狩人の俺、スキル【第六感】でパーティー辞めました

ムネミツ

 狩人の俺、スキル【第六感】でパーティー辞めました

 「なあレックス、俺達には花がないと思わないか?」

 防具は茶色い皮だが、武器はドラゴンの模様が刻まれた柄の立派な劍と言う金髪の美少年の勇者トーマスが森で野営の支度をしている俺に語りかけて来た。

 俺の名はレックス、弓矢と槍が武器で緑の服とベレー帽が特徴の狩人の男だ。

 髪は黒髪、顔は普通で年は十五の若造だ。

 「……お前、勇者に選ばれた日に村の娘全員お手付きにして良く言えるな?」

 故郷の村長の息子でもあったトーマスの女癖の悪さを、子供の頃から知っている身としては呆れるしかなかった。

 今頃村では、何人勇者の子供が生まれているだろうか?

 「勇者が子孫を残すのは使命だ、パーティー仲間には手は出さないから♪」

 「わかった、問題は起こすなよ? お前の子供の世話までできねえぞ?」

 「いや、お前狩人なのに赤ん坊の世話とか上手かったじゃん大丈夫だって♪」

 絶対に嘘だなと俺は思いつつ、俺を含めてこの勇者に泣かされる男女が出ないようになるならと思い俺は承諾した。


 「レックス、罠を頼む!」

 緑色の巨漢の怪物、トロールが迫る中トーマスが剣を構える。

 「任せろ、トラバサミ!」

 俺は地面に手を付けて魔法を発動させると、トロールの足元に突然トラバサミが出て来て奴の足を挟む。

 「ギャ~~~~ッ!」

 武器のこん棒を落として泣き叫ぶトロール。

 「トーマス、行きましょう! てりゃ~~っ!」

 ビキニアーマーを着た紫の髪の巨乳の女戦士ベティが、斧を構えて突っこむ。

 「ベティ、エンチャントファイヤよ!」

 こちらも巨乳で緑のローブを着た茶髪のエルフの女魔法使い、サリーが呪文を唱えればベティの斧に炎が灯る。

 「ありがとう、アックスストライクッ!」

 ベティの斧がトロールの片腕を切り落とした。

 「良し、クリスは俺にホーリーエンチャントを頼む♪」

 トーマスの奴が金髪で巨乳美少女の女神官クリスに支援を頼めば、クリスは頬を染めながらトーマスの剣に魔法をかけてその刃に光を灯す。

 「ち、罠が消えたか! なら、縛鎖だ!」

 その間に俺は新たなトラップ魔法、縛鎖を発動する。

 トロールの足元のトラバサミが消えた所に新たに地面から鎖が生えて、トロールを拘束する。

 「流石レックスだ、止めは俺が行くぜ♪」

 最後にトーマスの一撃がトロールの首を切り落として戦闘は終わった。


 「流石トーマス♪」

 ベティがトーマスに抱き着きに行く。

 「トーマスさん、素敵でした♪」

 クリスもトーマスの下へと駆け寄る。

 「トーマスは私達の頼れる勇者だわ♪」

 サリーは転移魔法でトーマスの背後に移動して抱き着いた。

 「まあ、俺は勇者だからな♪」

 女達に囲まれて鼻も下半身も伸ばしている勇者トーマス。

 「飽きないなあいつら、俺は獲物を確保と」

 俺は仲間達を尻目に、トロールの首を取りに行きアイテムボックスの魔法に収納した。

 そして、トロールの討伐を終えて街に戻った俺達は冒険者ギルドにトロールの首を提出した。

 「ありがとうございます、流石は勇者パーティーの皆さんですね♪」

 ギルドの受付嬢が笑顔で金貨の入った袋を差し出して来たのをトーマスが受け取た。

 「はっはっは♪ これくらいお安い御用さ、じゃあ分配だな♪」

 トーマスが袋を開けて金貨一枚を取り出し俺に投げつけて来たのを俺は受け取った。

 「……これが俺の取り分か」

 俺はため息を吐く、金貨なだけマシかと思う。

 受付嬢が俺を憐れんだ目で見て来るが気にしない。

 そしてこの時、俺の頭の中に文字が浮かび言葉が聞こえて来た。

 【直感】が【第六感】に進化しました。

 この世界に生きる人間なら誰でもある機能、天のお告げだ。

 【第六感】の派生効果、未来予知が発動します。

 更にお告げが続くと、俺の目には嫌な光景が見えた。

 「レックス、クリスの寝込みを襲おうとしたらしいな?」

 どこかの森でトーマスや仲間達に問い詰められる俺。

 「レックス、貴方最低ね!」

 ベティが怒る。

 「あなたがそんな人だとは思わなかったわ」

 サリーが呟く、当のクリスは何も言わない。

 「レックス、馴染みのよしみで見逃してやるお前はパーティー追放だ!」

 トーマスの奴が俺に物語でお決まりの台詞を吐いた所で、俺は現実に戻った。


 「どうしたレックス、取り分は渡したぞ?」

 トーマスが俺に尋ねて来た。

 「レックス、具合でも悪いんじゃないの♪」

 ベティはトーマスに抱き着いて笑った。

 「金貨一枚あれば薬は買えるわね」

 サリーは平然としていた。

 「レックスさん、どうしました?」

 クリスはトーマスに抱き着きながら俺に問いかけて来た。

 「ああ、ギルドの中なら丁度良いな俺は今日でこのパーティーを抜ける」

 俺はトーマスと元仲間達に宣言した。

 「な? そうか、お前とも今日でお別れだな♪」

 トーマスは大笑いしていた。

 「うん、勇者パーティーに狩人はいなくても良いからね♪」

 ベティも笑っていた。

 「さようなら、レックス♪」

 サリーも微笑んだ。

 「レックスさん、お疲れ様でした♪」

 クリスも納得した顔で俺に言って来た。

 「ああ、これからも活躍してくれ俺は薬草取りでもして暮らすよ」

 特に何も言われなかったので、俺は受付に行きパーティーから抜ける手続きと

新たにソロで最低ランクの冒険者として登録し直した。


 そして、冤罪追放フラグを回避して自由の身になった俺は奴らと別れた。

 奴らと別れた翌日、俺は宿の一人部屋で気持ち良く目覚めた。

 「ああ、これでもうあいつらの面倒を見なくて済む♪」

 嫌いな奴の為の野営の支度や、狩りをしての食糧確保や保存食づくりとか雑多な用事をしなくても済む自由って素晴らしい♪

 宿でパンと肉入りサラダとスープを頼み朝食を済ませた後、デザートのケーキとコーヒーを堪能する。

 「トーマスの馬鹿め、嫌がらせで少ない報酬を俺に渡していたつもりだろうがこちとらお前達が気持ち悪がっていた魔物や動物の素材で財布は潤ってるのさ♪」

 コーヒーを飲み終えて俺は笑顔で一人呟いた。

 トーマスめ、ハーレム暮らしが死体なら好きにしろ♪

 俺は俺で気ままにスローライフを過ごすぜ♪


 そして、俺の狩人との兼業冒険者の生活が始まった。

 「さて、今はこの辺で狩りでもするか♪」

 槍か弓矢どちらで獲物を取ろうかと思案していた所、俺の頭の中に再び文字が浮かんだ。

 【第六感】発動、と無機質な誰かの声が聞こえると同時に俺は槍を手に森の中を駆けだしていた。

 「ち! 何だよ、この胸騒ぎは体が勝手に動きやがる!」

 パーティーを抜けた時以来、久しぶりに発動した【第六感】のスキル。

 未来予知の派生効果は起こらず、俺の体をスキルが操るかのように武器を手に走らせると開けた場所に出た。


 「何よこの熊~っ!」

 俺の目の前で、青いドレスの上に銀の甲冑を纏い頭に高そうなティアラを被った赤毛の美少女が自分の身の丈を越える大剣を振るい金色の熊とやり合っていた。

 「今助けるぞ、トラバサミッ!」

 俺は赤毛の美少女を救うべくトラップ魔法を発動する、熊の足元にトラバサミが現れて熊の足を挟んだ!

 「トラップ魔法? 誰よあんた!」

 俺の魔法が発動したと同時に熊から飛び退いた美少女が俺に叫ぶ。

 「俺はレックス、君を助けに来た男だ! 喰らえ、ポイズンスピア!」

 俺が呪文を唱えると、槍の穂先が紫色に変化する。

 そして俺は、熊が足を止めてのたうち回る間に背後に回り込み毒が付与された槍で

熊の背中を突き刺した。

 「今だ、そのでかい剣で仕留めろ!」

 俺は美少女に叫ぶと、彼女は大剣を大上段に掲げて叫ぶ。

 「わかった、あなたは退きなさい! 喰らえ必殺、プリンセスプロミネンス!」

 少女の大剣が巨大な火柱になったのを見た俺は、槍を捨てて飛び退いた。

 俺が避けたと同時に、炎の柱が熊へと振り下ろされて熊と森の一部が消滅した。

 「……な、何だそのおっかねえパワーは!」

 美少女のパワーに俺は腰を抜かした。

 「ありがとうレックス♪ あんたのおかげで助かったわ♪」

 美少女は大剣を鞘に納めると、太陽のような笑顔で俺の所へとやって来て手を差し伸べて来た。

 俺は彼女の手を握ると引き上げられた。

 「ああ、お役に立てて良かったよ」

 俺は目の前の美少女が恐ろしかったが、必死に冷静を装った。

 すると、ぎゅるる~と目の前の美少女が腹の虫を鳴かせた。

 「ちょ! 今、何か聞いた?」

 美少女は腹をすかせた事を恥ずかしがったのか、頬を真っ赤に染めた。

 「ああ、俺が腹をすかせたんだ♪ 良かったら一緒に干し肉でも食わないか?」

 俺はすぐさま忖度して自分が腹をすかせた事にしてアイテムボックスから干し肉を取り出すと美少女に干し肉をひったくられて喰われた。

 「……あむあむ、美味しいわね♪」

 干し肉を食う美少女は子犬のように愛らしかった。


 「そりゃ良かった、ところであなたは何処のお姫様ですか?」

 こんな野原でもティアラ何かつけてるのは、頭が悪いか王侯貴族の類だと思い俺は

跪いてかしこまった。

 「私はフレア、武者修行中のヒートランド国のプリンセスよ♪」

 フレアは俺に微笑むと再び俺の手を取り立ち上がらせた。

 「……うおっ! 何をするんですかフレア姫!」

 俺はフレアの行動に驚く。

 「レックス♪ 私、あんたの事が気に入ったから面倒見てあげるわ♪」

 面倒を見たのは俺の方なんだがと思うも、フレア姫は気にせずのたまった。

 俺としては、面倒な事は嫌だったがここでスキルの【第六感】が発動した。

 俺は白い花婿衣装でどこかの聖堂にいた。

 そして、俺の隣に立つのは花嫁姿の目の前のフレア姫と言う光景を見せられる。

 更に今度は、俺と彼女との間にできた五人の子供達と家族で狩りをする光景を俺は見せられた。

 「はい、俺はフレア姫に全力で愛と忠誠を尽くします♪」

 俺はこのお転婆なお姫様に婿入りするのも悪くないなと思い第六感に従い、彼女の手を取りその甲にキスをした。

 

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