虫の知らせ

山広 悠

第1話

霊感は全くと言っていいほどないが、昔から虫の知らせはよくあった。

 

ばあちゃんが死んだ時。

隣のクラスのユウタ君が交通事故で亡くなった時。

そうだ。ねえちゃんが骨折した時も。


そんな不幸が起きる前には、なぜだかバッタみたいな虫が家の中に入り込んできて、大騒ぎをするのだ。


俺の家がある場所は、超都会ではないので、虫はいることはいるが、でっかい昆虫が集まってくるような、匂いや特殊な光を出すようなモノは周囲にはない。


また、俺も俺の家族も虫が特に好きなわけではないので、虫よけこそすれ、わざわざ集めるようなことはしない。


それでも、やはりなにか不幸があるときは、必ずバッタがやってくるのだ。


親戚のおじちゃんが言うには、

先祖の守護霊が虫の形になって教えに来てくれているんじゃないか、

とのことだったが、それはかなり無理がある。


昨日自転車でコケた時は、何も来なかったしね。

そもそも本当に守護霊がいるのなら、コケないようにしてくれって話だ。


擦りむいた膝をさすりながら、俺はリビングでテレビを見ながら、取りとめもなくそんなことを考えていた。


その時。


ガサっ。


小さなバッタがいきなり部屋に現れた。


窓も閉まっているし、誰もリビングに入ってきてはいない。


こいつ。どこから。


そんなことよりも、また誰かに不幸が起きるのか。


俺は気味が悪くなった。


急いでバッタを捕まえると、窓から外へ逃がそうと、カーテンを開けた。


そこには。


窓一面に大量のバッタが蠢いていた。



テレビから「敵対国からミサイルが発射された」との緊急報道が聞こえてきた。



                                  【了】


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虫の知らせ 山広 悠 @hashiruhito96

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