春、六日目の出来事
最時
実家、春の朝。
布団の上で目が覚めた。
見慣れない天井。
実家に帰ってきていることを思い出した。
身体を起こしてカーテンを開ける。
いい天気。
春分。
窓を開けると、日を受けた空気が入ってくる。
春の匂いがした。
今年の冬は寒かったけど、もう春が来た。
桜の開花ももうすぐかな。
外を眺めていると、白猫がこっちに来てニャーと鳴く。
餌の催促。
餌をあげながら、一人で寝るのは何年ぶりだろうと、考えてみた。
夫や子どもと離れて、一人で実家に泊まっている。
さみしさも感じるけど、たまにはこんな日があっても良いかなと思った。
こんなこと言ったらあの子は怒っちゃうだろうなあ。
トーストとコーヒーを入れて、ニュースを見ながら、一人、食卓で食事を摂る。
高校時代の朝を思い出した。
キッチンに立つ母の姿を思い出した。
そして、今朝見た夢を思い出す。
母に連れられて保育園へ行く夢。
この年になってもこんな夢を見るなんて不思議なものだなと。
食器を片付けて、リビングでうとうとしているとニャーニャーと声がする。
行ってみると、母の寝室に向かって鳴いていた。
何かあるのかなと寝室の扉を開けると、何か違和感を感じた。
不思議な感じ。
猫もしばらく部屋を見ていたが、行ってしまった。
リビングに戻って、母の病室に持って行く予定のプリザーブドフラワーを眺める。
生花は持って行けないから用意したもの。
今日は母の誕生日。
隣で寝てた猫がビクッと起きる。
電話が鳴った。
私は花を持って病院へ向かった。
今日は母が倒れてから六日目の朝だった。
春、六日目の出来事 最時 @ryggdrasil
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