NAKIWARAI

第1話 〜坂上サヨ編①〜

これは、2月の戦士たる、小学6年生の情熱と怠惰と満足と後悔の物語である。


6年前


わたしには、お姉ちゃんが2人いる。

頭が良くて、リーダー気質のノノお姉ちゃん。

運動神経抜群で、優しいミライお姉ちゃん。

その2人とも、おんなじ私立の中学校、『空華学園』にいって、わたしもその中学に入るから塾に行くことになった。

サピランっていう塾なんだ。

小学校でも、塾に通ってるのはわたしくらい、ちょっと特別みたいで嬉しい!

週に1回、パパに車に乗せてもらって、30分くらいドライブしながら行くんだ。

たっくさん、お話しできて、とっっても、楽しい。

それに、4つクラスがあって、1番上のクラスで、よくわかんないけど、すごいんだって。


それから、4年後


「え?サヨちゃん、サピランなの!?すごいね」

サピランっていうとみんな、すごいって言ってわたしに色々聞いたりするか、自慢してるの?って疎ましそうに言うかの、二極化だよね。

隣のクラスの子蘭くんも、おんなじクラスのサラちゃんも、ミキちゃんも、サピラン入るって。

わたしだけが、サピラン生だったのに。って思うけど、サピランの先輩として、色々教えてあげたい。

「っ…?え?サラちゃん、+クラスなの?+6?え?」

ある時から、成績がぐんと落ちた。4年生は、なんとか真ん中より上のクラスを保つことが精一杯。

1人でいると勉強ができないし、全然勉強量が足りてない。わかってる、塾に行くだけじゃダメだって。

でも、でも、辛い…?なんで、受験勉強なんてやってるんだろう。

学校でだって、何もうまくいかない、物を隠されたり、歩くたびに、暴言を言われたり。もう、いなくなってしまいたい。

勉強できない自分が悪いのに、空気読めない自分が悪いのに…、わかってるのに。

サピランα個別指導にも、通い出して、頑張ろうって、コマ数も増やして、自分で増やしたのに、辛い。何かに押しつぶされそうだ。

「ここの問題、わかる人いるか?」

目を見開く、テキストにかぶりつく。

最近、算数の問題が全くわからなくなった。

分数の足し算レベルのいわゆる基礎問題に躓いてばかりでまるでわからない。

鶴亀算、売買損益、ニュートン算…。

分数ができないと話にならない。

個別指導で、何回も教わるのに何回も間違える。

得意科目の国語で、カバーしていたが、理科も社会も難しくなって、全く理解できなくなって、わたしはジリジリとクラスを下げた。

それから、数ヶ月の月日が経ち、私の本当の受験は、始まった。

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