第12話「テスト」
テスト当日がやって来た。
あれからしばらく放課後は、僕と火野と沢井さんと高梨さんの四人で教室に居残り、勉強をして帰っていた。
人数が多いと燃えるもんがある……かどうかは分からないが、基本的には僕が三人に色々と教える形となった。三人ともうんうんと唸りながらも真面目に取り組んでいるのを見て、僕も頑張ろうという気持ちになっていた。
「じゃあ、テスト始まるから荷物を廊下に出してくれー」
うちの高校は、テスト中は教科書やノートなどを全て廊下へ出すことが決まりとなっている。教室に持って行けるのは限られた筆記用具のみだ。みんなが続々と廊下に荷物を出している。僕はどの辺に置こうかな……と迷っていると、同じように迷っているような沢井さんの姿があった。
「あ、沢井さん、このへんに置いておこうか」
「あ、ああ……」
僕は二人分のスペースをとって、沢井さんの荷物も置けるようにした。
「あの、その……」
何か言いたそうな沢井さんは、なぜか耳が赤くなっていた。
「ん?」
「……教えてもらった分、頑張るから」
小さな声ではあったが、沢井さんから頑張る宣言が出て、僕は急に嬉しくなった。
「うん、頑張ろう」
僕は小さく拳を握りしめて、沢井さんの頑張る宣言を受け取った。
* * *
数日後、テストの結果が全部出揃った。
僕は学年で7位だった。数学は100点だったものの、英語が思ったより伸びずトップとは少し差があった。
次の時は必ず英語もいい点を取ろうと、心に誓った。
「げっ、団吉7位かよー! すげぇな、俺なんて130位だ」
後ろからこっそりと人の成績を見てきた火野が大きな声を出す。
「まぁ、学年で約300人いるんだから、半分以上にはなれたじゃないか」
「まぁな、団吉のおかげで数学はいい点とれたからよしとするわ」
「そうか、それはよかった」
数学はテスト前に四人でみっちりと復習したおかげで、火野もそれなりによかったらしい。
「ふっふーん、私、火野くんに勝った! 111位だよー」
そう言いながら僕たちのところに近づいてきたのは、高梨さんだった。
「げっ、マジかーくそぅ、次はこの戦、負けねぇぞ!」
「ふっふーん、どんな戦でも勝ってみせる!」
「いや、戦ってなんだよ……」
ケラケラと笑う火野と高梨さんを見て、冷静にツッコミを入れてみる。
そんな僕たち三人を遠くからじーっと見つめる視線が一つ。
「そだ、絵菜はどうだったー?」
高梨さんはそう言うと、沢井さんの方を見ておいでおいでと手招きした。
沢井さんはちょっと恥ずかしそうにしながら、僕たちのところにやって来た。
「絵菜は何位ー? ……って、ええっ!? 100位!?」
「な、なんだってー!? ガーン、俺が一番低いのか……」
勝手に沢井さんの成績を見た二人は、勝手に落ち込み始めた。
沢井さんも数学の点数がよかった。平均点がたしか60点くらいだったので、その点数を大幅に超えたことになる。
「でも、英語が悪かった……」
沢井さんはぽつりとそうつぶやいた。たしかに数学に比べると英語が足を引っ張ったような形になっていた。
「そっか、僕も次は英語頑張るから、また一緒に頑張ろう」
「えっ、あ、ああ……」
僕と目が合った沢井さんは、耳を真っ赤にしてもじもじしながら俯いてしまった。
(あれ? もじもじしている沢井さん、やっぱり可愛――)
「それじゃあさ、高校生活最初の戦が終わったところで、今日の帰りにカラオケでも行かねぇか?」
いきなりカラオケに行こうなどと提案してくる火野。
「おっ、いいねぇー、戦も終わったし、思いっきり歌いたいなぁー」
「いや、だから戦ってなんなの……」
「高梨は決まりだな、団吉と沢井も行くだろ?」
急に言われてもな……と迷っていると、顔を上げた沢井さんと目が合った。
「……まぁせっかくだし、沢井さんも行ってみない?」
「う、うん……」
僕の提案に、沢井さんは耳を赤くしたまま小さく頷いた。
「よっしゃ決まりだな、駅前にカラオケ屋あったからそこにしよう」
そんな感じで、なぜかこの四人でカラオケに行くことが決定したのであった。
(沢井さん、うんって言ったけど、本当に大丈夫かな……)
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