悪魔の予言

ユラカモマ

悪魔の予言

 娘は生まれながらにしてすごい力を持っていた。未来を見る力だ。その力を使って私を助けてくれる。

「ママ明日は傘を持っていくといいよ」

 その翌日は雨だった。

「お母さん明日は電車使わないで」

 その翌日は電車の事故があっていつもの電車が遅れた。

「明日は早く帰ってきて」

 その日は勤めていた会社が火事になって崩れ落ちた。

「明日は9時の✕✕に行く飛行機に乗って」

 それが手帳の最後の一行になった。


 娘は母が毎日忘れぬようくだんの予言を書き留めていた手帳を閉じて笑った。母の乗っていた飛行機の墜落現場から1kmほど離れて落ちていたその手帳は奇跡的に端がボロボロになっているぐらいで書いてあることを残らず読むことができた。

「私には未来が分かる力なんてないのに、最後までバカなひと」 

 そう娘には未来を見れるというほどの力はなかった。なんとなく悪い感じのすることが分かるぐらいである。それでも母はあまりにも運のない人だったから十分尊く感じられたのだろう。毎日毎日明日は? と聞いてきて非常に面倒だった。特にまずいことがないような日もしつこく聞いてくるのでその時はおかしや雑貨などを買ってもらうことにしていた。母もそれで安心できるし私も嬉しい、Win-Winというやつだった。

 ではどうして最後の日娘は母に正しい予言を与えなかったのか。その理由を娘は以下のように語る。

「あの女は生きているだけで周りを不幸にしていく。あの女自身が悪い未来を引き起こす。だから死んでもらったの」


 なお娘は母が亡くなった飛行機事故のちょうど一年後、歩道に突っ込んできた飲酒運転の車にはねられ亡くなった。事故の目撃者の中には娘の体から紫色の魂が抜けていくのを見たと言う人もいるらしい。

 

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悪魔の予言 ユラカモマ @yura8812

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