第33話「プレゼント選び」

 六月最初の日曜日、今日はバイトも休みをとった。昨日はバイトに入っていたので問題はなかった。もちろんやりたいことがあって休みをとったのだ。

 僕は待ち合わせに遅れないように家を出た。今日は曇っているが雨は降っていない。ちょっと蒸し暑い感じがした。

 駅前へ着くと、二人が来ていたらしく僕を見つけて手を振っていた。


「お、おはよ」

「お兄様、おはようございます!」

「おはよう、ごめん、待たせたかな」

「ううん、私たちもさっき来たとこ」

「そっか、よかった、じゃあ行こうか」


 そう、絵菜と真菜ちゃんと待ち合わせをしていたのだ。やりたいこととは、日向の誕生日が近いので、一緒に誕生日プレゼントを見つけてもらうことだった。何にしようか毎年悩むのだが、絵菜と真菜ちゃんに話すと「私たちも一緒に見に行く」と言ってくれた。

 ちなみに今日絵菜と真菜ちゃんと会うことは日向には内緒にしていた。まぁ今日は日向は部活でいないのだが、話すとぎゃーぎゃー言いそうな気がしたからだ。


「お兄様、今日はどこに行くんですか?」

「そうだなぁ、また都会の方に行ってみようか。あそこなら色々あって見つかりそうなので」

「まあまあ! そうですね、いいものが見つかるといいですね」


 しばらく電車に揺られて、都会の方へ行く。都会は相変わらず人が多く、僕たちは圧倒されていた。


「や、やっぱり人が多いね、なんか圧倒されてしまうよ」

「う、うん、真菜、迷子にならないように……」

「ふふふ、大丈夫だよ、私も高校生なんだから。それよりも、お姉ちゃんとお兄様が手をつないだら?」

「なっ!? い、いや、恥ずかしいのでやめておく……」


 顔が真っ赤になる絵菜だった。ま、まぁ、手はいつもつないでいるからな、今日はやめておこう。

 僕たちは駅の近くの商業施設に入った。ショップがたくさん入っていて、色々なものが売ってあった。


「け、けっこう色々あるね、うーん何がいいのだろうか……毎年悩むんだよなぁ」

「去年は万年筆をプレゼントしたな、何か日向ちゃんが好きなものとかある?」

「うーん、相変わらず食べることは好きだけど、食べ物は誕生日ももう少し先だからやめておこうかなと思ってね……となるとやはり普段使ってもらえそうなものなのかなぁと」

「けっこう難しいですよね、プレゼントって。もう少し色々見てみましょうか」


 真菜ちゃんの言う通り、プレゼント選びは本当に難しい。僕は男だから女の子の興味のあるものがよく分からないので、今回も絵菜と真菜ちゃんに一緒に考えてもらうことにしたのだ。ちょっとずるいだろうか、まぁいいや。僕たちは商業施設の中を見て回る。


「――あ、お兄様、こういうのはどうでしょう? 私ももらって嬉しかったので」


 真菜ちゃんが指差した先にあったのは、花柄のポーチだった。なるほど、小物を入れるためのものだな。そういえば去年真菜ちゃんにポーチをプレゼントしたのを思い出した。


「あ、なるほど、やっぱり女の子はこういうの嬉しいのか……うん、いいかもしれないね」

「はい。あ、もしこれにするなら、リップや手鏡などを私とお姉ちゃんが買ってもいいですか? ちょっとだけ中身があるのもいいかなと思って」

「え、あ、いや、それは申し訳ないというか……」

「ううん、私と真菜からもプレゼントしたいから。どんなものにするかは考えるから、お願い」

「そ、そっか、じゃあ、このポーチにして、他は二人のお言葉に甘えようかな……」


 僕がポーチを買って、絵菜と真菜ちゃんがリップや手鏡やハンカチを選んで買っていた。このまま渡すのもあれだなと思って、可愛い袋とリボンも買った。


「ふふっ、日向ちゃん喜んでくれるといいな」

「うん、去年の万年筆もずっと使ってくれているみたいだから、今回も喜んでくれるといいなと思うよ」

「ふふふ、お兄様のプレゼントです。きっと日向ちゃんも飛び上がるほど嬉しいですよ」

「そうだといいんだけどね、あ、もう少し見て回ってから、お昼をどこかで食べようか。何がいいかな」


 僕たちはしばらく商業施設を見て回ることにした。またトラゾーのグッズを売っているところがあり、僕と真菜ちゃんはテンションが上がっていて、絵菜がクスクスと笑っていた。

 お昼になり、僕たちは和食のお店に入った。以前行った洋食屋と同じく、ちょっと大人の雰囲気があるお店だった。僕は銀だら味噌定食、絵菜は海鮮丼、真菜ちゃんはざるそばを注文した。


「真菜ちゃん、バスケ部は試合勝てた?」

「はい、県大会に行けることになりました。優子さんもみなさんも嬉しそうにしていました」

「そっかそっか、地区大会を勝ち上がるって、バスケ部も強いんだね」

「チームが一つになって、頑張っているのって、とてもいいなーと思います。私も頑張ろうという気持ちになります」

「うんうん、チームスポーツのいいところだよね。あ、今度試合観に行くよ。いつあるんだっけ?」

「まあまあ! ありがとうございます。来週の半ばに試合があって、それに勝てば再来週もあります」

「そっか、たしか来週サッカー部の試合があるって火野が言ってたから、サッカー部の応援行って、その後バスケ部の応援かな。絵菜も行ける?」

「うん、大丈夫。みんなが頑張っているところ観たい」

「お兄様、私もサッカー部の試合観に行きたいです!」

「よし、みんなで行こうか。火野と中川くんも気合い入ってるみたいだからね、日向と長谷川くんも頑張ってるんじゃないかな」


 注文した料理が運ばれてきた。僕は銀だらをいただいてみる。うん、味噌がアクセントになっていてとても美味しい。

 お昼を食べた後、三人でまた都会を散策した。色々なお店があって、どこを見ても面白い。キッチングッズが売っているお店があって、こんな便利なものがあるのかと、三人で感心していた。母さん喜ぶかな、ちょっと買っていこうかなと思った。

 日向の誕生日プレゼントも決まってよかった。喜んでもらえるといいな。

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