第13話 選択肢8ー2「もっと、話を聞きたかった」と言った(11話選択肢より)
「もっと、話を聞きたかった」と言った。
「わたしも、もう少し話したかった」
「でも、たぶん、もう会えない」
私がそう言うと、リリィは少し躊躇った後、カーテンの向こう側に姿を消した。
そして、何かを手に戻ってくる。
「このカードを持っていて。受付で見せれば、わたしにまた会える」
「このカードは……?」
問い掛けると、彼女は俺の唇に人差し指をあて、早口で言った。
「すぐにしまって。見つからないようにして」
「……っ」
切羽詰まった声音に、わけもわからず、私はそのカードをしまった。
その直後、扉が開く。
最初に部屋に案内してくれた、案内人が私の手錠を外した。
「お楽しみいただけたでしょうか?」
私は、迷った末に肯いた。
彼女は私に言葉を掛けず、彼女は薄布の向こう側に姿を消した。
「……」
私はリリィに心を残しながら、案内人に案内され、娼館の入り口まで歩を進める。
「ありがとうございました。またどうぞ、お越しください」
案内人が私に、深々と頭を下げた。
「……」
私は、再びこの娼館に来て、リリィに会うことができるのだろうか。
ため息を吐き、そして、私は娼館を後にした。
屋敷に戻り、リリィと会い、彼女にクライヴを説得するように依頼したと告げると、クライヴの父親は私をねぎらってくれた。
「ご苦労だったね。今日はもう、帰っていい」
「はい。失礼いたします」
思いがけず、休暇のような時間を得ることになった私は弾む心を押し隠して一礼する。
そして、頬が緩まないように気をつけながら、部屋を出た。
出勤時に使用するようにと、与えられた部屋に向かう途中、名を呼ばれ、私は足を止めた。
……振り返ると、クライヴがいた。
思わず、顔をしかめてしまう。
早く帰りたいんだよ。
やりたいことがたくさんあるんだ。
「君は今日、外出していたようだね。何をしていたの?」
「旦那様に命じられ、用事を済ませておりました。帰宅して良いということなので、もう宜しいですか?」
さっさと話を切り上げたい、という気持ちをにじませながら、それでも、礼を失した物言いはできずに、私は目を伏せた。
「少し、話がある。僕の部屋に行こう」
クライヴが勝手なことを言う。
私は……。
選択肢9
1「帰ります!!」(次へ/鳥籠の鳥【男主人公編】13話→ 鳥籠の鳥【男主人公編】14話へ)
2クライヴに従う(鳥籠の鳥【男主人公編】13話→ 鳥籠の鳥【男主人公編】15話へ)
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