいいんだと

気まずさを感じながらふとある疑問が浮かんだ…






ミツタロウ「・・・お前が何で知ってるんだ?」






まるで見て来たかのような口ぶりだったし

まさかと言う目を翔に向けると

「あぁ…」と手を頭の後ろに回し

数歩下がりだした…






ショウ「いや、蒼紫の嫁さんになるんなら

   親友としてちゃんと挨拶しとくべきだろ?

   だから今日取れた野菜を持って

   チラッと覗いたんだよ…笑」






アオシ「・・・・・・」






桜祭りの打ち合わせや就任式で

会っている夢乃ちゃんに

改まってなんの挨拶だよと俺も…

多分蒼紫もそう思った…









   

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