第六感は異世界で見つけたり!ズバリ!しっぽ感である!

御峰。

第六感は異世界で見つけたり!ズバリ!しっぽ感である!

 俺はアレンスキという者だ。


 ここは日本ではなく、異世界である。


 日本だの、異世界だの、言っている俺は、言わば異世界転移者である。


 転移した際に神様から貰ったスキル『見抜く力』を貰い、その力を使って面白おかしく楽しい毎日を暮らしている。


 さて、俺がどうしてそういう力を貰えたかというと、俺は元々研究者であった。


 日本では『第六感』について、第一線で活躍していたと自負している。


 だが、『第六感』というのは、ほぼ全部が曖昧なモノだ。


 だから研究者と言っても、何かを賞を貰ったわけでもなく、スポンサーが付いていたわけでもない。


 ただ独学で有名になっていただけだ。


 さて、話を戻そう。


 現在の俺は、アレンスキという名前で、異世界に転移している。


 世界には危険な魔物とかいたりするが、冒険者となる者達のおかげで、それなりに安全に暮らしている。


 俺はというと、とある研究対象と一緒に生活している。


 スキル『見抜く力』で彼女の病気を見抜いて以来、俺の研究対象になってくれた。



「アレンスキ!」


 彼女が俺を呼ぶ。


「どうした? セリナ」


 彼女は笑みを浮かべ、何か嬉しそうにしている。


 どうしてそれが分かるかと言うと、俺の『見抜く力』があるから――――ではなく、彼女の後ろに生えている長くふわふわした『しっぽ』がゆらゆら動いているからである。


 彼女は狐獣人族。


 頭には可愛らしい猫耳が、腰の後ろには大きくてふわふわした『しっぽ』がついている。


「今日の朝ご飯は、このパンにしよう!」


 テーブルに美味しそうなパンを並べた彼女は言う。


 彼女が『嬉しい』と感じる時は、『しっぽ』がゆらゆら動く。


 そして、俺達は朝食を取った。


 食べ終えた彼女の『しっぽ』は動かない静寂の状態である。


 この状態は心が乱れていない事を表す。


「アレンスキ! 散歩に行こ!」


「分かった」


 腹を満たしたら、今度は散歩に出かける。


 散歩というのは、日本でよく想像するようなただ歩いて散歩するのとは、大きく違ったりする。




 家から暫く歩き、俺達は森にやって来た。


 彼女の『しっぽ』は、真っすぐ上にピーンと立っている。


 これは『戦闘態勢』を意味する。


 彼女がキョロキョロ周りを注意する。


 その時。


 ガルアアアアア!


 森の奥で大きな鳴き声が聞こえた。


「アレンスキ! ブタウルフだ! 行こ!」


「おう」


 彼女は真っすぐ鳴き声が聞こえた方向に向かって走り始める。


 日本では想像も付かない速さで走る。


 車と同じくらいの速度だから60kmは出ていると思われる。


 そんな彼女に、俺は異世界転移者らしく、ちゃんと追いついていく。


 彼女が止まると、目の前には3mくらいの大きい豚顔の狼がいた。


 豚なのか、狼なのか、良くわからない生き物だ。


 そんなブタウルフに向かって、彼女が構える。


 彼女の『しっぽ』が、丸くなる。


 これは『戦闘モード』を意味する。


 直後、彼女は人の耳では聞き取れない不思議な言葉を唱えると、大きな氷の槍が沢山現れ、ブタウルフを串刺しにする。


 大体、この魔法と言われている力で、一発で倒すのだ。


「やった! 今日は豚肉だよ! アレンスキ!」


 彼女の『しっぽ』がゆらゆら動く。


 嬉しいんだろう。


 その時。


 彼女の『しっぽ』が、ピーンと後ろに向かって立ち上がった。


「っ!? アレンスキ! 向こうから強大な気配がするよ!」


 俺の『見抜く力』でその方向を見つめると、遥か遠くに大型魔物のゾウライオンが見つかった。


「セリナ。向こうにゾウライオンがいるな」


「っ!? 早く豚肉を持って帰ろう! アレンスキ!」


「そうだな」


 ゾウライオンはとても強い。


 だから、戦う事はせず、彼女と俺は倒したブタウルフを担いで、町に戻った。




「よう、アレンスキじゃねぇか。今日も散歩か?」


「おう。ちょうどいい。向こうからゾウライオンがこちらに向かって来ているよ」


「なっ!? それは本当か!?」


「アレンスキが言ってるのは本当!」


 彼女の『しっぽ』が二つに分かれて、前方を威嚇する。


 これは『お怒り』を意味する。


「わ、分かったよ、セリナ。すぐに村長に伝えるから」


 そういった彼は、急いで走って行く。


 俺達はブタウルフを持って帰宅する。


 彼女は慣れた手付きで、ブタウルフを裁いていく。


 俺はそれを見つめながら、野菜を切ったり、皿を用意したりと、夕飯に向けての準備を手伝う。


 暫くすると、先程の彼が訪れてちゃんとゾウライオンを見つけて、危険の前に倒してくれたとの事。


 彼はお礼だと、ゾウライオンの一番美味しい場所である、ゾウ鼻を持ってきてくれた。


 彼女はそれを見ると、目の色を変えて喜ぶ。


 その時の彼女『しっぽ』は激しくゆらゆらする。


 これは『とても嬉しい』という意味だ。


 そんなこんなんで、お昼が過ぎ、簡単な昼食を取り終え、また夕飯の仕込みに戻る。


 今日はブタウルフとゾウ鼻の処理があるので、丸一日仕込みの日だ。


 彼女と一緒に仕込みをしていると、時折、彼女の『しっぽ』が俺のお尻を叩いてくる。


 ………………これは無意識に『好き』という意味らしい。


 良く分からない。


 仕込みが終わり、夕飯の時間。


 美味しそうな豚肉と、せっかく頂いたゾウ鼻のスープが並ぶ。


 ん~とても良い香りだ。


「「いただきます」」


 彼女は料理も上手くて、豚肉もゾウ鼻スープもとても美味しい。


 夕飯を食べ終えたら、今度は庭に出て、二人でベンチに座り、果実酒を飲む。


 最近は、ほぼ毎日これだ。


 この時の彼女の『しっぽ』は、左右にピーンと立って戻ってを繰り返す。


 ………………これの意味は全く分からない。


 うむ。


 分からない。


 でも決まって、彼女は俺の腕に絡んでくる。


 これがどういう意味なのかを知るのは、また暫く後の話である。




 異世界で彼女と過ごす数年。


 やっぱり『第六感』は間違いなく彼女の『しっぽ感』だと思う。


 彼女の『しっぽ』は、彼女の意志とは別なモノだからね。


 これぞ、第六感である!


 第六感、異世界で見つけたり!

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