ATLASラジオ放送からの始まり


相手の言葉が、消えなくて…何度も何度も繰り返す。

無限ループ。

わかってもらいたいと思えば、順序立てて慎重に話せるのかも知れない。

しかし熱を帯びた感情は、ダイレクトに届く。

互いを抉るには十分なほど、疲弊していた。


そして是宮と喧嘩した。

もう、疲れたのである。


わかって居ることとして、圧倒的に悪いのは私なんだと思う。


心が波立っていたから、しかし波立って居ることすらわからないのである。

言わなければ伝わらない。

言えないほど余裕がなかったのであろう。


時に正論が、神経を逆撫でする。

自分が卑屈になっていればいるほど。

周りの声に、自分自身を否定する言葉の方が、多かった。

巫としての部分より、個人としての資質の攻撃が、抉る。

ある意味、トラウマをも発動させかねない闇でもある。


そんなことは十分承知していたはずなのだ。

それなのにそんな言葉は、思って居る以上に身を削ぐ。


環境的に会って話せたなら、雰囲気で伝わる状況も、電話越しでは伝わらない。

まして2人とも、普段の仕事で負荷をかけられ、休日は休日で動きっぱなしである。

そんな状況が一年以上続いて居た。


周りの全てが限界を迎え、悲鳴を上げてもおかしくないのだ。


なるべくして起きたとしか、言えないすれ違い。

それでも神経を削ぐ。


ごめん、今は無理だわ。


互いに出した答えでもあった。

離れることが護るすべとなる。

近づきる故、傷つけ合うハリネズミの夫婦と同じなのだ。



そんな中帰宅した。

隣の家の前に車があった。


道を譲ってくれたと車庫入れする。

ん!?


そして気づいた。

また、このパターン。

車の主は妹だった。



一度、母親が乗り込んできた。

私があまりに人を軽んじて居る行為に対して、苦言を言ったことがあり、それに対して逆上した母親が要子の20歳の誕生日に、襲撃してきた。


当時私は休んでおり、孫に道理を問われ追い返されていた。

それから4ヶ月。


あっという間であった。


そして昨日制作して居る中で、観音様の顔を母親に感じた。

加工し続ける中で、その顔はやがて穏やかなものとなり、仏に見える様になっていた。


そして私は避けてきていた部分を、突きつけられる。

母親という部分。

自分というルーツを、見ないふりして居るのではないか?

果たしてこのままでいいのか?と神からのメッセージだとして、受け取っていた。

神託と思えることは、言葉だけにあらず事象をも起こし、考えろと突きつける。


そんな中での、出来事だった。


話を聞いて欲しくてと、妹は口を開いた。


これまでの私の想いは、とうに伝えていた。相手を軽んじて居る行為としか、思えないことも含めてである。

結果、逆上した母親が乗り込んできて、要子とバトルになった。


そして妹から言われたのは、母親故に私の元へ行かせられなかったということ。

絶対トラブルを引き起こす故に、来させられなかったこと。

離婚した私を犯罪者の如く認識であった母親の言動は全て、要子を通じて聞こえていた。


当の本人たちの知らないところで、何年も苦しめられる結果でしかなかった。

離婚という選択、2人の障害児を一人で支え、そして無事成人させた。


もう少し手を離れてもいいだろう…それが本音だった。

しかし、現実は多くの意味で幸せにも気がつくが、それ以上に支え続けることの困難な壁がいくつもあった。


いつ、娘が死んでもおかしくはなかった。そんな心境に追い詰められながら、それでも支えた。

それが本当の、母親の愛なのだ。

そして自分の身に置き換えると、闇しか産まない。

親にすら、愛されない自分は生きる価値すらもない。

その思考はおそらく生きてきた年と同じくらい、私の中にある闇である。

その闇を払拭する様に、見ないふり感じていないふりをしてきた。


これくらい平気と、自分を偽り。

傷ついていないふりをしてきた。

長い間。


普通の環境に育ったなら、感じることのない感情。


それら含めて、察してくれという方が無理なのだ。


だから余計、是宮の言葉が刺さる。

俺の苦しみは俺にしかわからない。

正義という暴力的な思考こそ、俺は嫌いだという。

おそらく私に入った神がいうことに対してであったり、そして私自身に対しての感情もあるだろう。

それほどまでに、余裕を無くしていた。

相手の苦しみを察することなど、本当はできないのである。

言わなければ伝わらないのである。

しかし、近くなればなるほどわかってくれて居ると甘えが生じる。

甘えがある故、感情も出やすい。

だからガチ喧嘩もするのである。


お互いに無理となったことも、数知れず。

その中でやってきた。

しかし、そんな簡単にヒーロー。ヒロインにはなれない、

いや、向いていないのが正直な感想である。


人は勝手に相手へ投影してしまう。

エゴの押し付け合いでしかない。


それほど疲弊していた。



周りの言葉に傷つき、辛くなるのならブログも発信も全てやめろとまで言及された。


そこまでこじれた中での、気持ちの整理もできぬまま、妹との再会。



全てもう、シナリオでしかないとも感じる。


その中で相続のことが終わったら、もう関係性すらなくなること。

もう二度と会わない選択をするであろう私に謝りにきたのであった。



その背景には、人はいつ何があるかわからない事実。

そして家族の形を、妹ながらに悩んでそして出した答えの様だった。


妹との和解。

そんな日が訪れるとは思ってもいなかった。

壊した日以上に、時間がかかることも知って居る。

それでも歩み寄ろうとしてくれたこと。

父の遺品を届けようとしてくれたこと。

私が怒って居ることを承知で、会いにきてくれたこと。

妹にはまだ、道理が通じていたことを知る。


そして母に至っては、おそらく無理だから母には告げずに、会いにきて居ることを打ち明けられた。お互いに合えば喧嘩となるだろう。


何年か前最後に出会った日のことも話した。

私が家に行ったところ、外にたまたま出ており

私の車と知ると、どれほど嫌な顔をしていたか。

それなのに実際に面と向かえばいつわりの作り笑顔。


家に入ると、帰れとばかりに持たせたい土産だと準備をし、自宅を出る前には、お金を渡される。

そんな一連を見ていた要子は、まるで金を渡してもう二度と来るなとでも言いたげだよねと。


そんな思考がわかるほど、疎まれて居る現実を嫌と言うほど知り、父に会ったのはその日が最後となった。


どれだけ負荷をかければ気が済むのだろうか。

どれだけ悲しみ、苦しまなければならないのだろうか。

生きて居ること自体、苦しみであった。

全力で生きても、頑張っても…つきまとう。


そんな想いも全て昇華されなければならないほど、追い詰められる。

神の真意を受け取る器。シャーマンとして、求められた。


人としての感情を捨てろとまで、言われて居る様に感じる。


道理に気づき、反省し歩み寄るものを拒めるかとなれば、私は拒む理由はなくなる。


変わろうと気づいたなら、それで充分なのである。


神様同士の戦いがあるのなら、人としての戦いがある。


最後に迎える部分として、分けた魂の和解と考察していた。

その時を迎えたんだなと、納得して受け入れた。


闇に染まるのか、光だけ主張するのか…

それはバランス。


本来同じ魂であろう二人を分けた私たちは、三年違いで同じ誕生日とし産まれた。


明るい性格の妹、おとなしい私。

全てが逆だった。


子供の頃は圧倒的に闇に染まっていた私。天真爛漫だった妹。


そしていつしか思考の逆転。和解。


神主としている妹、神降ろしする姉…


失った家族の絆を修正したいと願う妹。

表現することで壊した私。


壊さなければ、生まれない。

気づかなければ、変われない。


そして巡り、妹は体調に異変をきたしていた。

おそらく因縁が巡ってのガツンと案件として、体調が悪くなったからこそ考えた未来でもあったのかも知れない。


崩壊して追い詰められるところまで追い詰められないと、人は気づけないのである。


命が有限であると言うことも、一人では生きていけない現実も。

それでもなおかつ葛藤するのが人間なのだ。


葛藤して修正できるからこそ、神様は待っている。

生きて居るうちに罪穢れの衣を脱ぐ時を。

そして生きて居るうちに流せない穢れは、亡くなってから流す役目を担う神がいる。


天照様の荒御魂。

瀬織津姫である。



それでもトラブルは終わらない。


要子の足は血だらけ。4時間ほど記憶は消える。

スマホの画面は何者かにハリでつつかれたように、何もせずに目の前で割れたようだ。


そして記憶のない間、普段寝ているパイプベットは解体されていた。


要子の部屋だけ、地震が起きたかのような惨劇。

あちこちに血の跡。



稲杜氏が【どがく】というナマズを連れてきたらしい。

客人を接待しようとして、惨劇になったとも、説明しプリプリ怒って居る稲杜氏。


さっぱりわからない。


ある意味、要子の部屋だけ

地震が起きたかの様な跡。


時間軸ずれてないかと、思ってしまう。

それこそ大難を小難とした結果なのか…これから起きる現象を表しているのか。

もはや理解不能である。



それら現象は、身も心もすり減る現実として起きていた。

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