16話 ハズレスキルの確率にキレるセンエース。


 16話 ハズレスキルの確率にキレるセンエース。


 プラチナスペシャル『不屈(ふくつ)の魂魄(こんぱく)』が開眼した直後、

 なぜか、動きを止めて、平伏(へいふく)してきたヘブンズキャノン


「……え、なんで、急に……」


 俺が困惑(こんわく)していると、

 ヘブンズキャノンが、とうとうと、


「どうやら、あなた様には『特殊なフェイクオーラ』がかけられている模様(もよう)。その隠蔽力(いんぺいりょく)に、最初はダマされましたが……プラチナスペシャルに目覚められた今の『あなた様』からは、『荘厳(そうごん)なる波動』を感じます……この上なく尊き輝き……あなた様は、まだツボミの御様子(ごようす)ですが、しかし、いずれは、『大輪(たいりん)の花』を咲かせることでしょう。あなた様が、『すべての魔王を統(す)べる大魔王』へといたるのは時間の問題。『私の想い』どうこうは関係なく、最初から、私は、あなた様のものだったのです」


 な、なんか……ものすごい、過大評価をしてくれているようだけど……

 え、もしかして、『不屈の魂魄』ってそういうスペシャル?

 ……相手に、俺のことを『すごいやつ』と誤解させるスペシャル的な?


 な、なんか……いやだなぁ、それ……

 『ちゃんとした実力を評価される』のは望むところなんだけど、

 『変な勘違い』をされるのは、まったく、うれしくない……

 というか、普通にイヤなんだけど……

 裸の王様にはなりたくないんだよ、ダセぇから。


 この不快感は、今回だけに限った話じゃない。

 ここ最近、『会うヤツの大半』が『俺の事を尊いと勘違いする』という、このクソ状況、普通にしんどいんだけど……


 なんて思っていると、

 俺の中にいるアポロが、

 嬉々(きき)とした声で、



「さすが、ヘブンズキャノン! 見る目がありますね! まさに、そのとおり! 主上様は、この上なく尊(とうと)き光の結晶! 今はまだツボミですが、いずれ、間違いなく、その『無上(むじょう)なる高潔(こうけつ)さ』だけではなく、『数値上の実力』でも、世界の頂点に立たれる御方!」



 などという『勘違い全開の大絶賛』をしてくる。


 正直、勘弁してほしい。

 何度も言うけど、今の俺は、存在値2の陰キャだから。

 『ゴキブリ以上にしぶとい』という能力は手に入れたけど、

 それ以上の力は、まだもっていませんから!


 変な誤解はやめてくれ!

 たのむから!


 今まで我慢していたけど、もう言うわ!

 お前らに『過剰(かじょう)に持ち上げられる』たびに、

 もう、恥ずかしくて、恥ずかしくて、心、死にそうなんだよ!


 『敵との戦闘』では『絶対に折れないだろう』と確信している『俺の鋼のメンタル』が、 お前らの『ムダなヨイショ』の前では、つねに『瀕死(ひんし)状態』におちいっているんだよ!



 ――なんてコトを叫ぼうかとも思ったが、やめた。

 正直、もうわかっている。

 誰も、俺の話なんか聞いてねぇ。


 たぶん、今後も、俺は過剰(かじょう)に持ち上げ続けられるだろう。


 ああ、もう、ほんと、やめてほしい……

 裸の王様感がすごいから、ほんとやめてほしい……



 などと思っていると、

 ヘブンズキャノンが、パアアっと、輝きだして、


「これより先、私は、ずっと……あなた様とともに……」


 粒子状(りゅうしじょう)になると、

 そのまま、俺の中へと溶(と)け込んでいった。



「う、うぉおおおおおおおおおっ!!」



 全身に力がわき上がる。

 魂がふるえている。


 気づいた時、

 俺の『おしり』と『背中』から、『無数のシッポ』が生えており、

 そのシッポの先には、でっけぇキャノン砲がついていた。


「……うぉお……なんだ、このシッポ……」


 この『無数のシッポ』は自由に動かすことができた。

 先っぽに『でっかい銃』がついているが、あまり重さは感じない。


 不思議に思っていると、

 アポロが、


「主上様、それが、ヘブンズキャノンの真の姿です。今、あなた様は、究極の力を手に入れたのです」


「へー……唐突(とうとつ)すぎて、究極の力を手に入れたって実感ゼロだけどねぇ。『いきなり過ぎる』っていうダルさだけじゃなく、『変な誤解をされて手に入れただけ』って経緯(けいい)もあって、正直、あんまり『嬉しい』って感覚がわいてこねぇ」


 そう言いながら、俺は、シッポの部分とか、キャノンの部分とかに触れてみた。

 別に、感覚は通じていないみたいだ。


「これさぁ……『ものすごく強い力だ』ってのは、なんとなく分かるんだけど……俺、今後、一生、尻と背中からシッポはえたまま生活することになるのかな? 正直、イヤなんだけど……寝た時、背中、痛そうだし」


「ご安心ください、主上様、ヘブンズキャノンは、『戦闘中にのみ発動するタイプ』の能力ですので」


「あ、そうなの?」


 なんて会話をしていると、

 ヘブンズキャノンが、スゥっと消えていった。


 よかった、よかった。

 あんな状態じゃ眠れないからな。


「ちなみに、戦闘中は、どうやったら出せるの?」


 と、質問すると、


「自分の意志では出せません。ヘブンズキャノンが生えてくるかどうかは、完全ランダムです」


「……ん? らんだむ……だと? ちなみに、どのぐらいの確率? 2回に1回? それとも、5回に1回とか? さすがに、10回に1回とかの確率になってくると、使い物にならないんだが……」


「戦闘中にヘブンズキャノンが出現する確率は、『マージャンで役満(やくまん)が出る確率ぐらい』と言われております。ちなみに、主上様は、マージャンをご存じですか? 『とてつもなく古い時代のゲーム』なのですが」


「いや、一応、知っているけど……マージャンの役満って確か……一番確率が高いやつでも、『3000分の1』とか、そんなんじゃなかったっけ?」


「さすが、博識(はくしき)でございますね。尊敬いたします」


「え、ちょっと、待って……ようするに、このヘブンズキャノンって、3000回ぐらい戦った中で、1回、生えてくるかこないかってこと?」


「そのとおりでございます」


「……ゴミじゃねぇぇかぁあ!!」


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