第9話 選択肢6 ー1名乗らない(8話選択肢より)

名乗らないことにした。


「……名前は、秘密です」


「それは残念。でも、その方が良いかもしれないわね」


彼女がそう言った直後、涼やかな鐘の音が響く。


「……もう、お別れの時間ね」


私を見上げて、彼女が言った。

そして、薄布の向こう側に姿を消す。

その直後、扉が開く。

最初に部屋に案内してくれた、案内人が私の手錠を外した。


「お楽しみいただけたでしょうか?」


私は、迷った末に肯いた。


その後、案内人に促され、部屋を出る。

……そして、私は娼館を後にした。


屋敷に戻った私は、カナリヤと会ったこと、彼女がクライヴを説得すると約束してくれたことをクライブの父親に報告した。

あとは、カナリヤが約束を守ってくれることを信じるしかない……。


それから、数日が経った。

クライヴは相変わらず、娼館通いを続けている。

馬鹿息子の娼館通いが長引くほどに、彼の父親からの私の評価が落ちて行く。


新たな就職先を探さなければならなくなる日が、来る予感がした……。


【END7 首を切られるまで、あと少し】

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