置き忘れた第六巻を見つけましょう

!~よたみてい書

第六巻を探そう

 銀髪の少女は床に座りながら口を小さく動かし続けた。


(醤油ご飯うまー)


 銀髪少女は十八歳に見える容姿をしていて、身長は約百六十センチメートル。前髪は目の上まで垂らし、後ろ髪を背中上部まで伸ばしている。前髪には鳥のキャラクターマスコットが付いたヘアピンを髪にまとわせていた。目尻は少し垂れさがっていて、目の中に黒い瞳が備わっている。それから、薄い生地の白い衣服で体全身を包み込んでいた。


 五平方メートル程の部屋の中に、一人の銀髪女性が食事をしている。彼女は壁に背中を預けていた。


 銀髪少女は左手に持っている薄くて広い容器に箸を持っていき、中に残っている薄く黒みがかった米をすくい上げる。そして、口の中に運んでいった。


(シンプルな塩味えんみのご飯……ごちそうさまでした)


 容器の上に箸を乗せながら、近くのテーブルの上に置く。


(お昼ご飯も食べ終えたし、読書の続きでもするかなぁ)


 手を頭の上で組みながら背伸びをする。そして、手で腰を軽く叩いたら、テーブルの上に視線を向けた。


(……それで、【カクヨムちゃんの大冒険・第六巻】はどこに?)


 眉尻を下げながら小首を傾げる。


(あれ、最後に読んだ後どうしたっけ? テーブルの上に置いたんだっけ?)


 頬を掻きながら周囲の床を見渡す。


(んー、床に置きっぱなしって訳じゃなさそう)


 腕を組みながらゆっくり部屋の中を歩き回る。


(えぇ!? まさか誰かに盗まれちゃった!?)


 首を傾げながら硬い笑みを浮かべた。


(盗まれたって、だれに?)


 真顔を作りながら布団を見つめる。


(まさかだけど、毛布の下に埋まってるとか?)


 布団に駆け寄り、毛布を素早くめくっていく。


(無いっ!)


 視線を布団に戻し、軽く手を合わせる。


(あっ、もしかして、布団の下に潜り込んでるとか? うっかり蹴とばして布団の下に滑っていったという可能性も捨てきれないもんね!)


 微笑みながら布団の端をつまみ、めくっていく。しかし、床が姿を見せるだけだった。


(うぅ、ここにもないよぉ)


 眉尻を下げながら部屋の中を見渡す。


 一方、部屋の入口に立っていた白髪女性が、銀髪女性に声をかけた。


「リット、ここにあるよ」


 白髪女性は三十歳後半に見える年齢で、身長は約百六十センチメートル。眉まで前髪を垂らし、腰まで後ろ髪を伸ばしていた。目尻は僅かに垂れ下がっていて、黒い瞳を宿している。黒い衣装を全身にまとっていて、胸部には銀色の文字が書かれていた。


 リットと呼ばれた銀髪女性は、白髪女性に顔を向ける。


「えっ、どこ?」


 白髪女性はテーブルの上を指さす。


「ここに置きっぱなしだよ」


 リットはテーブルに駆け寄り、真剣な眼差しを向ける。そして、長方形の置物やゴミと一緒に混ざって、本が一冊裏表紙の状態で置かれていた。


「えっ? ……ぁ、あった」


 リットは笑顔を浮かべながら本を掴み、白髪女性に視線を戻す。しかし、彼女は既に部屋から去っていた。


(あれ、お母さんいつの間に出ていったの?)


 肩をすくめながら引きつった顔を作る。そして、本の表紙に視線を向けた。


 本の表紙には、鳥のマスコットキャラクターが描かれていて、【6】という数字も書かれていた。




 数十分後、リットがトイレから出たと同時に、玄関が開かれた。


 お母さんと呼ばれた白髪女性が家の中に入ってきて、リットに声をかける。


「ただいまー」


「おかえりー」


「今日はずっと買い物に熱中してて……その代わり、手に入れてきたよ!」


 お母さんは手に引っさげている透明な袋を見せつけた。


「お肉! 安かった!」


「おぉー、良い戦利品だねぇ」


「でしょでしょー?」


 二人は玄関で笑い合い、家の中に笑い声を響かせていった。

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