第38話 選択肢17ー2罪悪感が胸をしめつけた※BLルート※(33話選択肢より)

罪悪感が胸をしめつけた。


「……」


私はクライヴが嫌いだ。

親の七光りで、何の不自由もない暮らしを享受しながら、それでも不満を募らせている彼を、憎悪している。

だが、それでも、クライヴに暴行する権利などなかった。

……私は、最低の人間だ。

やってしまったことを無かったことには出来ないが、せめて、責任を取ろう。

私はクライヴを抱き起こして、ベッドへと運ぶ。


「ん……」


身じろぎをして、クライヴが目を開けた。


「……クライヴ様」


「……」


クライヴは、ぼんやりとした顔で私を見た。


「申し訳ないことをしました。私は、激情に任せて、あなたを……っ」


私は、言葉を途切れさせた。

今更、後悔ばかりが募る。


「本当に申し訳ありません。今から、旦那様に事情を説明して、それから警察に……」


「必要無い」


「え……?」


「父上に説明する必要は無い。……あの方は、男同士の性交など、考えもしないだろうしな」


「ですが……っ」


「警察に行く必要も無い。だが、一つだけ命じる」


クライヴが、彼の身体を汚した行為と引き換えにしても得たいと願うのは、カナリヤに会うためのカードだろう。


「……」


私はクライヴに、カードを差し出す。

クライヴはカードを見て、そして、微笑した。

その優しげな微笑みを見て、私の心がちくりと痛む。


「もう、そのカードは必要ない」


「え? ですが……」


「必要ない」


「では、命令というのは……?」


「これまで通り、僕に仕えよ」


「ですが……っ」


「罰を受ける必要はない。……僕を、辱めるな」


「っ!!」


そうだ。私が警察に行けば、クライヴが男に身体を汚されたことが公になる。


「……わかりました。ご命令に、従います」


私はそう言って、クライヴに頭を下げた……。


それから、クライヴは娼館に行きたいとごねることもなく、父親の命令に従い、自分の為すべきことを穏やかに続ける日々が続いた。


私は、クライヴの補佐をしながら、拍子抜けするほど、何事もなかったように扱われていた。

まるで、あの凌辱が無かったことにされている。


……それは、喜ぶべきことだろうか。

犯罪者にならずに、職を辞すこともなく、働き続けている現状に、感謝をするべきなのだろうか。


「……」


一瞬、考え込んでいると、クライヴが私の名前を呼んだ。


「お茶を淹れてくれないか」


「かしこまりました」


私は一礼して、部屋を出た。


お茶の用意を終え、私は部屋に戻る。

以前は侍女に用意させていたのに、今は、お茶の用意も私がするようになった。


「……」


温めたカップにお茶を淹れ、クライヴに差し出す。


なぜ、クライヴは私を恐れないのだろう。

今、彼と私は部屋に二人きりだ。


クライヴはカップを口に運び、それから、私を見た。


「……どうした?」


クライヴが、私に問い掛ける。

私は……。


選択肢19

1無言で首を横に振った※BLルート※(次へ/鳥籠の鳥【男主人公編】38話→ 鳥籠の鳥【男主人公編】39話へ)


2「なぜ、私を恐れないのですか?」※BLルート※(鳥籠の鳥【男主人公編】38話→ 鳥籠の鳥【男主人公編】42話へ)

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