第8話 ラビッツ・フット
背後で色っぽい声がした。ミリクが振り返ると、砂のテーブルに食事が用意されていた。
アナウサギの獣人だろうか、先端が丸っこい立ち耳がひょっこりと生えている。賢そうな帽子をかぶり、体型を隠す、赤、白、青の貫頭衣を着ている。
「お腹が空いているのでしょう。こっちにいらっしゃいな」
アナウサギの獣人が艶然と微笑みかけてきた。喋り方からして女型の獣人だろう。男所帯の家で暮らすミリクが女型の獣人と触れ合う機会は滅多になく、兄弟同然のモシュと喋るような気安い調子では喋れない。心臓がばくばくして、妙にどぎまぎした。
「え、と……」
ミリクがまごついていると、優しく手を取られた。ふわっと紅茶みたいないい匂いがした。
「あら。もしかして知らない人に付いて行っちゃだめ、と教えられているのかしら」
「え、あ、そういうわけじゃ……」
ミリクは伏し目がちに答えた。まるで自分の口じゃないみたいに呂律が回らない。誘われるがままに並んで歩くと、アナウサギの獣人はそう大きくはなかった。顔の位置はミリクと同じぐらいであったが、立ち耳の分だけ背が高かった。
「アナベルよ。見れば分かると思うけど、アナウサギの獣人」
「ミ、ミリクです」
「ミミリク。可愛らしい名前ね」
どもったせいで、ミリクではなく、ミミリクだと思われたらしい。
訂正しようかと思い悩んでいるうちにミリクは砂のテーブルに案内された。焼きたてのパンがどうしようもなく食欲をそそる。食欲最優先。ミリクは名前の訂正を諦めた。
「ホーラ、あれを用意して」
アナウサギの獣人アナベルが指をぱちんと鳴らした。
「ぐげげげげげ。お持ちいたしました、アナベル様」
「ダギヤア人はなんにでも味噌を塗りたくるのよね。たあっぷり塗ってあげましょう」
密封を解いたアナベルは躊躇する様子もなく、驚愕味噌ダレをパンにぶちまけた。ぶびゅ、ぶびゅ、ぶびゅる、ぶびゅるるる、と景気のいい音がして、パンは瞬く間に真っ黒になった。
「ナアゴヤ・ダギヤアの魂はういろうだったんじゃなかったっけ」
ミリクがじとりと睨む。法螺貝の奴、魂売ったな。非難の視線にもどこ吹く風の法螺貝はぶれることなくせっせと驚愕味噌ダレを運び、一段落するとアナベルに紅茶を振る舞った。
「遠慮なく召し上がってちょうだい、ミミリクちゃん」
「はい。いただきます」
空腹のミリクは食欲に馬乗りにされた。この際、見た目が少々グロテスクでも構うものか。
驚愕の味噌ダレパンにがぶりとかぶりつこうとした瞬間、ミリクの脳裏に「どうでもいいことほど忘れないでほしい」と訴えたモシュの切なげな声が蘇った。モシュ録①から⑤を頭の中で教典のように反芻し、あっさり食欲に屈しようとした己を戒めた。
「これ、食べると記憶を失ったりしませんか。ウイロードのういろうみたいに」
「意外と疑り深いのね、ミミリクちゃん」
「なんでも疑ってかかる性格の悪い相棒がいるもので」
「そう。じゃあ、これはにゃーにゃーこしておこうかしら」
アナベルはミリクの手から味噌ダレパンをさっと取りあげた。
にゃーにゃーこ、とはどういう意味だろうか。
ダギヤア語らしいが、言葉がミャーミャーしていてよく分からない。
「すみません、どういう意味ですか。僕、ナアゴヤ・ダギヤアの魂には通じていないもので」
「ミミリクちゃんはダギヤア人ではないの?」
「どうなんでしょう。自分がダギヤア人かどうか、今まで考えたこともなかったです」
ミリクが落胆した素振りを見せると、アナベルが不憫そうな目をした。
「仕舞っておく、という意味よ」
「そうですか。僕も食欲を仕舞っておくことにします」
腹の虫がぐーぐー大合唱しているが、モシュが不在の間に記憶を失うわけにはいかない。
モシュ録①:【忘れていることさえ覚えていない】
それなのに見ず知らずのアナウサギの獣人にたぶらかされて、モシュの居ぬ間に記憶を手放していたら、モシュはきっと怒る。それ以上に悲しむ。
「ミミリクちゃん、私もダギヤア人ではないわ。シト・トウキヨから流れてきたの」
「そうなんですか?」
「ええ、トウキヨは排他的で駄目ね。トウキヨだけは特別だから特別区。精霊指定都市ではないから精霊も獣人も排除されている。コト・キヨウトにもダイブツ・ナーラにもイテマエ・オーサカにも住んだことあるけど、トウキヨは最低ね。純粋な人間だけが住める死の都よ」
アナベルはいきなりヒートアップし、シト・トウキヨをさんざんこけ下ろした。どぎつい発言の端々に性格の悪さが滲み出てる。案外モシュと気が合うんじゃないかな、とミリクは思った。
しかし、モシュはいまだ〈妖術師の巣穴〉から戻ってくる気配がない。
いつも側にいるモシュがいないと、なんだか調子が狂う。
隣に座るアナベルはモシュではないけれど、ほとんどモシュ同然の存在だと思ったら、だんだんモシュに思えてきた。相棒が相手であれば、よけいな気遣いは要らない。すっと肩の力も抜けた。
ミリクはアナベルを真っ直ぐに見つめると、衒いのない無邪気な笑みを向けた。
「アナベルさん。僕、アナベルさんのこと好きです」
「え、え、え、な、なに? 急になに? も、もしかして、け、けっ、結婚?」
色白のアナベルは顔から火が噴き出しそうなほど真っ赤になった。
「性格が悪いところを隠さずに見せてくれるの嬉しいです。こういうこと直接言うと馬鹿にされるけど、言っとかないと忘れちゃうし、忘れてることさえ覚えてないって責められるから、思ったことは言っておきますね」
ミリクが素直な気持ちを吐露すると、お腹の虫も盛大に騒ぎ立てた。
「え、なに。ミミリクちゃんって〈
「どういうことですか?」
ミリクはきょとんと目を丸くする。
「えっと。その、妖術師って世間的には嫌われものじゃない」
顔を紅潮させたアナベルはしどろもどろで、声も聞き取れないぐらい小さかった。その上、恥ずかしそうに砂のテーブルの下に隠れてしまった。遂には法螺貝に伝言を頼む始末だ。
「ぐげげげげげ。妖術師は太陽を奪った極悪人だと言われてるだぎやあ。と、アナベル様がおっしゃっているだぎや」
「なに、それ。どういう意味?」
伝令役の法螺貝はミリクとアナベルの間を忙しく往復した。
「ナアゴヤ・ダギヤアの〈太陽に見捨てられた町〉が、どうして太陽に見捨てられるようになったのか。全部、妖術師のせいにされているけど、それはシト・トウキヨの陰謀よ。と、アナベル様がおっしゃっているだぎや」
ミリクは伝令がまどろっこしくなり、アナベルが隠れているテーブル下に屈み込んだ。
「アナベルさん、詳しく教えてください」
「ミミリクちゃん。違うの。妖術師は太陽を奪ったりしてない。シト・トウキヨが推進していた〈
アナベルはすんすん泣きながら、シト・トウキヨの陰謀を語った。
「私の祖先であるアナウサギは外来種でね。西洋から持ち込まれた数は二十匹だけだった。ジパング固有のノウサギと違って飼育は簡単だし、模様もたくさんあって魅力的でしょう。ペットとしてアナウサギを飼う人が急激に増え、都市部のあちこちに〈
砂のテーブルの下に身を隠しながら、アナベルは続きを語った。
「アナウサギは高額で取引される投資対象になり、白いウサギを柿色に毛染めするような詐欺事件が横行した。ウサギ売買で巨額の利益を得た兎成金の家が襲われたり、ウサギ泥棒が後を絶たなかった。それにアナウサギは急激に増えすぎた。繁殖力も旺盛だから、二十匹だけだった数がみるみる増えて最盛期は八億匹まで増えた」
「八億……」
想像も出来ない多さにミリクは言葉を失った。
「ジパング政府はアナウサギの規制に乗り出した。無許可で飼育すれば即罰金。兎市も禁止。遂にはアナウサギ一匹を所有するごとに〈兎税〉を徴収するようになった。これで〈兎熱〉は完全に崩壊したわ」
ラビット・バブルは完全に弾け、アナウサギを所有しているだけで〈兎税〉を課せられる。処分に困って、土に埋めたり、川に流してしまう者もいた。ウサギを二足三文で買い集め、その毛皮で帽子や襟巻きを作る新商法も生まれた。シト・トウキヨの大通りにはウサギ肉の鍋を出す屋台まで登場したという。
「投機熱は冷めても、あまりにも増えすぎたアナウサギは一向に減らなかった。アナウサギを駆除するためにジパング政府が重用したのが〈
「アナウサギはどのぐらい生き残ったんですか?」
「妖術の致死率はほぼ100%。生き残ったのは0.2%足らず。私は生き残りの末裔で、生きんがために天敵の〈妖術師〉と契りを交わしたアナウサギの成れの果て」
アナベルの語る血塗られた過去はあまりにも壮絶だった。
「アナウサギには天敵が多過ぎるの。だから隠れてこそこそ生きるしかない」
砂のテーブルの影に隠れたまま、アナベルが黄昏たように言った。
「アナウサギの歴史は分かりました。でも、なんで妖術師が嫌われものになるんですか」
「ここまで説明すれば分かりそうなものじゃない?」
「いえ、ちょっと分からないです」
ミリクが説明を求めると、アナベルが憤りの声をあげた。
「〈妖術師〉はアナウサギ駆逐のために大量動員された。でもアナウサギの数が激減すると、今度は妖術師が大量に余ることになった。職にあぶれた妖術師は太陽光を電力に変換する〈売電業〉でなんとか飢えを凌いでいたけれど、シト・トウキヨが〈
シト・トウキヨは増えすぎたアナウサギを絶滅近くまで根絶やしにした。
増えすぎた妖術師はアナウサギと同じだ。
生命線であった売電業を取りあげられてしまえば、早晩死に絶える。
「まさしく死の都――
アナベルの身の上話は、とても作り話とは思えないほど迫真に迫っていた。
「ナアゴヤ・ダギヤアの〈太陽に見捨てられた町〉はただの見せしめ。売電業を取り上げられた妖術師の反乱という筋書きだけど、シト・トウキヨのでっち上げよ。ダギヤア人がソーラー・パネルに味噌を塗りたくっているのを視察したトウキヨの役人がここら一帯を太陽の届かない不毛の土地にしようと思いついたんだわ。ソーラー・パネルに細工して不良品を卸せば電力供給はなくなるし、権力側の妖術師に太陽遮断の紗幕を張らせれば完璧ね」
「ぐげげげげげ。ナアゴヤ・ダギヤアは見せしめ、見せしめだぎやあ」
「ホーラはアナベルの妖術で動いているの?」
「ぐげげげげげ。ほりゃほーだわ。ほりゃほーだ」
法螺貝が歌うように答えた。多少なりともナアゴヤ・ダギヤアの魂に触れたのか、およその意味が伝わってきた。まさにあなたのおっしゃる通り、と相槌を打ったようだ。
「ほりゃほーだわ。ほりゃほーだ」
ミリクも真似して歌うと、法螺貝が陽気に答えてくれた。
「ほーか、ほーか。ほりゃほーだわ。ほりゃほーだ」
どうでもいいことほど忘れるな、というモシュの教えを実践しているミリクだが、今し方のアナベルの語った内容は「どうでもいいこと」にひとまとめにできるほど軽いものではなかった。ずしりと重くて、ミリクには抱えられないほどの重さだった。
「ホーラ、頼みがあるんだけど」
「ほ?」
「アナベルさんの話を記憶しておきたいんだけど、ういろうはもうないのかな」
砂のテーブルの上にはナアゴヤ・ダギヤア魂の味という触れ込みの味噌ダレパンがあるばかりで、記憶を刻み込むういろうは見当たらない。
「ぐげげげげげ。ういろうはもうやーこみゃあ。今日はもうにゃー。明日いりゃあせ」
もうやーこの意味が分からなかったが、それ以外の内容はだいたい分かった。
ういろうは今日はもう無い。明日来い、といった意味合いだろう。
「そっか、残念。今日のことは今日覚えておかないといけないんだ。明日になったらきっと忘れてしまってるから。でも無いなら仕方がないね」
手元にういろうがあったところで、アナベルの複雑な生い立ちを余さず記憶できるとは思えない。重要そうなキーワードを書き止めておくぐらいがせいぜいだ。
ういろうに代わる記憶装置がないものか、ミリクが目ぼしいものを探していると、法螺貝にしきりに味噌ダレパンを勧められた。砂のテーブルの下に隠れたアナベルがちらちらとミリクを見上げている。
「ぐげげげげげ。遠慮なく召し上がってちょうだい、ミミリクちゃん。と、アナベル様がおっしゃっているだぎや」
ミリクは真っ黒の味噌が塗りたくられたパンにアナベル録と書き添え、覚えておくべきキーワードを列記した。ういろうのようには長く持たない記憶かもしれないけれど、たとえどんなに短い間であろうと、記憶を保持しようと試みることに意味があるのだ。
アナベル録:【外来種アナウサギ、二十匹、八億匹、兎市、兎熱、兎税、ソーラー・パネル、売電業、あぶれた妖術師、死都トウキヨの陰謀】
ミリクが指で文字をなぞっていると、アナベルがおっかなびっくり覗き込んできた。
「なにをしているの、ミミリクちゃん」
「アナベルさんの話を記憶しています。僕、忘れっぽいので」
「まあ、なんていい子なのでしょう。やっぱり私が思った通りの子だったわ」
アナベルは目をうるうる潤ませて感激し、ぴょんぴょん飛び跳ね、小躍りした。
「僕のこと、知ってたんですか?」
「ええ、まあ。そうね。ミミリクちゃんのことは前から目を付けていたの」
隠しごとでもあるのか、アナベルが歯切れ悪く答えた。それから慌てて弁解を加えた。
「目を付けてたっていうのは変な意味じゃないのよ。ほらっ、私って天敵が多いじゃない。アナウサギの妹たちとアガリコの地下に隠れて住んでいるんだけど、密猟者や妖術師殺しがよく侵入してくるの。それでホーラを見張りに立てて、壁や床に健忘作用のあるういろうを敷き詰めた。防御策が功を奏して襲撃者は激減したけれど、その代わり誰も訪ねてこなくなっちゃった。守りが堅すぎるってのもちょっと考えものね」
「ぐげげげげげ。アナベル様はでら寂しがり屋だぎや」
法螺貝が横から口を出した。アナベルがうんうんと頷く。
「アナベルさんは僕のこと、前からよく知っていたんですね。ごめんなさい。僕はぜんぜん記憶になくて、忘れていることさえ覚えていませんでした」
ミリクは申し訳なさそうに頭を下げた。アナベルはあたふたしながら釈明した。
「え、いいの。ぜんぜん覚えてくれてないほうがいいの。むしろすぐ忘れてほしいの。私に近付いてくる奴は最初は安全そうなふりをしている。でも仲良くしたくて近付いたら、いきなり襲ってくる。私のことを覚えている奴は危険なの。その点、ミミリクちゃんはういろうを食べたらころっと記憶を失うでしょう。なーんにも覚えていない。そこがいいの。だって危なくなりそうだったら、ういろうを食べさせればいいのだもの」
モシュはどうでもいいことほど覚えておいてほしい、と言った。
アナベルはぜんぜん覚えていないほうがいいらしい。
むしろ、すぐに忘れてほしいらしい。
「そうですか。じゃあ、このパンも食べちゃった方がいいですよね。アナベルさんの記憶は残しておかないほうがいいみたいだから」
ミリクはひとおもいに味噌ダレパンにかぶりついた。あまりにも空腹だったせいで、一口食べてしまうと、もう止まらなかった。お行儀など構わず、むしゃむしゃ咀嚼する。
「まあ、いい食べっぷり! お代わりいっぱいあるから遠慮しないでね」
「ありがとうございます」
味噌ダレパンをどんなに食べても腹が膨れない。それこそ無限に食べられる気がした。
「ぐげげげげげ。
「美味しいね。無限に食べられそう」
「ほりゃほーだわ。ほりゃほーだ。無限に食べるといいだがや」
ミリクは際限なく味噌ダレパンを食べ続けた。食べても食べてもミリクの手は止まらず、味噌ダレパンのお代わりを法螺貝がひっきりなしに運んだ。
ミリクは砂を固めた椅子に座り、ただひたすら味噌ダレパンを食べ続けた。アナベルは息がかかりそうなほど近くに腰掛け、ミリクを愛おしげに眺めている。
「ミミリクちゃん、美味しい?」
「はい、美味しいです」
黙々と食べ続けるうち、ミリクはふとした違和感を覚えた。一生分の味噌ダレパンを摂取するかの勢いで食べ続けているはずなのに、まるで満腹感がない。
食事にありつけた嬉しさのせいで見落としていたが、完食のたび新しく用意されるパンにアナベル録のキーワードが刻まれている。給仕係の法螺貝が字を書いている様子はない。どう見てもミリクが書いた下手くそな文字で、それも毎回寸分違わぬ造作だった。
これはつまり、食べるたびに文字が復活しているということだ。ミリクはお代わりのパンを食べているのではなかった。胃に入れたはずのパンが何度も何度も蘇っていた。
ミリクが食べる。法螺貝が運ぶ。ミリクが食べる。法螺貝が運ぶ。延々とその繰り返し。
ミリクは自由意志で食べているように見えて、その実、機械的に食事する操り人形と化していた。
おそらく、
永遠の一瞬を、飽くことなく繰り返し続ける呪い。
席を立とうにも身体が根を張ったように動かない。砂の椅子に呪縛されている。ミリクに許された行為は食事、それとアナベルとの会話だけのようだった。
食べると記憶を失う
「ミミリクちゃん、味噌が口についているわよ」
アナベルは妖しく微笑し、ミリクの口の端についた味噌ダレをぺろりと舐め取った。獲物を狩るような目つきに戦慄する。ミリクが逃げ腰になるが、立ち去ろうにも、見えない力に拘束されている。どんなに足掻いても椅子から離れることが出来ない。
「あのう、僕ちょっと味噌に飽きてきちゃったなって」
「メインディッシュは特別な食材を用意しているわ。期待して待っていてね」
「ぐげげげげげ。アナベル様はでら寂しがり屋だぎや。無限に食べるといいだがや」
終わりの見えない繰り返しのなかで、アナベルの会話だけは変化があった。それに比べて、法螺貝の発言はさして変わり映えしない。法螺貝もミリクと同じく、永遠の一瞬に捕らわれた時の囚人であるようだ。無限の檻を打ち破る方法は定かではない。
味噌ダレパンをどれだけ食べても、ミリクの記憶は明瞭だった。食事前に心配したように、ういろうのような健忘効果はなさそうなのがせめてもの救いだろう。
忘却のういろうは、どんなに空腹であっても食べずに痩せ我慢できるかの根性勝負。
驚愕の味噌ダレは、どんなに詰め込んでも満腹にならない永遠の大食い勝負。
どちらも意地の悪い勝負だが、勝利条件が不明確な分だけ、味噌ダレの方が難易度が高い。
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