27話 蝉原の弟子『超苺』視点(2)


 27話 蝉原の弟子『超苺』視点(2)



 『裏カジノにいこう』という師匠(せみはら)の言葉に、

 クロートが『実に執事(しつじ)らしい、うやうやしい態度』で、

 軽く頭を下げながら、


「師よ、出入り口に見張りを置いておかなくて大丈夫でしょうか?」


 と、たずねると、師匠は、


「表のカジノ客はどうでもいい。重要なのは、裏カジノに出入りしている連中だ」


「では、地下の出入り口は、私が固めさせていただきます。アリ一匹逃がしませんので、ご安心を」


「心配はしていないさ。お前たちは優秀だ。完璧にミッションをこなせると確信している」


「おお、ありがたき御言葉。師よ、信頼(しんらい)していただき、感謝します」


「優秀なお前を信頼するのは当然のこと。……あと、クロート、お前には、出入り口をかためるより、おれの横にいてほしいな。もしもの時のことを考えて、『総合力に優れているお前』は、つねに、おれの右腕でいてくれ」


「ああ……なんと、もったいない御言葉」


 どうやら、クロートは、師匠のことがけっこう好きみたいだ。


 クロートは、根がマジメなヤツだから、仕事を頑張っている……

 それもあるだろうけど、それだけが理由ではなく、

 『師匠に気に入られよう』と、かなり本気で仕事を頑張っている。


 『セン様の命令』なら、俺も、そのぐらい頑張るつもりでいるけど、

 『師匠(せみはら)のために頑張ろう』とは、あまり思わないなぁ……


 『言われたことを普通にこなそう』とは思っているが、

 『全力で頑張ろう』とはまったく思えないのだ。

 ソリがあわないからねぇ。

 あと、師匠(せみはら)も、普通にイケメンだし。

 イケメンはダメだ。

 許せない。


 ――なんてことを思いつつ、

 俺は、奥にいるバニーガールをながめていた。


 あそこでディーラーをしている子が、また、いい足をしているのだ。

 スラリとした長い足が俺は大好きだ。

 豊かなオッパイも、

 スレンダーな体躯(たいく)も、

 プリンとしたお尻も好きだが、


 やはり、一番は美脚(びきゃく)だな。

 いや、一番は、やっぱり、プルンとした唇か?


 悩むな……

 けっきょく、全部、いいからなぁ……

 女の子は、ぜんぶ、美しい……


 ……なんて思っていると、

 師匠が、


「超苺(こいちご)も気づいたか?」


 とか言ってきた。

 なんのことか分からず。

 とりあえず、いつも通り黙っていると、


「あのディーラー……おそらく、この店の『用心棒』だ。あの『バニーガールの衣装』は、かなり高位のマジックアイテム……おれのセブンスアイでも、『相当な魔力とオーラ』をこめなければ、見抜けないほどの『高度なフェイクオーラ』がかけられている、とんでもない逸品(いっぴん)。わずかに香る『消しきれていない殺気』がなければ、気づけなかった。どうやら、この世界にも、それなりに高品質のアイテムは存在するらしい」


 ……え、そうなの?

 と思っていると、デビナが、


「マジっすか、師匠! んー……あたしのセブンスアイじゃ、全然見えねぇ!」


「我(われ)のセブンスアイでも見通せない。……だが、確かに、注視すれば、わずかに殺気を感じる。……あの微弱(びじゃく)な気配にすら気づくとは、さすが師匠。セン様ほどではないですが、相当にするどい観察眼をお持ちだ」


「おれだけじゃなく、超苺(こいちご)もほめてやれよ。超苺は、最初からずっと、この店の人間全員に『にらみ』を利(き)かせていた。おれと同じで、『殺気の出所(でどころ)』をうかがっていたんだろうぜ。超苺のセブンスアイは、お前らのと同じで、おれのセブンスアイよりも性能が低いってのに、わずかな違和感だけで、あの女の裏を見抜いた。たいしたもんだよ」


「やるじゃねぇか、超苺!」


「やはり、おぬしは、ただ者ではないようだな、超苺よ」


 ……なんか知らんけど、俺の評価が上がっていた。

 ……女の子の『綺麗な足』をながめていただけなのに……



 気付けば、

 クロートが、黙(だま)ったまま、

 『少し悔しそうな顔』で俺をみてくる。


 クロートは、俺が師匠に褒められると、

 ああして、『うらやましそうな目』で見てくる。


 俺には『そんな目で見られる資格』はないので、

 『違いますよぉ』って否定しようかと思ったのだが、


 ――しゃべるのがダルかったので、



「………………ふっ……」



 と、とりあえず、不敵に笑っておいた。

 俺は、誤解をされた時、だいたい、これでごまかす。


 『わかっている風』の『あいまいな感じ』でごまかすせいで、

 いつも、周囲の誤解は加速する。


 けど、どうでもいい。

 俺にとって大事なことは、

 今、俺の横を通り抜けていったバニーガールのおっぱいが、

 とても美しいAカップだった、という、その一点のみである。


 豊満な巨乳も、もちろんいいんだけど、

 スレンダー特有のモデル的な美しさもいいよなぁ……


 美乳……いいなぁ……

 うん……全部いい……


 『華奢(きゃしゃ)』も、『ふくよか』もいい。


 『高身長』も『低身長』もいい。


 『普通』というのも、実は、なかなかのステータス。

 むしろ、『素朴(そぼく)』にこそ、濃厚(のうこう)な『微エロ』が宿(やど)るもの。


 結論。

 女の子は、女の子であるというだけで素晴らしい。

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