移ろい 5-30
車の窓を開けて田舎道を走っていると、不思議な匂いがした。
遠くの空は薄曇り。
横目で見えるあぜ道には、草を刈る人の姿。
私は鼻から息を吸い、静かに車の窓を閉めた。
もう春の面影のない空気がすこし辛くて。
胸いっぱいに詰まった青臭い空気を、逃したくなくて。
車内には、ぬるい空気が充満していく。
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