第2話 選択肢1ー1手錠をはめない(1話選択肢より)
手錠をはめないことにした。
「申し訳ありません。見知らぬ場所で、手の自由がきかなくなることが恐ろしいので、手錠をはめることは出来ません」
私は正直に、彼女に言った。
「そうね。そうよね。自由がなくなるのは怖いことね。ひどい提案だったわ。ごめんなさい」
「いえ……」
「でも、手錠をはめなければ、薄布を払い、あなたの顔を見ることは出来ないの。このままの状態で良いなら、話を聞くわ」
私は、彼女に話を聞いてもらうことにした。
「……」
私の話を聞き終えた彼女は、黙り込む。
「お願いです。私の主に、ここに来ないようにと言っていただけますか?」
「それは無理よ」
彼女はあっさりと言った。
「その人をここに来させないようにするのは、あなた方の役目ではない? 温情を捨てれば、それは簡単だと思うわ」
「どういうことですか?」
「わたしを見て。わたしはこの鳥籠から出られない。閉じ込めれば、彼の自由は無くなるわ」
「……」
「迷っているのね。あなたは優しい人ね。でも、不自由なのは悪いことばかりではないのよ」
「え……?」
「鳥籠の中は安全なの。不自由で贅沢な、箱庭。あなたの主にはふさわしいのではない?」
彼女の声には、自嘲の色が滲む。
だが、それは名案のようにも思えた。
「助言をありがとうございました」
私は彼女に礼を言った。
もう、彼女と話すことは無い。
だが、立ち去りがたくて、私は立ち尽くす。
「さよなら。もう、あなたはここに来ないで。わたしの歌は、聞かないで。わたしの歌は救いで、毒だから……」
謎めいた彼女の言葉に、私はただ、肯くことしかできなかった。
私はノーリッシュ邸に戻り……。
選択肢2
1ノーリッシュ氏と面会した(次へ/鳥籠の鳥【男主人公編】2話→ 鳥籠の鳥【男主人公編】3話へ)
2クライヴと面会した(鳥籠の鳥【男主人公編】2話→ 鳥籠の鳥【男主人公編】6話へ)
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