俺たちはすれ違っている。(短編)

夕日ゆうや

女の第六感

 わたしは彼氏が浮気しているのを知っている。女の第六感というやつだ。

 最近、怪しい動きを見せる彼。たまに口走る女の名前・純子じゅんこ。お金使いが粗くなったり、して。

 だから今日、問いただすために呼んだ。

「おはようございます」

「おはよー」

 俺はのんびりした口調で言う。でも俺は明美あけみが浮気しているんじゃないかと、疑っている。

 最近、彼女の友達が『浮気ってどこからかな?』とか、色々と聞いているらしい。

 やましいことがなければ、そんなことは聴くまい。

 俺は今日、問いただすとしよう。

 明美がカフェに入ろうと言う。

 それに従い、俺もカフェに入る。

「それで、何か言いたいことでもあるんじゃないか?」

「それを言うなら、わたしの方よ。あんた浮気しているでしょ?」

「浮気? していないが?」

「嘘よ。純子という名を聞いたのは忘れていないわ」

「あー。アイドルの純子ね」

「へ。アイドル……?」

「他にもさくらや、愛、まさおが俺にとってのアイドル。フェイバリットな推しだ」

「いや、ええ。へ? まさお?」

「ああ。俺の推しだ」

「ええ~。まさかの男と女の二刀流?」

「ちっげーよ! まさおは男のだ。かんけねー!」

 俺は怒りのあまり、声を大きくする。

 まさおだって可愛いんだぞ。

「それよりも、だ。明美の方こそ、何か隠しているんじゃないのかよ?」

「え。なにかしたっけ?」

「友達に浮気の話をしていたじゃないか」

「え? あー。折斗おりとの相談に乗ってもらったから。それで?」

「……なあ、俺たち大変な勘違いをしていたんじゃないか?」

「多分、そうみたい。でもアイドルの推し活は抑えてね」

「それはいいが……。しかし、今後はもっと共有していくべきなんだな」

「そうね。わたしもこんなすれ違いは嫌よ」

 こうして俺たちはすれ違いを回避できた。

 これからは俺と明美とのラブストーリーが始まる。

 まだまだ苦難があるかもしれないが、暖かな家庭を築くには必要なこと。

 俺は結婚を前提に付き合っている。

 いつか、この思いが届きますように。


 その後、明美もアイドルにはまった。

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