第六話「仲間とともに」(中編②)
――あれは、二か月ほど前の話だ。
私たち三ツ者のメンバーの中でも高レベルのプレイヤーは、そのほとんどが現実世界に移ってきていた。
ゲームにログインできなくなる可能性を考慮していたわけではなかったが、ゲーム内のログから情報が漏れないようにと、前々から現実でも情報共有の手段を作っていたことが功を奏し、すぐに連携をとっての諜報活動を開始することができた。
最優先として情報収集を開始したのは三点。
現実世界にプレイを移しているプレイヤーが、どのくらいいるのか。そして、可能であればそのプレイヤーの情報をプロファイリングしていった。
次にこのゲームの正体だ。
現実世界でプレイヤーのスキルを使えるとか、現代科学の枠を明らかに超えている。
その真相を探っていくことは、このゲームを戦い抜いていくために重要なファクターになるはずだと考えた。
そして最後が、テスターパーティーメンバーの発見と監視だ。
制作側の人間であるならば、そのうち尻尾を出すかもしれないとふんだ。
三ツ者のリアルに移ったメンバーを三班に分け、私たちは諜報活動を開始した。
勿論、ゲーム内にあえて数人残して、内部からも情報収集を行った。
ゲームの正体は何一つとして情報が拾えなかったが、リアルのプレイヤー数が約二千百万人ほどであることは、すぐに明らかになった。
ゲーム時代のプレイヤー数が、約五千二百万人だと言われていたはずだから、どんぶり勘定で約四割が現実に来ているということになる。
その中でも危険なプレイヤーや、ゲーム時代に有名だったプレイヤーには固定の監視をつけることにした。
その中には
テスターパーティーのメンバーを探すのも難航した。
なにしろ、派手に動いている人がほとんどいないから。
そんな中、来島茜は一番に見つかった。
テスターパーティー遊撃手の紅空こと来島茜を見つけた後は、芋づる式で情報が手に入った。
各メンバーの所在地まですべてを特定することはできなかったが、来島茜が幼少期にいた
桐原兄妹の存在は、異常なまでに強固な隠ぺい工作が施されていたため、逆に不自然な点をたどっていくことで見つけることは容易かった。
諜報の一環として、私は桐原一輝のいる高校に入学。
ただの後輩として接触をはかり、真意を探るつもりだったのだけど、数ヶ月間、桐原一輝を監視していると、桐原一輝自身、何も知らないのだという事実が浮き彫りになるだけだった。
こうなると、桐原一輝が製作者の関係者なのかさえ怪しくなってきてしまう。
ゲームの真相を探るという意味では行き詰ったと、そう思っていた。
そんな折、
そもそも、レベル200になったからと言って、噂に聞くような聖灰が本当に手に入るのか。
その情報すらつかみきれていなかったのだから、私は一時的に桐原一輝を放置し、レベル200に達した
その矢先、構成員は
構成員にとって何の接点もない霧生市に、なぜやってきたのか。
その謎を追うべく追跡を始めると、ある人物が構成員に接触を図ってきた。
その風貌は来島茜によく似ていて、装備も魔剣士のそれであることから、私は一つの仮説を立てた。
構成員に接触してきた人物は来島茜よりも年上に見えた。
そして、他人と言いきれないほどよく似ている。
つまり、母か姉かはわからないが、身内なのではないだろうか、と。
この仮説が正しかった場合、テスターパーティーは制作陣の身内かそれに準ずるもので、このゲームがデスゲームになることを教えられていなかったのでは? と推測した。
私は、すぐに行動をおこした。
来島茜に情報を流したのだ。
来島茜の反応は早かった。
来島茜が祖母に転校をお願いするやり取りを盗聴することで、
つまりテスターパーティーとは、制作陣の子供たちで構成されたパーティーなのではないだろうか。
その発想に行きあたるのに、そう時間はかからなかった。
盗聴して得た情報の中には、来島茜の母がゲームサービス開始とともに蒸発したというものもあり、桐原兄妹の親も十中八九同様なのは疑いようがなかった。
だからあの兄妹は、あんな立派な家に二人で住んでいたのか、と納得もいった。
とすると、テスターパーティーたちも親を探している可能性は高い。
ならば、現実でのテスターパーティーの実力を確かめつつ、真相に迫ってもらえばいい。
そう考え始めた矢先に、おあつらえ向きに事件が起こった。
その現場を探ると、構成員が
丁度いい。そう思った。
規約すら無視した事件である以上、制作陣側が無関係とは考えにくい。
テスターパーティーのメンバーが制作陣の子供たちなら、こんな事件を放っておけないと首を突っ込んでくれるだろう。
そうなれば、このゲームの真相に迫れる可能性は非常に高い。
そうして私は行動を始めた。
無関係を
そうして、本当に必要となったとき私自身も正体を明かし、共にこのゲームの真相に迫ろう。そう、思っていたんだけれども……。
「あれはうかつすぎましたね」
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