第45話 選択肢26 ー1良い仕事に就けて嬉しい(43話選択肢より)

良い仕事に就けて嬉しいと思った。


その日は、リリィの午後の予約が突然キャンセルになり、時間が空いた。

良く晴れて、青空が美しいので外出したいと思ったが、リリィには許されないと思い至り、少しがっかりする。


「ねえ。ウィル。ウィルは、仕事がお休みの時は何をしていたの?」


リリィの私室で、彼女のために紅茶を淹れていた俺に、リリィが尋ねる。


「本を読んだり、たまに出掛けたりしていたよ」


「どこに行ったの?」


「珍しい場所といえば、自動車レース場かな」


「自動車レース場? それは、どういう場所なの?」


「自動車はわかる?」


「ええ。乗ったこともあるわ。今は、乗らないけれど」


そう言うと、リリィは少し寂しそうな顔をした。

不用意な話題だった、と後悔していると、リリィは話の続きをせがんできた。


「数台の自動車が速さを競うんだ。一般的な自動車は屋根があるけれど、レース用の自動車は屋根が無かったよ」


「まあ。そうなの。きっと、車体を軽くしているのね。いいなあ。見てみたい」


「……ごめん」


「どうして謝るの? わたし、見られるわ」


「出かけられるっていうこと?」


「いいえ」


彼女は俺の言葉を否定して、言葉を続ける。


「出かけるのはわたしではなくて、あなたよ。あなたが、わたしのために写真を撮ってきてくれたら、見られるわ」


「写真……っ!? 写真屋を連れて、出かけろというのか……っ!?」


驚いてそう言うと、リリィは笑い出した。


「違う。違うわ。お兄様が、カメラを持っているの。使い方もご存知よ」


「カメラ……っ!?」


カメラというのは、写真を撮ることができるという機械のことだ。

実物は、風景写真を絵画のような大きさにして販売している店の中で、一度だけ見たことがある。


「ねえ。ウィル。わたしのために、写真を撮ってきてくれる?」


リリィの言葉に、俺は……。


選択肢27

1高価なカメラに触るのが怖い(次へ/鳥籠の鳥【男主人公編】45話→ 鳥籠の鳥【男主人公編】46話へ)


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